「ヘアカラーが暑さ対策になる」という話を耳にして、半信半疑のまま検索した方も多いのではないでしょうか。実はこれ、ただのトレンドや気分の問題ではなく、きちんとした検証データに基づいた話です。
ヘアコスメブランド「got2b(ゴットゥービー)」を展開するヘンケル コンシューマーブランドが2025年に実施した実験で、黒髪とブロンドの髪表面温度に最大13.05℃もの差が生じることが明らかになりました。
この記事では、その実験の詳細から、体感温度への影響、そして実際に試す際の注意点まで、順を追って丁寧に解説します。
話題の「クールカラー」って何?黒髪VS金髪で13℃の差が出た実験の中身
「クールカラー」とは、got2bが提唱するヘアカラーの新しいコンセプトで、「ハイトーンカラーに染めることで髪表面の温度上昇を抑え、暑さ対策にもつなげる」という考え方です。見た目の涼しさだけでなく、物理的な熱の吸収量を減らすことを目的としており、夏の暑さ対策として帽子や日傘と並ぶ選択肢として提案されています。
ファッションとしてのヘアカラーに「機能性」という視点を加えたこの提案は、2026年春に公開されたWEBムービー「今年の夏は、クールに染めろ」篇とともに大きな注目を集めています。対象となる色はシルバー、ラベンダー、ブロンド、ミルクティー、ピンクといったハイトーンカラー全般です。
実験はどうやったの?ウィッグ6体を炎天下に20分置いた話
実験は2025年9月、屋外気温36.4℃・湿度60%という真夏の環境を再現した条件下で実施されました。方法はシンプルで、黒髪ウィッグ1体とブロンド(ブリーチ毛)を含む5種のカラーウィッグを屋外に設置し、3分後・10分後・20分後のそれぞれの時点で髪の表面温度を測定するというものです。測定は各ウィッグの25か所で行い、その平均値を比較しています。
13時という太陽高度が最も高い時間帯を選んだことで、日常生活に近い「最も過酷な条件」での比較が可能になっています。測定にはサーモカメラが使用され、視覚的にも色ごとの熱吸収の違いが確認できる形で記録されています。
62℃ VS 49℃──その数字、頭皮にどう影響する?
測定開始から20分後のデータで最も注目すべきは、黒髪ウィッグの表面温度が62.82℃に達した一方、ブロンド(ブリーチ毛)は49.77℃にとどまったという事実です。その差は13.05℃。数字だけ見ると「ウィッグの話でしょ」と思うかもしれませんが、この熱が頭皮や頭部全体にどのような影響を与えるかを考えると、無視できない数値です。
人体の皮膚が不快感を覚え始める温度の目安は40〜42℃前後といわれており、髪の表面が62℃を超えている状態は、頭皮に相当な熱的ストレスを与えている可能性があります。直接的な体温上昇とは別に、「頭が熱を持ち続ける感覚」は多くの人が夏に経験するものであり、その主な原因のひとつが髪への熱吸収である可能性が、この実験で示されました。
なぜ黒髪はそんなに熱くなるの?小学校理科で習ったあの話
「なぜ黒い色は熱くなるのか」という疑問は、実は小学校の理科の授業でも扱われる基礎的な光学の話です。それが髪という「身に付けているもの」に当てはまるという認識が、これまで一般的ではなかっただけです。
「黒は光を吸収する」の仕組みをわかりやすく説明
物体の色は、光の反射と吸収の割合によって決まります。白や明るい色は光のほとんどを反射し、黒や暗い色は光のほとんどを吸収します。吸収された光のエネルギーは熱エネルギーに変換されるため、黒いものは日光を浴びると急速に温度が上昇します。
