巨大UFOが突然現れた。
世界はパニックになった。
米軍、ロシア軍、中国軍などが戦闘機を出撃させてミサイル攻撃を試みたが、ことごとくUFOのレーザー兵器に撃墜された。
核ミサイルも発射したがやはり撃墜された。
人類は無力だった。

やがて宇宙人が地上に降臨し、片っ端から殺戮と捕食の限りを尽くした。
地球最後の日が来たと誰もが思った。

攻撃された都市の人間は殆ど殺戮されたが、極一部の人間が生き残った。
何故生存できたのか、地球防衛軍は生存者を集めて調査を開始した。

すると驚くべきことに、生存者は全て喫煙者だった。
しかも全員がヘビースモーカーだ。
部屋にヤニの匂いが充満していた。
集まった生存者を前に司令官が言った。
「わかった。生存の鍵はニコチンだ」

地球防衛軍は決死隊を編成した。
全員がヘビースモーカーだ。
しかし欧米軍はだらしがなかった。
喫煙者が極めて少なかったのだ。
「マッカーサーが泣いてるぜ」

 

結局決死隊は主に中国軍と自衛隊から編成された。
インド軍も少数参加した。
しかし韓国軍は自衛隊と共闘できないと参加しなかった。
残念だが仕方がない。

日本はJTも活躍した。
欧米のタバコ会社は電子タバコが主流でもう紙巻きタバコを殆ど生産していなかったからだ。
キューバの葉巻製造会社も協力した。
国内のタバコ農家からタバコの原料がかき集められた。
主に九州と東北からだった。

JTは世界ブランドのメビウス(旧称マイルドセブン)の生産をやめてハイライト、ショートホープ、ピースの増産を行った。
いずれもニコチンの含有量が多い銘柄だ。
「缶ピースは駄目だ!フィルターの無い両切りタバコを吸ったことがある隊員はいない」
「そう言えば死んだ爺ちゃんが吸ってたな」

出撃の時が来た。
UFOはエンジンの熱を感知してレーザー攻撃をして来るのでモーターグライダーで攻撃することにした。
上空に上がったらモーターを止めて滑空しUFOに近づくのだ。

思惑どおりグライダーはレーザー攻撃を受けることなく巨大UFOの上に到着し、決死隊は次々と換気口から機内に侵入した。
そして一斉に持参したタバコを吸いまくった。

 

UFOの機内はタバコの煙と匂いがすぐに充満した。
宇宙人はバタバタと倒れ全滅してしまった。
人類、いや喫煙者の勝利だった。


戦後各国で健康増進法が改正され成人の喫煙が推奨された。
タバコ税が廃止された。
代わりに喫煙しない者には非喫煙税が課せられた。
飛行機も列車も全て喫煙可となった。
ただし未成年の為に禁煙席が少数設置された。
次回の国会では未成年の喫煙を可能にする法案が上程される予定だ。
おそらく満場一致で可決されるだろう。

JTはアマゾンやアップルを抜いて時価総額が世界最大の企業になった。
JT社内では昔のように社員へ無料でタバコが提供され、オフィスのデスクには灰皿が復活した。
全面喫煙可とする企業はステークホルダーから評価され、株価が上昇した。
今やビジネスマンは喫煙することがプロモーションの条件になった。
タバコを吸わない奴は役員になれない。

路上喫煙が解禁され、吸殻のポイ捨てが奨励された。
吸殻清掃員の雇用が増えるからだ。
禁煙や分煙をする飲食店には税が課せられた。
国内では九州と東北のタバコ農家が隆盛を極めた。
「花は霧島、タバコは国分じゃっど」

今日も元気だ、タバコが美味い。