リスト/ラ・カンパネラ-2~5つの版の存在-解説 | 話題満載 池ちゃんの『破常識』で行こう!

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リスト/ラ・カンパネラ-2~5つの版の存在-解説

今回は「ラ・カンパネラ」5つの版、この話をしてみたいと思います。
まずここで呼び方を決めておきましょう。
作曲順に、ラ・カンパネラとしての「初版」「2版」「3版」「4版」「最終版」としておきます。

<初版>
<パガニーニのラ・カンパネラ(鐘)の主題による華麗なる大幻想曲 イ短調>
作品番号R231,Op.2。1834年出版。演奏時間:約20分。
※一番最初の「ラ・カンパネラ」。 

<2版>
<パガニーニによる超絶技巧練習曲集第3番「ラ・カンパネラ」変イ短調>
作品番号R3a。1838年出版。演奏時間:6分前後。
「パガニーニ・エチュード」初版(全6曲)に収められています。

<3版>
<パガニーニのラ・カンパネラとヴェニスの謝肉祭の主題による大幻想曲>
作品番号S700ⅰ。1845年出版。
「パガニーニのラ・カンパネラとヴェニスの謝肉祭の主題による大幻想曲」の初版。

<4版>
<パガニーニの主題による大幻想曲>
作品番号S700ⅱ。1845年出版。
「パガニーニのラ・カンパネラとヴェニスの謝肉祭の主題による大幻想曲」の改訂版。

<最終版(5版)>
<パガニーニによる大練習曲集第3番「ラ・カンパネラ」嬰ト短調>
作品番号S141-3。1851年出版。演奏時間:5分前後。
「パガニーニ・エチュード」の改訂版(全6曲)に収められています。
※現在一般的に弾かれている「ラ・カンパネラ」がこれです。


<解説>
<ラ・カンパネラ>
「カンパネラ」とはイタリア語で「小さな鐘」のこと。
教会やお寺の鐘、風鈴なども全部「カンパネラ」。ちなみに普通の大きさの鐘は「カンパーナ」と言います。

<パガニーニ>
“パガニーニによる”と曲の頭についていますが、これはパガニーニ作曲の「ヴァイオリン独奏曲」(第1番または第2番)を基にアレンジしたからです。
この「パガニーニ」は独創的な曲を自作自演していた人ですから、自分の曲や技巧を他人に盗まれるのを嫌っていました。そのため、一日に二度同じ曲を弾く事がなかったといいます。
自分の演奏会でさえ、開演数時間前にオーケストラに楽譜を渡し、演奏終了と共に全て回収。真似されたら(出来ないでしょうが)飯の食い上げという事なのでしょう。
こんな状態ですから、アレンジの元となるパガニーニの原曲は全てリストの頭の中。記憶だけですから大変だったでしょう。

<パガニーニ・エチュード>
「パガニーニ・エチュード」とは、カンパネラ2版の「パガニーニによる超絶技巧練習曲集(初版 S140)」(長いので「パガ超」と呼ばせていただきます)と、カンパネラ最終版の「パガニーニによる大練習曲集(改訂版 S141)」(同じく「パガ大」と呼ばせていただきます)。この、それぞれ6曲からなる2つの曲集の事です。
「パガニーニ・エチュード・初版」「パガニーニ・エチュード・改訂版」とも呼ばれますが、初版はリストの理想をそのまま曲に反映させたため、改訂版に比べて桁違いの難易度となっています。かの有名な「ホロヴィッツ」が「初版はリスト本人以外、演奏不可能である」と言ったほど。
ですから、もし「パガ大(パガニーニによる大練習曲集)」ではなく、「パガ超(パガニーニによる超絶技巧練習曲集)を弾いた」となったら今でも大ニュース。
2009年まででも、この曲集を弾いたのは「レスリー・ハワード」を含めた4人だけなのですから。

<パガニーニによる超絶技巧練習曲集とパガニーニによる大練習曲集>
勿論「ラ・カンパネラ」はこの中の一曲。同様に「改訂版・パガ大」に比べて「初版・パガ超」は、難易度が桁違いです。
今、世界のピアニストが聴いている「パガ大」のラ・カンパネラは、難しすぎて誰も弾く事の出来ない「パガ超」を、誰でも弾けるように書き直した「超簡単ヴァージョン」なのですから。

そして更に、その「誰も弾けないパガ超 ラ・カンパネラ」の上を行く超絶技巧が、初版の「パガニーニのラ・カンパネラ(鐘)の主題による華麗なる大幻想曲 イ短調」。
ちなみにこの「最初のカンパネラ」は、最も難しいピアノ曲の一つとも言われています。

<似たような名前>
リストの曲には似た名前のものがいくつかありますが、それは難易度も性格も全く違う“似て非なる物”です。
先ほどの「パガニーニによる超絶技巧練習曲集」と「パガニーニによる大練習曲集」もそうですが、「超絶技巧練習曲集」と「パガニーニによる超絶技巧練習曲集」も全然違うものです。