最新医療事情116「命を削る 高額医療の断面 負担軽減、届かぬ情報」 | 脱奴隷小児科医の刹那主義

最新医療事情116「命を削る 高額医療の断面 負担軽減、届かぬ情報」

みなさんいかがお過ごしでしょうか。

多くのコメントありがとうございました。

ニセ女医の件で続報がありましたが、病院の方々はこの検索システムを知らなかったそうです。
確かに、逆に悪用しようと思えば、このシステムを使えばできますな。

まあ、いいや。




新生児の低血糖についてのご質問から。

新生児の低血糖に関しては、我々小児科医はもっとも気をつけています。
その理由として、


 ・低血糖になるリスクファクターというのは非常にたくさんあって、どんな正常新生児でも低血糖に
  なる可能性がある

 ・脳の栄養源はブドウ糖のみなので、低血糖症状が長時間続けば脳に不可逆的な(元に戻らない)
  障害を残す

 ・低血糖の症状というのは、外から見ていても非常に分かりにくく、低血糖による痙攣などの症状が
  出てきた時点で、かなり深刻な低血糖状態になってしまっている可能性が高い
  (つまり血液検査で定期的に調べるしかない)

 ・低血糖というのは非常に赤ちゃんにとって非常にダメージが大きいものであるが、適切に輸液を
  すれば大抵の場合(全てではない)は低血糖を防ぐことができる
  (点滴1本で赤ちゃんの脳を守ることができる)


実際私がNICUで勤務していた時に、地域の産院で低血糖のまま適切な治療がされず、脳に障害を
きたし残念ながら脳性マヒになってしまった赤ちゃんがいました。
頭部MRIでは、見るも無残に脳が委縮してしまっていました。
点滴1本いれておけば、脳性マヒにならなかったかもしれないと思うと残念で仕方ありませんでした。
ただ、中には先天性の代謝異常などがあり低血糖の治療が困難な赤ちゃんもいます。



完全母乳とか何とか式母乳管理とかもいいかもしれませんが、そのために低血糖になり脳障害に
なってしまっては何の意味もありませんよね。
世の中様々なお産施設があり、どこまでも自然なお産にこだわる助産院とかありますが、妊婦さんが
きちんと納得した上でなら別に構わないと私は思います。
自然なお産で、自然に赤ちゃんが脳障害になったと・・・ これも自然な経過であると。


 
今回ご質問を頂いた方の赤ちゃんは、低血糖の治療が困難になる可能性(持続性低血糖)があるので
出生直後から小児科医の管理の下、経過を診てもらったほうがいいと思います。
コメントにありました小倉医療センターはNICUのある病院なので、この病院で出産されることを
お勧めします。

是非、今の産科の先生と相談してみてください。


 
では、本題へ。

『 命を削る 高額医療の断面 負担軽減、届かぬ情報


  「なぜだれも高額療養費制度を教えてくれなかったのか」。慢性骨髄性白血病の長男(36)を
   持つ関東地方の女性(64)は、長男の治療費を工面するため、借金を繰り返すまでに追い込
   まれた。

   長男は95年、突然の下痢に襲われて血液検査を受けたところ、白血病と診断された。
   抗がん剤を使う治療費の負担は重く、自己負担は毎月約10万円になった。長男の収入が少な
   かったため、夫婦が年収約600万円の中から治療費を支援した。だが、住宅ローンもあって
   家計は「火の車」。最後は、親族に頭を下げ、計約200万円を借りた。「息子のためとは
   いえ、親族に借金するのは情けなかった」と女性は振り返る。

   国の高額療養費制度の存在を女性が知ったのは08年。患者会の会報で読んだ。申請すると、
   治療費の自己負担は半分程度に軽くなった。女性は「対象者全員に制度を知らせる仕組みが
   必要」と訴える。

    ◇

   高額療養費制度では、患者からの申請を受けた健康保険組合などの保険者が自己負担上限額の
   超過分を支給する。厚生労働省保険課は「高額療養費制度などの説明を(支給とは直接関係
   ない)病院だけに求めるのは難しい。支給方法なども異なるので、保険者に対応してもらう
   しかないのではないか」と話す。