夏の炎天下でブラックアスファルトが触れられないほど熱くなる理由も、黒いTシャツが白いものより暑く感じる理由も、まったく同じメカニズムです。髪もその例外ではなく、色素の量が多い(=メラニンが多い)ほど光を吸収しやすく、表面温度が上がりやすい性質があります。日本人の多くが持つ黒髪や濃い茶髪は、この観点からすると「最も熱を集めやすい色」であるといえます。
洋服・傘では常識なのに、なぜ髪では今まで注目されなかったのか
白いシャツが夏に涼しいこと、白い日傘が熱を遮ること、遮熱素材の衣類が選ばれること。衣類やファッション小物の世界では「色と暑さの関係」はすでに常識として定着しています。にもかかわらず、髪色という視点が暑さ対策の文脈で取り上げられてこなかったのはなぜでしょうか。
理由はいくつか考えられます。まず、髪は「着替える」ものではなく、簡単に色を変えられないという心理的・物理的なハードルがあります。また、ヘアカラーは長らく「ファッション」として分類され、「機能性」として評価される土壌がありませんでした。さらに、多くの日本人が黒髪であることが"当たり前"とされており、それを変えるという発想自体が生まれにくかった背景もあるでしょう。got2bが今回行った実験は、この見過ごされてきた視点に初めて科学的なデータで光を当てたという点で、業界初の試みとして評価されています。
「でも本当に涼しく感じるの?」体感温度との違いに注意
実験データが印象的であっても、「実際に涼しく感じるかどうか」という疑問は当然です。ここでは、「髪の表面温度」と「体感温度」の違いを正確に理解しておく必要があります。
髪の表面温度と頭皮・体感温度は別物?気象予報士が言った「注意書き」
この実験にコメントを寄せた気象予報士の天達武史氏は、「衣類の色や素材によって暑さの感じ方が変わるように、髪色も直射日光の影響を受ける」と述べつつ、「ヘアカラーの視点から暑さ対策を考えることは、快適に夏を過ごす新たな対策方法の一つかもしれない」と、あくまで可能性として語っています。got2b自身も実験の説明欄に「本実験は『髪の表面温度』に限定したもの」と明記しており、頭部全体の熱環境や体温への影響を直接保証するものではないと断っています。
つまり、「髪の表面温度が下がる=体が涼しくなる」という単純な等式は成立しません。体感温度は気温・湿度・風速・輻射熱・衣類・代謝など多くの要素が複合的に絡み合って決まるものであり、髪色はそのうちのひとつの変数に過ぎません。ただし、頭部は体の中でも血管が多く熱放散に重要な役割を果たしている部位であり、頭皮周辺の温度上昇を抑えることは、体感的な「頭の熱さ」を和らげる効果として体感できる可能性は十分あります。
熱中症は防げる?防げない?正直なところを解説
結論から言えば、「ハイトーンカラーが熱中症を防ぐとは言えない」というのが正直なところです。熱中症は体内の水分・塩分バランスの崩れや、体温調節機能の限界によって起こるものであり、髪色はその直接的な予防手段にはなりません。got2b自身も「熱中症リスクの低減を保証するものではありません」と明確に注記しています。
しかしながら、頭部からの輻射熱を少しでも減らすことが「総合的な暑さ対策の一要素になりうる」という見解は、気象予報士や美容ジャーナリストを含む専門家も支持しています。帽子・日傘・経口補水・冷却グッズといった従来の対策に加える「プラスアルファ」の選択肢として捉えるのが、現時点では最も適切な位置付けです。
13℃差の恩恵は暑さ対策だけじゃない?美容ジャーナリストが語った"副産物"
今回の実験への見解を寄せた美容ジャーナリストの伊熊奈美氏(日本毛髪科学協会・毛髪診断士指導講師)は、髪表面の温度上昇が抑えられることで得られる「暑さ対策以外のメリット」についても言及しています。これが多くの女性にとって、クールカラーに前向きになれる追加の理由になりそうです。
前髪のベタつき・メイク崩れが減る可能性があるって本当?
