話題満載 池ちゃんの『破常識』で行こう!

話題満載 池ちゃんの『破常識』で行こう!

こんにちは。このブログは、物理に数学・心理学。クラシック音楽や映画に小説・シヨート・ショート、果てはお笑いまで、色々な話題を取り上げています。新旧の無い『本』の様なブログを目指しておりますので、古い記事でもコメントをお待ちしております♪

実は、最終回が放送された後、友人からこんなLINEが来ました。
"ネットで「詳細は見た人がそれぞれで考えるドラマ」とあった"
なんじゃそりゃ!!!!
色々なエピソードを並べ、辻褄合わせも因果関係も何も提示せず「勝手に考えて」は無いだろう。
卑怯ではあるが、これも一つのアイディアなのか? 昨今のドラマには"考察ファン向け"があるらしいし。
大方、"考察好きには裏ストーリーを準備した。考察しない人には、アッと驚くどんでん返しさえ設定しとけば喜んでもらえるだろう"まあ、そんなところか…。


不自然に長い光誠の父のエピソード。英人の母の不倫疑惑。英梨の「商店街の絵」に執着する光誠。瓜二つな容姿。
その他、散りばめられた諸々の材料を繋げ、私なりに物語を紡ぎあげた。
それが脚本家が考えたものに辿り着いているかどうかは分からないが、一番ふさわしいものになっているという自負はある。
であればなおの事、間違った道に誘導する描写は避けなければならない。それが正義であり、提示をしない者の責任だ。
もしそれに気づかないのなら。それは"稚拙"としか言いようがない。それとも、問題と思われることそのものも"考察の種"にされているのだろうか。
では、その"間違った道に誘導"させられた要因を探ってみる。

<突き落としたのは第三者という描写だったはず>
私が"突き落とした人物"をあれこれ考察せざるを得なかったのは、突き落とした描写が第三者・神の視点であり、本人が見る事の出来ない映像だったからだ。
妄想にしたいのなら、後ろから腕が延びて突き落とす描写ではなく、背中をドンと押された衝撃と、振り返って"伸ばした腕を引っ込めて男が去っていく姿を見る"とすれば、本人の視点だから妄想としても問題はない。
大体、"本当は自ら身を投げた"というのは最初に思いつくので、この描写が無ければもっとふさわしい考察が出来た。
まさか本当に"自らだった"と知った時の落胆…。「無駄に費やした時間を返せ」と言いたい。

<光誠が転落して英治がその体を受け止めたシーン>
1.英治「二人が似てるからこんな事になっちゃったのかな…」
→は??? 似ていることは何も関係ないでしょ。その意味は何?

2.英治が慈しむように光誠を抱きしめた
→光誠の無慈悲な買収で立ち退きに追い込まれ、金平は自殺未遂までしたんですよ。
解散して散り散りになって、元商店街の人々は光誠のテレビニュースを見て怒りに震えた。そんな憎き男に、あんな表情はない。
そして、「ずっと、辛かったな」と台詞を吐かせたのだから、そこまでの話を英治が聞いていた事は確か。
ならば、中身が英人だと知って衝撃を受けたはずなのに、それが無いのは何故? 
二人が双子の息子だという前提だとしても、入れ替わりは知らなかったはず。
ここは、「ずっと辛かったな、英人」「と、父さん」とするのがふさわしい。

<何故英治はあの場に来たのか>
私が書いた前記事の考察シナリオであれば必然性が生まれるが、この場合は理由が不明、偶然のように作られていたのであまりにも御都合主義。
登山中に心臓発作で倒れ、たまたま前を歩いていた人が循環器の医者で、後ろにいた人がAEDを運んでいた、くらい酷い。

<あの場に友野は不要>
転落現場で英人と光誠が対峙し、入れ替わりを知る場面に友野達樹を立ち会わせる必要は無い。再考を乞い、断られる行は既にあった。
英人が転落現場に駆け付けるきっかけとしたかったのだろうが、英人はずっと突き落とした人物を知りたかったわけだから、必ず現場に行くのだ。
そして、何故あえて登場させる必要のない友野を立ち会わせてまで、入れ替わりを知る事にしたのか。
英人は友野の妻・英梨の兄だ。また、今後ビジネスパートナーとして、友野も英梨も光誠と近い距離で生きることになる。
"死んだはずの君の兄は、実は光誠の中にいる"と、英梨に言わずにいられるのか。友野に背負わせるには重すぎる荷物、知らずに終わらせるのが正解だ。英治も同様に。

予告に更紗が「あなたは誰なの?」と自問するシーンがあったが、1週間散々その後の展開を考えさせといて「どっちでもいいか」は無い。商店街の面々の別れなど、良いーンなど沢山あったのにね。
まあ他にもありますが、このくらいにしておきます。
でも、俳優陣は素晴らしかった。表情に説得力がありました。
もし私に最終回を書かせてもらえたなら、、、。残念でしかたありませぬ。
とは言うものの、自ら転落したのを前提にストーリーの練り直しをしている私がいます。
最終回を見直しながら…。

 

