中東・北アフリカ:エジプト:モルシ(ムルシ)大統領関連 | 端事些事のブログ

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中東・北アフリカ:エジプト:モルシ(ムルシ)大統領関連

ワリと、有りがちだが、今となっては少し遅れた視点として、、特に、対外政策と「民主国家」について。

社説:エジプト大統領 民主化のため軍は自制を(012/06/26付 西日本新聞朝刊)

 エジプト大統領選の決選投票で、イスラム穏健派ムスリム同胞団を母体とする自由公正党党首ムハンマド・モルシ氏の当選が、公式に発表された。

 エジプトでイスラム勢力から大統領が出るのは初めてだ。軍出身でないのもまた初めてである。

 昨年2月のムバラク独裁政権の崩壊以来、民主的な政治体制づくりを目指してきたエジプトにとって、自由な大統領選をやり遂げたことは、民主化への一里塚として一定の評価ができる。

 ただ、エジプトの民主国家建設への道のりは、決して楽観できない。

 最大の懸念材料は、最近になって民主化プロセスが混乱し、社会の対立が強まっていることだ。プロセス進行役のはずの軍部が、特権的地位を維持するため、介入を強めているのが原因である。

 エジプト国軍は昨年の政変で、当時のムバラク大統領を早々と見限り、中立を保った。政権崩壊後は、軍最高評議会が暫定統治にあたっている。

 昨年11月~今年1月の人民議会選で同胞団が勝利すると、軍は権力保持に走り始めた。最高憲法裁が議会選に無効判断を下したのを機に、軍評議会は議会の解散を命じ、軍事や予算の権限を握るなど、民主化の骨抜きを図っている

 軍評議会は一応、予定通り6月末までに大統領に行政権を移譲する方針だが、完全な民政移管は先送りされた。今後も議会再選挙や新憲法制定をめぐり、軍と同胞団の権力闘争が激化しそうだ。

 独裁が続いた国家が、民主化を目指す過程で、軍の政治権力をどのように減らしていくかは、難しい問題である。

 一番良いのは、軍が自らの分をわきまえ、政治から手を引くことだ。それがかえって、軍に対する国民の長期的な信頼を生む。軍は政治への関与を自制し、民政移管を遅滞なく進めるべきである。

 一方で、ムスリム同胞団にも不安材料がある。同胞団が政治や社会へ過度にイスラム教の価値観を持ち込み、政教分離を求める世俗派の反発を招く恐れが強い。人口の1割弱を占めるキリスト教徒(コプト教)や、弱い立場の女性の権利が守られるか、注視する必要がある

 また国際社会は、イスラム政権下でイスラエルとの関係が悪化し、中東全体が不安定化することを懸念している

 ムスリム同胞団には、世俗派や他の宗教の価値観も尊重する現実的な政治感覚が望まれる。逆に国際社会も、イスラム勢力への行き過ぎた警戒を慎み、偏見のない対話を進めたい。

 モルシ氏は、当選確定後の演説で「(イスラム教徒やキリスト教徒を含めた)全てのエジプト人のための大統領になる」と述べ、イスラエルとの平和条約も維持する考えを示した。まずはモルシ氏自身がこの言葉を厳守してほしい

 エジプトがアラブにおける民主国家建設の成功例となることを、国際社会は期待し、見守っている



/*人口の1割弱を占めるキリスト教徒(コプト教)や、弱い立場の女性の権利が守られるか、注視する必要がある*/
/*国際社会は、イスラム政権下でイスラエルとの関係が悪化し、中東全体が不安定化することを懸念している*/
/*イスラエルとの平和条約も維持する考えを示した。まずはモルシ氏自身がこの言葉を厳守してほしい*/
/*エジプトがアラブにおける民主国家建設の成功例となることを、国際社会は期待し、見守っている*/