伊熊氏によると、「頭部の温度上昇が抑えられれば、汗や皮脂の分泌による前髪のベタつきやメイク崩れの予防といった面でもメリットが期待できる」とのことです。頭部は体の中でも汗腺が密集している部位であり、頭皮が熱を持つほど発汗量も増えます。前髪が額や頭皮に張り付くあの不快感や、ファンデーションが崩れやすくなる夏特有の問題も、頭部の熱上昇と無関係ではありません。
これは「気持ちの問題」や「おしゃれの話」ではなく、体温調節と皮脂・汗腺の生理的なつながりを踏まえた見解です。暑さ対策としてハイトーンカラーを選ぶことが、間接的にメイクの持ちや前髪の扱いやすさにもつながる可能性があるという点は、特に外出や対面の仕事が多い方にとって実用的な視点といえるでしょう。
頭のムレが減ると頭皮環境にもメリットがある話
頭皮のムレは、かゆみや臭い、さらには毛髪トラブルの原因になることが知られています。高温多湿の夏は特にこのリスクが高まりやすく、ヘアケアに悩む人が増える季節でもあります。頭皮温度の上昇が抑えられれば、ムレ・雑菌の繁殖・過剰な皮脂分泌を緩和する方向に働く可能性があります。
カラーリストの赤津まゆ美氏(stair:case銀座・チーフカラーリスト)も「見た目の涼しさだけでなく体感温度の軽減にもつながる可能性があるクールカラーは、今後広がっていくのではないか」と述べており、施術の現場からも同様の期待が寄せられています。担当するお客様の約9割がブリーチを用いたカラーリングを希望しているという赤津氏のサロンの現状は、ブリーチへの抵抗感が確実に薄れていることを示しています。
「試してみたい」65%でも躊躇する人が多い理由とその解決策
got2bがセルフカラーに関心のある20〜34歳女性4,706名を対象に実施した調査(2025年7月実施・株式会社I&S BBDO調査)では、クールカラーの企画に「興味を持った」と回答した人は70.8%、「実際に挑戦してみたい」と答えた人は64.9%にのぼりました。関心は高い一方で、裏を返せば3〜4割の人は「気になるけど踏み出せていない」ということになります。その躊躇の正体は何でしょうか。
ブリーチって痛む・コスト高いというイメージ、実際どうなの?
ハイトーンカラーを実現するためにはほぼ必須となるブリーチ処理は、「髪が傷む」「コストがかかる」「色落ちが早い」というイメージが根強くあります。これは完全に否定できるわけではありません。ブリーチはメラニン色素を脱色するプロセスであり、適切なケアなしに繰り返すと髪のタンパク質ダメージや切れ毛・パサつきが生じることは事実です。
ただし、近年の美容技術と製品の進化により、ダメージを抑えながらハイトーンを実現する選択肢は大幅に広がっています。サロンでのケアブリーチ(ケラチン等を配合した補修成分入りのブリーチ剤)や、ホームケア用のトリートメント製品の質も向上しており、「ブリーチ=ぼろぼろになる」という固定観念は、現在の技術水準では必ずしも当てはまらなくなっています。費用については、初回サロン施術で1〜3万円程度かかることが多く、それをデメリットと感じるかどうかは個人の価値観によります。
got2bのセルフカラーで安く始める方法
「まずは気軽に試してみたい」という方に適しているのが、got2bのセルフカラー製品です。got2bはヘンケルが展開するヘアコスメブランドで、サロンで培われた技術・知見をホームケア向けに落とし込んだ製品ラインナップが特徴です。ブリーチ剤からカラー剤まで自宅で使いやすい形で販売されており、ドラッグストアやECサイトで入手できます。
セルフカラーの最大のメリットはコストを抑えられる点ですが、初めてブリーチを行う場合はいくつかの点に注意が必要です。パッチテストを必ず行うこと、説明書の放置時間を守ること、施術前後にたっぷりのトリートメントを使うこと、これら3点は最低限押さえておきたいポイントです。全頭をいきなりハイトーンにするのが不安な場合は、インナーカラーや毛先だけのポイントカラーから始めるのも賢明な選択です。
クールカラー対応製品についての詳細は、got2bの公式クールカラー特設サイトでも確認できます。
まとめ:「髪色で暑さを乗り切る」は非常識ではなく、データに基づく新習慣
この記事で紹介した内容を整理すると、以下のようになります。
- 屋外気温36.4℃の条件下で黒髪とブロンドの髪表面温度に最大13.05℃の差が確認されている
- これは黒が光を吸収し熱に変換する一方明るい色は光を反射するという物理的な性質によるもの
- 髪の表面温度が下がること自体は実証されているが体感温度や熱中症リスクへの直接的な効果は現時点では保証されていない
- 頭部の熱上昇を抑えることで前髪のベタつき・メイク崩れ・頭皮のムレ軽減といった副次的なメリットが期待できる
- ブリーチへのハードルは技術と製品の進化で以前より下がっており、セルフカラーで手軽に始めることもできる
「ヘアカラーを暑さ対策として選ぶ」という発想は、今年の夏に向けて確実に広がりつつあります。帽子・日傘・冷却グッズといった定番の対策と組み合わせることで、より快適な夏の過ごし方が実現できるかもしれません。すでに明るめの髪色を検討していた方には、今年の夏こそ踏み出す理由が一つ増えたといえるでしょう。