今夜は最終回。昨日の記事「人情ドラマ編」で残った"父・英治"と"更紗"の考察を、最後に書かせていただきます。

・野本英治
光誠の"商店街の土地買収"によって移転を迫られ窮地に立たされている時、光誠が自分の息子なら何故それを訴えなかったのか。
事件の時、光誠が転落して何故英治がそこにいて衝突したのか、その点についてです。

英治にとって、光誠が息子・英人の実の兄弟である事は、何が何でも隠し通さなければならない事でした。
光誠と英人が双子である事、そして自分の実の子ではない事。
増してや、以前仲間たちが働く商店街で詐欺を行った男が二人の実の父親である事は、決して知られてはならない。
もしそれを知られたら、自分のみならず、英人や娘の英梨まで商店街での居場所を失う事になる。
あの時、秘密を守って頑張ろうと誓った妻、二人の母親である遥香の尊厳まで失う事でもあったのです。
ネオシスが買収の交渉に来た時、英治はどれだけ自分が光誠の父親である事を訴えたかったか、自分たちが去れば商店街は守られるのか、激しい葛藤の中にいたのでした。
そして、英治はついに全てを打ち明け、商店街の買収を考え直してもらうよう、光誠に会いに行ったのです。
丁度、英治が階段を中ほどまで上ったその時、光誠が階段の上にやって来ました。しかし、言葉を交わす事も間も無く、転落して来た光誠を身を呈して受け止め、二人とも意識を失ったのです。

・更紗
更紗は強烈な違和感を抱き始めていました。
光誠が自分に恋愛感情を表し、描いた"自分の子どもの頃からの夢"を描いた絵に異常な興味を持ち、即座に買ったのか。
英人の中に光誠と重なる部分が見え始め、英人と光誠がダブって感じていたのです。
更紗はある日、その違和感を英人にぶつけました。
「あなたや根尾社長といると、時々どっちと会っているか分からなくなる時がある」
英人は衝撃を受けました。英人自身も、根尾光誠と瓜二つであるだけでなく、相似性を心の底で感じていたからです。
「根尾社長に会って決着をつけて来る」
いよいよ"事件"が起きた時間が近づき、英人は立ち上がると急ぐように飛び出し、更紗はその後を追いました。
更紗が二人のいる階段に行くと、光誠から二人が一卵性双生児であることを告げられ、それが二人が同一人物であるかのような錯覚を起こす原因だと悟り、誤解が溶けたのです。
「更紗さん。僕もあなたが好きでした。二人とも同じ人を好きになるなんて、やっぱり双子なんだね」
その寂し気に微笑む光誠に、更紗は悲しさを感じるのでした。。

  ☆  ☆  ☆

これで完結です。
ここまで数回に分けて考察して来ましたが、つなげると全ての辻褄が合います。
さて、これを最終回で描くには手腕が問われますね。名作となるかどうかは"回想シーン"をどう作るかでしょう。
古い作品では「砂の器」「幸せの黄色いハンカチ」、洋画では「ひまわり」など、回想シーンが肝となっていました。
近年では、ドラマ「VIVANT」もそうでした。
ラストシーンはドラマ「JIN-仁」のように、最後に光誠から受け取った手紙を読むシーンで締めくくっても良いでしょう。

私としては、これまでの流れからこのストーリーが的確だと思っています。

このプロットとしては"英人、光誠、英治の三角入れ替わり"や"転生ループ"や"復讐劇"など色々考えられますが、その場合はそれなりの展開・演出となります。それはそれで見てみたいですがね。
いずれにせよ、こんな考察など全く意味をなさなかった"屑ドラマ"で終わらない事を祈るばかりです。

いよいよ明日は最終回。今回の考察が最後になりそうです。
人情ドラマ編とでも言いましょうか。僕が考える"考察創作ストーリー"最終版です。ドラマに描かれている部分は省略します。

・転生までの流れ
野本英人の母・野本遥香は野本英治と結婚していたが、"社長"への憧れから根尾大誠と一夜を共にし、思いがけず妊娠してしまう。
生まれてきたのは双子だった。英治は事情を知った上で遥香と二人で育てると訴えるが、大誠は自分の子供だから自分で育てると聞き入れない。
そこで仕方なく、兄・英人は野本夫婦に、弟・光誠は根尾大誠に引き取られることとなった。
その後、英人の母は亡くなるが、妹・英梨や商店街の人々、幼馴染の更紗に囲まれてすくすくと育った。
一方、弟・光誠は父の事業失敗や度重なる借金生活での困窮した生活を強いられ、自分の力で人生を切り開こうと事業を立ち上げ、見る見るうちに成功への道を進んだ。
実は、英人は母・遥香が亡くなる時、双子の弟・光誠の存在を打ち明けられ、「何かあったら弟の力になってあげて」と告げられていた。
それから英人は、光誠の事業や活躍を密かに見ていた。偶然、妹の英梨が光誠の会社「ネオシス」に入り光誠の秘書となると、光誠の人柄や行動・癖に至るまで、英梨の知り得る情報を事細かく聞く事が出来た。
そして事件が起こり、転生によって二人は入れ替わった。