   例えば大企業のサラリーマンなどが加入し、比較的財政の安定した健康保険組合では、患者が
   申請しなくても上限超過分を自動的に支給する組合があるほか、全体の7割は自己負担分を
   減らす「上乗せ支給」をしている。一方、財政状況の厳しい国民健康保険や中小企業の従業員
   らが加入する協会けんぽは高額療養費制度の上乗せ支給はなく、格差が生じている。さらに、
   国の定める負担上限額も数年に1度のペースで改定されている。健康保険組合連合会の大村
   孝雄指導員は「患者にとって制度が非常に複雑で、分かりにくい」と指摘する。

    ◇

   東京・築地の国立がんセンター中央病院にある相談支援センターには、多くの患者が医療費の
   相談に来る。「治療費の支払いに不安を持ちながら、高額療養費制度を知らない患者が多い」。
   相談に応じる社会福祉士の樋口由起子さんの実感だ。

   同病院では、抗がん剤の治療費をまとめた一覧表を作成。高額療養費制度を紹介するチラシを
   今月から支払窓口近くに置いている。

   患者の多くは治療に伴う経済的負担の全体像を把握できていない。厚労省研究班が06年度に
   まとめた調査(回答者256人)の報告書によると、抗がん剤治療を受けている患者のうち経済
   的負担について病院側から十分な説明を受けた人は25%、説明がなかった人は59・4%に上
   った。

   樋口さんは「患者に近い医療機関が必要な情報を届けることが重要だ」と指摘する。 』
 



   簡単に言うと、高額療養費制度というのはある一定以上の高額医療費に対し
   所得に応じて負担を軽減しますよという制度。

   前の病院ではあらかじめ医療費が高額になりそうな場合は、院内のソーシャルワーカーに
   相談してもらうようにしていましたね。
   白血病の子供の治療に携わっていた時は、まずはじめに手続きをしてもらって。
   毎月150~300万の医療費がかかるから。


   
   ただ、この高額療養費制度という制度は、節税対策と一緒で決してお国が教えてくれる
   ことはない。

   税金で足りない分はとことん請求されるけれど、取り過ぎた分に関してはこちらから請求
   しない限り、向こうからわざわざ返してくれることはないのと同じ。
   
   こうしたら節税できますよと税務署が教えてくれることもないのと同じ。

   知らない人が損をするだけ。

  
   
   何とかして医療費を削減したいと考える政府が、国の負担が増える高額療養費制度をあえて
   各患者に説明するわけがないでしょう。
   聞かれたら答えてくれるかもしれませんがね。
   国が守ってくれる、国が教えてくれるという考え自体が危険です。
   本来は国がするべき仕事を、各病院がサービスでやっているのが現状だと思います。
   
   しつこいですが、ヒブワクチンもそうです。
   本来なら国として子供の命を守るべきでしょう。
   そのためにも一刻も早く、公費負担にすべきです。プレベナーもね。
   子供の命を守るよいワクチンがあるのに、国として大々的に広報さえしない。
   (公費負担ではないので、できないのでしょうけれど。) 

   
   世界120カ国以上で、ヒブワクチンは公費負担なのですよ。

   世界120カ国以上で、子供が全員普通に受けているワクチンなのですよ。

   アメリカでは細菌性髄膜炎の病気自体が過去の病気になっているのですよ。

   なのに、公費負担にするかどうかの検討を来年の夏にするそうです。

   さっさと三種混合に混ぜて、公費負担の四種混合ワクチンにしろっちゅうの。
   


   ブログでは何回も言ってますが、国は国民ひとりひとりの命なんて決して守ってはくれません。

   自分の命は自分で守る、自分の子供の命は自分で守るしかないのです。

   そのためには、正確な知識武装が必要なのは言うまでもありませんね。

    
   
   まあ偏ったブログではありますが、せいぜい参考程度にしてくださいな。

   いつ死ぬか分かりませんが、生きている間は情報を発信し続けていくつもりです(笑)。