これらは、オバマが先日のお祝いの電話でモルシに「要請」した内容と同じだ。

簡単な話だ、「国際社会」のところを「米政財界」あるいは「米欧や日本の政財界」と言い換えれば分かりやすい。


エジプトについては「民主主義」という言葉には、には現在2つの使い方がある。

ひとつは、反米・反ムバラク・民主化運動を成功させたエジプトの圧倒的多数の一般人が望む「民主主義」。

ひとつは、米欧政府がイラクやアフガンの戦争の口実などに使う、米欧日の政財界の望む「民主主義」。だ。


この社説は、前半では前者の「民主主義」を使い(装い?)、後半と結論では、後者の「民主主義」を使っている。

そのため、「アメリカ政府」という言葉を避け、「国際社会」という言葉で、その事が明確になるのを、(意識的にか、無意識にか)避けているように見える。


そもそも、チュニジアやエジプトの民主化運動では、「反(傀儡独裁)政府」とともに「反米」が掲げられた。

その傀儡の主であるアメリカ政府・財界の介入に反対するのは当然であったし、それは、今も続いている。

俺的妄想によれば、

その民衆のパワーこそ米欧政府が最も恐れているモノだ。

今、そういう情勢の中で、米政府はエジプト軍および旧政府側と繋がっている。


実は、選挙前、民主化運動体とモルシとの間には一定の距離が有ったが、

「米政府+軍+旧政府側候補」と選挙を争うことになったモルシ側は、選挙中、民主化運動に接近した。

俺的な妄想では、

そのせいで、

/*軍評議会は議会の解散を命じ、軍事や予算の権限を握るなど、民主化の骨抜きを図っている*/(これらは彼らが、選挙前にやったことだ、他にも沢山ある。記事下に一例。)という状況の中でも、

「米政府+軍+旧政府側候補」側は、モルシが大統領に当選することを妨害しなかったのだ。

もし、それをやったら、また圧倒的多数の一般人による反米・反軍政・民主化運動が再燃する。

と彼らは判断したのだろう。

モルシが大統領になれば、当然、パレスチナ問題、シリア問題、イラン問題、など、中東・北アフリカ地域の諸問題で、イスラエル・米側にとっては、だいぶ不利な状況になるだろう。

それは、彼らにとって、充分、周知のハズだ。にもかかわずだ。。。

それほど、米側は、エジプト(だけではないが)の民主化運動(の世界的な影響)を恐れている。


そこで、いま、米側の主な課題は、モルシと民主化勢力の切り離しだ。

軍や旧ムバラク政権候補側にもモルシへの「協力」を要請している。

出来るだけ、モルシ政権内に潜り込ませたいのだろう。

/*人口の1割弱を占めるキリスト教徒(コプト教)や、弱い立場の女性の権利*/ は、

おそらく米側にとってただの口実だ。

覚えている人も多いだろうが、実際の、反米・反ムバラク・民主化運動にはコプト教徒も女性も参加している。

報道は少ないが、反米・反軍政・民主化運動となった今現在でも基本路線は変わらないだろう。


また、米政府が、本気でスムーズな民政移行を望むのなら、いつもなら、例によって「民主化を妨害するエジプト軍への援助を打ち切る」と脅すハズだろう。

また、切羽詰れば、そう言うかもしれない。(ムバラクやフセインを切ったように)


PS:

よくある論調という意味で、特に、この新聞社に他意はない。

基本、政治不信でマスコミ不信な者なのであしからず。


軍が選挙前に権限を拡大した例としては、最近では、次の様なものもある。

軍への逮捕権付与を停止 エジプトの裁判所(2012.6.27 01:21 産経)

 エジプトの中東通信などによると、同国の裁判所は26日、軍の憲兵や情報局員などに一般市民の犯罪取り締まりのための逮捕権を付与するとした暫定政府の措置を停止するとの判断を示した

 暫定政府は13日、新憲法制定までの時限措置として逮捕権付与を発表。だが、治安当局に過大な権限を与え、旧ムバラク政権の強権体制を支えた非常事態法の復活だとして人権団体などが反発、訴えを起こしていた。(共同)