・光誠となった英人
仕事での細かい事は、事故の後遺症による記憶障害にかこつけて乗り切る事が出来た。
事業展開や光誠の言動・癖などは妹・英梨から聞いていた事が参考に出来たし、何より問題が発生した時、驚くほど英人は光誠と全く同じ決断をした。
当然、英梨の恋人や英梨が会社を辞めた事も、兄として見ていた。
では、何故英人が度々光誠との接触を求め、光誠はそれを拒み続けたのか。
それは、真実を知るのは自分一人であり、弟は知らないはずだからだ。
弟と会い「君は英人ではないのか?」と問われたらどう答える? 
双子であることを知ったら何かが壊れてしまうのではないか? 
妹・英梨が知ったら? 
それより、「更紗を返せ!」と自分が掴みかかる衝動に駆られるだろう。
それがどれだけ理不尽な要求であるか、更紗がそれを知ればどれだけ悲しみ困惑するか。それを知っているからこそ、光誠は英人に会う事が出来なかったのである。
幸せな家族や恋人、商店街の仲間たちと暮らした自分。双子の弟でありながら、不遇な幼少期と孤独の中で生きてきた弟。
自分の責任では無いものの、ある種の贖罪の気持ちもあったのかもしれない。

・更紗の一枚の絵
光誠は、英人に"英人としての人生"を譲ろうと思っている
自分は何不自由なく育てられ、ここまで幸せに生きてきた。ここから先は、弟に"あの幸せを"感じて生きて欲しいのだ。
ただ一つの心残りは更紗だ。
更紗だけは譲りたくないものの、もう光誠である自分の元へは来ない。
そんな時、更紗の描いた一枚の絵にくぎ付けとなった。
『商店街の絵』
この絵には、かつて更紗が語ってくれた夢が広がっている。
光誠は即座にその絵を買い、リビングの壁にかけた。
『この絵は今の僕にとっての更紗そのもの』
毎晩眺める絵の中には、二人で語り合った世界に満ちていたのである。

・商店街の買収
銀行買収が絡み、商店街の土地買収の話が持ち上がった。
かつて英人だった時の自分は怒りしか無かったが、根尾として対峙すると見える世界が違った。
商店街は衰退の一途で先は見えており、客観的に判断すれば以前の根尾の考えは理解できる。
"どうすれば「あかり商店街」を再生できるか"
そう考えていると、「東郷ファンド」の東郷義隆から蒼萬のスーパーが閉店するという話を聞いた。
『これだ。この土地を手に入れれば"あかり商店街"を立て直せる』
また、英人もその情報を掴んでいる事を聞き、光誠は早速一萬田社長に会う約束を取り付け、スーパーの土地を譲り受ける約束を取り付けた。
光誠は、何としても自分が先に買わなければならない。更紗の描いた絵、あれは更紗そのもの。
"更紗の夢"を叶えるのは僕だ!!"
これだけは英人に譲るわけには行かなかった。

  ☆  ☆  ☆

とここまでが第8回放送分まで。
ここからは、これまで書いた記事での進みです。
ただ違うのは、英人は双子であることを知らず、階段シーンで光誠から打ち明けられる事。
そして、これからの人生は、英人として更紗と幸せに生きて欲しいと告げる事。
尚、光誠は「命の代償」を知っていた。

「命の代償を払わなければならないのなら、それは僕の方だよ。今の僕には悲しむ家族はいないからね」

ここで更紗が駆け付けると、光誠は手紙を渡し、軽く手を振り微笑んだ。
「英人。更紗。僕は幸せだったよ。ありがとう…」
そして光誠は身を投げ、英人は気を失った。

手紙には、自分のこれまでの人生や、今までずっと兄として密かに見守っていた事が書かれていた。
また、ネオシスには"自分と英人が双子であり、自分亡き後は英人が社長に就任する事"、既に進めている「あかり商店街」再生事業を責任もって進めて欲しい事が書かれていた。
更紗は双子であることは知ったが、入れ替わったことは知らない。
光誠の言った通り、英人は意識を取り戻し、"今"を生きている。もうここから先に『知った未来』は存在しないのだ。

今回は、回収されるべき問題と深堀考察です。

<英人の母と根尾の父との不倫疑惑>
ドラマでは、英人の母と根尾の父が不倫していたのではないか、と匂わせていました。
しかし、私には不倫どころか"英人と根尾は一卵性双生児"だとしか考えられないのです。

1.外見が瓜二つ
いくら似ているからと言って、髪型と眼鏡を同じにするだけで替え玉として通用するなどとは考えられません。同じ父親の兄弟ですら、そこまで似ないもの。
では、どういう経緯で双子の兄弟が別の環境で育つことになったのか…。

2.根尾の育った環境が伏せられている
まず、二人の父親は根尾を育てた男でしょう。
英人の母が根尾の父に憧れを持っていた行(くだり)があったので、根尾の父の子を身ごもり、双子を産んだと考えられます。
英人の父が全てを知っていたかは分かりませんが、何かを隠している表情は見て取れました。
そして、母親は一人を根尾の父に預け、一人は自分の手元に残した。
元来相当な屑男だったようなので、継母どころかきちんとした子育て環境など与えられなかったのかもしれません。故に、根尾が「家族に良い思い出が無い」と言ったのでしょう。

