デストロイの木馬 -2ページ目

牛歩

それは唐突だった。

「エスカルまだ?」

御茶ノ水駅のホーム。
緊急停車ボタンのすぐ脇にある貼り紙にそれは書いてあった。
まだご飯ができていないのか、
まだ蒙古斑が消えないのかはわからないが、
なにしろエスカルはまだだ。

謎のエスカル。

それはあらいぐまラスカルかもしれないし、
西洋の珍味エスカルゴかもしれない。

断腸の思いで東京マラソンにエントリーするエスカルゴ。
この決断に大都会東京は未曾右の大混乱に陥った。
完走までに軽く5年はかかる上、
軽く5分で乾燥してしまうエスカルゴには常に給水スタッフが待機。
天才肌よりも乾燥肌なやつだった。
動物愛護団体からの強い圧力で、交通規制は5年間丸々続き、首都機能は完全に麻痺、首相は四人変わった。
ニートは定職を持たずに定食のみを食べ続け、生ける肉塊『ミート』君になった。

アナログ放送は旧日本兵ばりのしぶとさを発揮し、ライバルに対して
「切れ痔イボ痔地デジ」
というネガティブ広告で煽る一方、
「強いぞ桃尻、ケツの穴ログ」
を合言葉に地下闘争を続けた。
レジスタンスならぬデジスタンスだったという。

ファストフード業界では、
王者マク怒鳴るドがバリューセットに変わる新定番、
「バリュームセット」を開始。
『ホットドッグ片手に人間ドック』が流行語となり、
健康志向の若者達のハートを鷲掴みにする。
一方○ッテリアでは、「スマイル0円」に対抗し、
新メニュー「投げキッス0円」を導入。
童貞男子諸君は自分の息子を鷲掴みにした。
味に自信のモ○バーガーは、丁寧な仕事で片目をつむる、
「ウインク0円」を開始するが、そのあまりに丁寧な仕事から、
製造スピードの遅れを招き、日本中でこんなクレームで溢れかえったそうな。

「ウインクまだ?」


ウインク…片目つむり…かたつむり…エスカルゴ…


「エスカルまだ?」



世界は、つながっている。

あなたのいう通り

IT化の弊害なのだろうか。
我が家の電気機器がおかしい。

まずはテレビがおかしい。
薄型化・液晶化の波に乗り遅れ、
いまだブラウン管な我が家の情報源だが、
年明けとともに調子を崩し、色を失った。
白と黒だけの、荒涼とした世界。
ブラウンどころではない。

次に携帯。
メールがこない。
たぶん通信障害だ。
違いない。

そして風呂だ。
湯が沸かない。
まるで冷え切った男女関係のように。
もっと熱くなってほしい。
女は熱くあれ!
「オーユーレディ?」

というわけで久々の銭湯へ。
女湯への猛烈な誘惑を断ち切り、
断腸の思いで男湯でと暖簾をくぐる。

ああ、番台に座りてえ。

それは、男の夢だ。
合法に異性のスッポンをスッポンポンできる。
横目でチラリではなく、正面からギラリ。
眼前に広がるは宝の山だ。
しかし、番台の辛いところは、
現ナマ100億円だけではなく、
徳川埋蔵金や石器時代の遺跡までも相手にしなくてはならないところで、
機会平等も諸刃の剣だ。

銭湯耐性万端な俺は、
臆することなく服を脱ぎ、湯船へ直行する。
電気風呂、水風呂、ボディブロー…
どれもじわじわと効いて来る。
特に電気風呂がお気に入り。
微電流が肌をピリピリと刺激して、
ピリピリと張り詰めた神経をやわらげてくれる。
思わず下腹部の神経もやわらいでプリプリ出てしまいそうになる。

「エレキでキレイ」
そんなキャッチコピーが紙上を賑わせる日も近いだろう。
体はキレイに石鹸し、電気が世界を席巻する。

そんなこんなで存分に風呂を満喫し、湯殿を後にした。
締めは、フルーツ牛乳だ。
これがニッポンの原風景。
ルーツ。
と、胃腸でなにやら不穏な動きが。
か、下腹部が時間差攻撃…!

するとこの道の通が颯爽と登場し、
王者の微笑でこう教えてくれた。

「そんな時は、便器風呂だ!」


さすが、通は便の通もお見通しだ。

ファッキンガム宮殿

フック船長になりたい。

それが子供の頃からの夢だった。

機械化された片手。
傷跡だらけの顔に黒い眼帯。
太く大きなダミ声。
右肩には相棒のインコ。

男のロマンだ。


それがいつからだろう、変わってしまったのは。


ファック船長になりたい。

非人間的に強化された中指。
苦悶の顔面に白い液体。
太く大きな、
少し左曲がりなティンコ。

男は手○ンだ。


いつからだろう、下ネタしか書けなくなったのは。

今となっては昔のことだが、
中学生までの俺は、下ネタからは最もファーサイドの、
まだパンパースを履いてるようなガキだった。
友人達がエロ談義に花を咲かせている時、
俺は柔道着にカビを生えさせていた。

むっつりだった。

「コ、コ、コンドーム?
  あれだろあれ、開閉式の新しい奴か?」

そんな南極ボケをかますナイスガイだった。
まあ確かに開閉式のところに挿れるんだけど。

「レッドソックス」

それも、少し恥ずかしかった。

「ルーズソックス」

ヤ、ヤるときゃマジメにやれよ。
なんていうような優等生だった。



それが、いつから、
船に乗るよりも女に乗ることを目指してしまったのだろうか。


ただ、あそこだけは永遠のピーターパン。