3.シンクロニシティ
このドラマの根幹である"転生"も、一卵性双生児であるが故のシンクロニシティではないか。
二人が共に生死をさまよう事故に遭った事。揃って同じ時代に飛ばされ、互いの体に入れ替わった事。同じ女性に惹かれた事。
これらの全てが一卵性双生児であるが故の"必然"と思えるのです。


<英人と更紗の"性"問題>
根尾は英人に会う事を拒絶していました。何故そこまで拒むのか。入れ替わりの疑問があれば、会って確認したくなるのが普通ではないか…。
そこには、心の底にある抗いがたい"嫉妬"があるからと考えます。
『僕の愛する更紗を奴は抱いているかもしれない』

1.英人と更紗の関係
二人は幼馴染、しかも同じ商店街で育った頻繁に一緒にいる間柄。
子どもの頃から助け合い、そのまま大人になってプロポーズ。そんな二人が純潔などいう事があるだろうか?!
更紗が英人と二人で並んで座っていた時、ごく自然に彼にもたれかかり、頭を彼の肩に乗せました。それは既に"そういう関係"であることの温かい証です。

2.入れ替わった英人は更紗と関係を持ったのか
そんな関係なら、入れ替わってから数年経つのであれば、"あるのが自然"ではないか。
もし英人(中身は根尾)が避けているのであれば、事故の後遺症を口実にするかもしれないが、Kissくらいは出来るはずなので、徐々に更紗に魅かれるのもまた自然な事です。

3.根尾の父親が"女性或いは性行為に興味が薄い"男だとした場合
英人の母に強引に言い寄られて渋々関係を持ち、双子が出来てしまった。
何か深い訳があったのかもしれないが、一人は自分が育て、もう一人は「私の分身だと思って手元に置いて欲しい」などと言って、乳飲み子を置いて出て行った母親。
男は女子供に興味が薄いものの、僅かばかりの責任感から面倒を見始める。しかし、その子育てはおざなりで、家族というものを知らぬ子に育ってしまった。
そんな経緯も含めて、根尾は特に母親、ひいては女性全般への潜在的な無関心があっても不思議ではない。


4.父親の血を受け継いだ英人と根尾
もし二人ともそんな父親の血を受け継ぎ、女性や性行為に興味が薄いのだとしたら、ある仮説が立てられる。
"結婚するまで手は出さない"
二人が双子で同じ価値観であったなら、何も無くても更紗はそれを"真面目さ"や"自分を大切にしてくれている"と感じ、理解している可能性もある。入れ替わった英人に更紗が求める事も無く、自然に事が進んでいたであろう。
そしてまた、そんな英人と根尾が更紗には惹かれてしまったのも頷ける。
…しかし、である。
プラトニックであるがこそ"激しさ"があるのも確かだ。
その激しさの裏返し、コインの裏表として"嫉妬"がある。
自分に向けられていた更紗からの愛を"なりすましの男"に奪われた根尾の憎悪は計り知れない。

5.更紗の自問~まとめ
最終回の予告で更紗は「あなたは誰なの?」と自問していた。もし英人の前で狼狽するのなら、その葛藤を理解できる。
愛し続け、婚約発表まで笑顔で行い、根尾に対して英人への思いで啖呵まで切った更紗。
その相手が別人だと知ったら発狂するだろう。プラトニックなら尚更だし、関係を持っていたなら生理的拒否感まで重なる。
そして、それに気づかなかった自分への怒りと情けなさで自己嫌悪に陥ってしまっても不思議ではない。
しかし、予告では静かな自問しか描かれていない。つまり、疑問を持った予告ではあったが無事にバレずに終わると予想する。
もし更紗にバレるとすれば、クライマックスの階段シーンでの"根尾の自白"だろう。
だが、更紗が全てを知った後に英人と元の気持ちに戻れるかどうかは前の記事で書いた通りである。
いずれにせよ、そこまで深い関係にありながら、何年も他人であることに気づかずにいられたのは、感性まで極めて近い双子であることの証明だと思えてならない。

  ☆  ☆  ☆

まだまだ深堀が出来るが、残り45分の放送で描ける筈も無いし、描くつもりも無いだろう。いや、そもそもそこまで深く設定されていないように思える。
そこが原作本がある作品と"オリジナル脚本"の違いだろう。
原作を読んでからドラマを観た場合、「描き切れていない」と感じるだろうし、オリジナル脚本の場合は「底が浅い」と感じてしまう。
「VIVANT」は良く出来たドラマだったが、やはり2クールを要したし、描き切れなかった積み残しも多々あった。
まだ最終回は放送されていないが、無駄なエピソードに時間をかけて、肝心な"知りたい部分"を適当に流してしまう軽薄エンタメドラマとならない事を祈るばかりだ。

※これはあくまでも考察・想像であり、ドラマを解説したものではありません。

前回同様「想定パターンはたくさんある」の続き、サスペンス調です。
頭の中にある数々のストーリー、3日後の放送で決着しまう前に、一つでも多く吐き出してしまわないと気持ちが悪い。
思い起こせば過去にもこんな事があり、記事にもしました。

ドラマ「シグナル(日本版)」~モヤモヤしたラスト、池ちゃんならこう書く!!! | 話題満載 池ちゃんの『破常識』で行こう!

では本題に入ります。
前回の「突き落とした犯人は英人だった」案は、据わりこそ良いものの、ちょっと読める人なら簡単に予想できる展開。
私がサスペンスドラマの製作者なら、定番の「意外性」を持たせるだろう。
これはありふれた手法ではあるものの、「えっ、そう来ると思わなかった!」と驚かせてニンマリするのが狙いだ。
あの「予告映像」はそのためのもの。事件が起きた階段で二人を対峙させ、いかにも"犯人は英人なのかも? "と薄っぺらな推理を誘導する。
しかし、真犯人は違う人物だった。それは誰か…!

<犯人は更紗!>

転生前、更紗は父を失い、追い詰めた根尾に激しい憎悪に燃えていた。
復讐心を抱き、精神が不安定な更紗を落ち着かせるため、英人は婚約に慎重になっていた。
そんなある日、更紗に不穏な空気を察した英人は、外出する更紗の後を追うことにした。
途中で男の服装に着替え、向かった先は例の階段。そこに根尾が現れると、更紗は後ろから近づき躊躇なく突き落とした。
その一瞬の出来事に、英人は言葉を失う。止める暇もない。
走り去った更紗は、家の工場に逃げ込んだ。その後を追ってきた英人と半狂乱になってもみ合ううちに、積み上げた重いロールが崩れ、英人はその下敷きになってしまった。
或いは、更紗を尾行するためにスース姿になった英人は、更紗がそっと根尾の背後に近づき突き落とそうとするのを止めようとしたが間に合わなかった。
その時に落ちて行く根尾を掴もうとする英人の腕と姿を一瞬見た根尾が、スーツ姿の男に突き落とされたと思い込んだのだ。
半狂乱になって走り去る更紗をそのままに出来ず、更紗を追いかけた英人は工場に入った更紗を落ち着けようとした。しかし、暴れる更紗がぶつかったドラムが崩れ、助けようとした英人が更紗の代わりに下敷きになってしまった。
"スーツを着た腕が根尾を突き落とす"シーンは根尾のイメージ・錯覚・思い込みの映像としたブラフかもしれないが、まさかそれは無いだろう。

<ドラマの展開>
事件が起きた時を迎え、転生後の英人は現場(階段)に来ると、根尾が待っていた。
英人「君は英人なのか?」
根尾「そうだよ。転生して君と入れ替わってしまったのさ」
英人「僕を避けていたのは何故だ」
根尾「会って何が出来たと言うんだ? 入れ替わったまま、互いに生きるしか無かったじゃないか。僕は、君といる更紗を見たくなかったんだよ」
英人「あの時、僕を突き落としたのは君なのか?」
根尾「それは違う。更紗だよ。~(ここで一連の説明をする)~」
英人を追ってきた更紗が現れる。更紗は英人から転生の話をすでに聞いていた。
更紗「あなたが本当の英人なの?」
根尾「本当の英人…と言うより"かつての英人"と言うべきかな? 確かに中身は入れ替わってしまったが、彼の心も僕そのものだったのは、この数年で更紗も分かっているじゃないか」
英人「いや、君はやはり英人だ。本当は、スーパーの跡地に新しい"あかり商店街"を作るつもりなんじゃないか?」
根尾「ははっ、その通りだよ。やはり君は既に英人だ。あかり商店街の再建計画は既に進めていて、そのための資金作りだったんだよ」
英人「それで更紗の"あの絵"を買ったのか?」
根尾「そう。あの絵のような街を作るつもりだ」
英人「更紗の思い、夢を叶えるつもりだったんだね?」
根尾「・・・」
その時、英人の体がグラリと崩れ、気を失いそうになるのを必死に堪えた。
更紗「大丈夫? 英人!」
心配そうに英人を支える更紗に、根尾は寂しげに微笑んだ。
根尾「そろそろ代償を受ける時間かな?」
英人「知っていたのか?」
根尾「当たり前だ。今の僕と君とは一体じゃないか」
英人「うっ…」
英人は意識を失った。
根尾「更紗、愛してる。僕は君と生きたかった」
根尾は優しく微笑むと、階段から後ろ向きに身を投げた。

  ☆  ☆  ☆

その後の展開は前回書いた"再びの転生"がふさわしい。
いや、別のパターンもあるぞ。思いつくアイデアを次々に書かないと、最終回が放送されてしまうではないか!
…と、ここでふと思った。
(僕は何をやっているのだろう)

また横道に心血を注いでいる。
この熱量があるのなら、自分の作品をサッサと書いたらどうなんだ???
2度目の東京オリンピックを仕掛けにしたショートショートも時機を逸し、書き出して止まっている「赤い雪」も放置。
"定年を迎える64才の男の悲哀"をテーマにした純文学の骨子も書き出しも決まっていたのに、65歳を超えてタイミングを逸した。
これは単に、締め切りが無いと書けない怠惰さが原因なのだろう。そう思う。…反省。

 

前の記事で「想定パターンはたくさんある」と書いたので、その一つを書いてみます。

まず、ドラマの中で何度も出てくる「命の代償」。
これは、英人が受けるのではなく"根尾の肉体"と"英人の魂"で払わされるのではないか。何故なら、それが"そもそもの根尾"の本体なのだから。
だとしたら、英人が時々気を失うのは魂が抜ける前兆とも考えられる。ただし、同時に根尾の肉体も滅びなければならない。
そして、その場所として選ばれたのが"あの階段"ということだ。根尾は身を投げ、英人は気を失う。
目を覚ました英人には、元の英人の魂が戻っているのだろう。あくまでも命の代償を払ったのは根尾、これで物語としてはスッキリする。

しかし、それで済まされないのはその後の人間模様だ。
社長を失った"あの部下たち"が「あかり商店街」を再建しようとは思わないだろう。そうなれば、商店街の今後は無いし、更紗と英人の感情も「戻って良かったね」とはならないだろう。
また、前回も書いた通り、主人公・根尾の視点から英人の視点に変わるのもいただけない。
亡くなった根尾のナレーションで進めるという手法もあるが、明るい未来を語れない後味の悪いドラマとなってしまう。
或いは、階段の転落シーンから英人の魂が戻り、根尾が死去でスパッと"The End"という手もあるが、「そのあとどうなった?」という尻切れトンボ感は否めない。

それより、これらでは「最後のヒーロー」とはなり得ない。

全て丸く収める方法は何か…。それは、根尾の死から"再びの転生"だろう。
条件は揃っている。一連の記憶を持っているのは根尾一人。英人も更紗も皆以前のまま、"未来を知る能力者"も存在しない。
ネオシスを率いる新たな根尾は銀行を買収せず、福祉事業に邁進する。
前世? で見た"更紗の書いた絵"の記憶を基に(書いてから買っても良い)、新たなるビジネスモデルと共に"あかり商店街"再建に投資を行う。
英人と更紗、英人の妹とネオシス社員の結婚。あかり商店街の明るい未来と"あの人々"の笑顔。
そんな姿を見ながら、根尾は更紗と過ごしたあの日の思いに人知れず胸を焦がす。
寂しきヒーローは一人、窓の下に広がる夜景を見ながら、その手には商店街のコロッケとあの日の酒があった。

どうでしょう。
私ならこんな"希望とほろ苦さ"を残したラストにしますがね。
"どうする家康"ならぬ、"どうする脚本家!"

いきなりですが本題に入ります。これは考察と、自分ならこう本を書くという展開予想です。

 ~ ~ ~

新・根尾の中身が旧・英人で確定でしょう。

会長に「親の顔が見てみたい」と言われた根尾が「いやぁ驚きました。貴方にそんな事を言われるとは」とフッと笑ったから。それで全て繋がった!!

その上で、ラストでスーパーの跡地を根尾が買い取ったとなり、「だろうね…」と、思わず笑った。
根尾があの絵に執着していたのは、描かれている商店街そのままに、新たなる再建をしようとしていたからであり、その場所がスーパー跡地だということ。
英人の心の根尾も「あかり商店街」の敷地買収を進めたのは、今の商店街は既に風前の灯火であり、第三者の目で見ても立て直すのは無理だというのが明らかだったからだろう。
あの絵のような街を作るのが『夢』だったのだろうね。
さて、どこからが新・根尾の計画だったのか…。
最初から、というのは本としては面白いけど、あんな不幸を招かずともうまくやれたはずだから、流れでそうなっただけだとは思うけど。

では、最大の謎。誰に突き落とされたのか…。
これは英人しかいないだろう。
転生前の商店街サイドを見返したが、英人が死んでいる描写は出てきていなかった。心肺停止になったというセリフはあったが、死んだとは言っていない。
どのシーンにも英人が出てきておらず、葬儀の場にもいなかった。「英人そっくり」というセリフだけで「死んだ英人そっくり」とは言っていない。
とにかく英人に関しては曖昧で全く触れられておらず、転生後に事故など色々と出てきたが、あくまでも転生後のエピソード。それを転生前に既に死んでいたと錯覚させているのだとしたら、ちょっとズルいね。

予告で、英人と根尾があの階段で対峙していたが、犯人でなければその時に現場には存在しない。予告づくりのミスだ。
根尾「あの時、君を突き落としたのは僕(英人)だ。今の君ならその気持ちが分かるだろう」
英人「いや、僕はそんな事はしない」
根尾「それは君には跳ね返すだけの力があったからだよ。あの時の僕には何も出来なかった。彼女のお父さんがあんな事になって、どれだけ絶望の中で恨んだか…。当時の君は気にも留めなかっただろうけど」
英人「それは、申し訳なかったと思っている。謝罪してもしきれない」
根尾「今の君は僕の人生を歩いている。君が君のままだったとしても、そう言える自信がありますか?」
英人「とにかく、僕は…」
根尾「今の君は僕を殺そうとは思わないだろう。でもそれでは駄目なんだ。彼女は根尾としての僕の申し出を断った。だから、僕が彼女と一緒になるにはもう一度生まれ変わるしか無い。僕が僕として生きるために…」
そして根尾は自ら階段に身を落とした。

そんなところだろうか。
ただ、予告では彼女が英人が別人ではないかと気づくようだから、彼女の決断によって流れが変わるけどね。
転生と入れ替わりまで自白? するのか。それともブラフ?
彼女の心が揺れ動いたまま再び過去へ転生してチャラにするのか。
根尾が転落で命を落として英人も気を失い、それが「命の代償」となって元の英人に戻るのか。
想定パターンはたくさんあるけど、これが一番可能性があるかな。文字通り「リボーン」だからね。

~最後のヒーロー~の意味
再びの入れ替わりが「命の代償」として受け入れられるなら、根尾も生き残って新「あかり商店街」再建に向かい、ヒーローとなる。それなら「テセウスの舟」のように、最後の最後に視点が動くことも防げる。
最初からずっと根尾視点でしか動いていないから、全く描かれてこなかった英人視点に移るのは違和感しか無い。
でもねぇ、全てを知ってしまった彼女の心。話としてうまく整理をつけられるのかなぁ。

とにもかくにも、あと一話でどうまとめるのか、製作の手腕が問われる。

果たして「神ドラマ」となるか、それとも「ク〇ドラマ」となり果てるのか…。

「貴方は月に何冊読書していますか」と、よくテレビや雑誌でやっている。

いかにも「読書しない人は語彙も少なく知的魅力に乏しい」と言いたげだ。

ならば、たまにしか本を読まない私は「ぼんくら」なのだろう。

しかし、この老眼には本の文字が辛いし、一日中仕事でのパソコンで目はショボショボ、読書どころではないのが現実。

 

ところで、この「読書」とは、何をもって「読書」と言うのか。雑誌は? 漫画は? 調べものは?

そこで「読書の定義」を調べてみると、「文学作品を読むことに限らず,自然科学・社会科学関係の本や新聞・雑誌を読んだり,何かを調べるために関係する本を読んだりすることなども含めたものである」とある。

では、レシピ本などはどうなのか。仕事で技術資料はよく開くが、これは「読書」なのか。違うよね。

 

その様なものを読んだところで、語彙力も読解力も、ましてや多様な価値観や感受性など無縁。

やはり読書とは情報のみならず、どんな形であれ「心が動かされるもの」であると思う。

それが紙の本ではなく、電子テキストでも構わない。とにかく文章・文脈から心の中でイメージが膨らみ、時にはものの考え方から価値観まで影響を受ける。それが読書というものだし、醍醐味と言える。

 

ところが今の自分はと言うと、人物や物事の歴史・解説や、気になる事を調べる「情報収集」「知識欲」の為に文章を読む事が多い。

もう既に、価値観や人生観などは、読んで影響されるより「書く側」の年齢であるし、ストーリーも与えられるより「考案する」方がずっと楽しい。

でも、それもこれも十代・二十代の読書が礎となっているのは確かだ。様々なジャンルの本に影響を与えられ、故にそれらの反芻を楽しむ事が出来る。

 

いや、別に「読書」でなくても映画やテレビからでも得られるのではないか。自身もかなり映画からも影響を受けているではないか。

では、何が違うかと言えば、やはり「想像力」だろう。

映像が無いからこそ、イメージが膨らみ、自分自身の世界を作り上げられる。

読解力や語彙力はどうだろう。

これだけは、本をたくさん読んだからと言って、知らない言葉を調べなければ語彙量は増えない。漢字もそうだ。

また、数多ある小説も、不適切な句読点や文章的におかしなものがたくさんあるから、テキストにするには怖い面もある。

 

とは言うものの、若い時に様々な本を読むことはやはり大事だし、その楽しみを知って欲しい。

他の媒体では得られない、本には本の良さがある。

「本を読んで楽しかった」という成功体験を、親は子供に与えて欲しい。

ちなみに私が子供の頃に感動したのは「世界文学全集」だった。時代を感じるなぁ。

 

<気力の話>

気力がどうにも湧いてこない。持病もあるが、歳のせいもあるのだろう。

小説も書きたいし、作曲もしたい。趣味を楽しみたいが、仕事が先だね…。

前回の話

 

思うに、遺伝子学的に捉えれば、両親共に脳卒中で倒れ、亡くなったのであるから、自分も同じ道を辿ると予想するのが理というものである。

 

もし、父のように飲む事も食べる事も出来ず、認知能力が劣って寝たきり状態になったとすれば、家族に負担はかけるだろうが、当の本人が「悩む」という事は無い、と言うより出来ない"。

しかし、頭だけはしっかりしている場合はどうか。

残された意思の疎通能力によっても違うだろうが、会話も出来ない寝たきり状態で生き残ってしまったら。

「こんな状態で中途半端に生き長らえる意味などあるものか」

いくらそう嘆こうが、この世が”尊厳死”や”安楽死”を許してくれる筈も無く、己で己を『口減らし』する事が叶わぬ現実を呪うしか無い。

 

さて、入院した場合は別として、介護となれば施設に入るか在宅かの2択となる。

自分としては、長年過ごした家で最期を迎えたい。それが正直な気持ちだ。

家族で囲んだ食卓、幼い子の髪を洗った風呂、何十年と毎日座り続けた仕事場。思い出の詰まった家。人生最後にして離れたくなどない。

しかし、自分で用を足す事すら出来なくなれば事情は変わる。下の世話など、家内でさえかろうじて頼めるレベルのものを、娘や息子の嫁に託すなど出来るものか。躊躇するにも程がある。

自尊心に羞恥心、その他の全てが崩壊し、己の不甲斐なさに押し潰されるだろう。

それだけではない。90キロを超えるこの体。入浴は訪問介護を頼るとしても、日常の着替えや体位を変えるだけでも重労働。認知症もあればなおのこと、家族に苦労はかけたくない。

 

そう考えると、理想は在宅などといった考えは戯言であり、とどのつまりは『我』でしかないではないか。施設に入るのが一番の選択というものだ。

それに、下の世話にせよ、それで報酬を得ているプロなのだと割り切れる分、こちらも遠慮なく託す事が出来る。勿論、経済的事情が許す事が前提ではあるが…。

 

 では、最悪のケースは何か…。

まず、自分の思いなど家族が知らぬまま介護状態となってしまう。

何も理解出来ない様に見えるが、表現機能が欠落しただけで、実はそうではないのだが、医者も家族もそれを知る術が無い。

家内は『自宅で過ごしたいに違いない』と思い在宅を選ぶものの、自分自身も高齢であり、精神的にも肉体的にも限界を迎える。全て思いとは違う方向に進むが何も出来ない。

 

三人の子供たちは話し合うが、二人とも施設となれば、とてもじゃないが高額で無理というもの。では、一人は施設で一人は在宅となると、今度は介護は誰がし、施設の費用をどう分けるかが問題となる。家の相続も絡めば、嫁と二人の娘がぎくしゃくしてもおかしくは無い。

親として舅として、娘や嫁に下の世話までさせるのも忍びないが、何より自分の事で揉めるのはどうにもこうにも堪えられない。


私はカフカの「変身」なのか、それとも乱歩の「芋虫」なのか。

いっそのこと、背中に林檎が刺さって衰弱するか、古井戸にポトリと落ちればどんなに楽だろう。

しかし、それが叶うのは小説の中だけである。

 

最初から読む

 

前回の話

 

私の家は自宅兼事務所で、父とは同居していた。

父は2階の自室にいるのだから、話しでも何でもいつでも出来る。そんな風に考えていたが、それは認識不足で、実際はあまり接点が無くなっていたのだ。

食事は2階の部屋に家内が運ぶし、父は一日中読書かクロスワードパズルをしているので、顔を合わせて会話する機会が殆ど無い。

 

母が亡くなると、それは一層強くなる。

息子夫婦の会話に入り込む話題も隙間も無く、仕事を引退してからは社会から隔絶され、一人でずっと部屋に籠る生活。話す相手もいない。これはまるで、カフカの「虫」ではないか、一種の拷問、今ならそう思う。

 

ある日、父は脳卒中で倒れ、最後はリハビリ病院に移った。治る見込みの無い病人が入る、死を待つだけの病院だ。

その時の父はすでに、胃ろうも使えず、点滴だけで生きている状態だった。

脳はやられ、記憶が瞬時に消え去るため、話し始めた瞬間に、今何を話そうとしていたのか忘れて言葉が止まる。つまり、会話ができない。

 

飲むことも食べることも無く、白い天井を眺める寝たきり状態。利くのは耳と目だけ。これでは乱歩の「芋虫」だ。

面会に来た家族の顔を見ると一時的ににっこり笑うが、すぐに寝るか天井をじっと見つめている。どこまで認識できているのか分からない。

 

もしかすると、父にとっては自宅の2階にいた時も、この寝たきり状態と何ら変わりがなかったのかもしれない。

いや、それどころか、寝たきりの今の方が晴れやかなのか。なぜなら、2階にいた頃の苦み走った表情が消え、優しく穏やかな笑顔になったのだから。

もし10年前、いや、20年前に戻れたなら、父の大好きなオールドパーを買って一緒に飲みたいものだ。父が育った麻布の戦前の話を聞きたい。そう思って止まない。私の大きな後悔だ。

 

カフカの「変身」、乱歩の「芋虫」。そして父。

かつては家族や国の柱であった人間が、一転して人の手を借りなければ生きられなくなってしまう現実。社会との隔絶。

もし自分がそうなってしまったら…。どうすれば良いのだろうか…。

いや、その時にはもう自分では何もできない。そんな事は分かり切っているではないか。父や母を看取ったのは、この自分なのだから。

しかし、それでも考えてしまう。考える。考える。考える。

自分は何をすべきか。

 

最終章へつづく…。

 

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