排水管清掃の人 | 【思い出に変わるまで】

【思い出に変わるまで】

長期人工透析をしていた夫が亡くなった後のおひとりさまの日常 

 

年に一回マンションの排水管清掃がある

 

 

何人ものチームで作業するので

 

ベテランが指図して

 

若手が作業することが多い

 

清掃中夫がよくベテランと話をしていた

 

 

夫が亡くなった後は

 

排水管清掃は若い男性だけで来ていて

 

ベテランは現場は上がったと思っていた

 

 

 

今年はベテランひとりでやってきた

 

 

テキパキと排水管の清掃を行いながら

 

「奥さん、ちゃんと排水管の清掃を

 

されているのは奥さんで2人目です

 

ほとんどの居住者の方は清掃をしません

 

私たちが年一回来るから

 

清掃をしない人が多いです

 

でも清掃をしないままでいると

 

詰まりを起こして溢れ出し

 

階下の人に迷惑をかけたりするんです」

 

 

私は綺麗好きじゃないけど

 

清掃業者が入る時ぐらいは

 

きれいにしただけ

 

 

 

夫が2年前に亡くなったことを話した

 

彼はしばらく黙ったあと

 

「そうですか。。。

 

僕はここ何年か現場に来れなかったので

 

お会いできない間に亡くなったのですね」

 

 

 

 

「僕はこの仕事を始めて

 

もう30年以上になります

 

本職は水道屋でうちの家系は

 

男がなかなか生まれず

 

男が生まれてもだいたい

 

50代で亡くなります

 

父親は37歳で亡くなっています

 

なので残された時間は

 

長くはないと思って生きています

 

 

 

仕事で高いところに足場を組んで

 

ワイヤーでくくりつけるんですけど

 

雨が降っていて足を滑らせて

 

3階から落ちたことがあるんです

 

でも不思議と怪我らしい怪我もなかった

 

 

ある時は雨樋にチェーンが付いていて

 

つかんでも大丈夫だからと引っ張ったら

 

長い鎖でそのまま鎖ごと

 

下に落ちたこともあります

 

 

車を工場の敷地内に止めていて

 

車を発進させた瞬間に

 

工場が崩れ落ちたこともありました

 

 

路肩に車を止めて自販機で

 

ジュースを2本買ったら

 

その間に近くで事故が起こった事があり

 

車を止めなければ事故に

 

巻き込まれていたこともありました

 

 

 

人の寿命って本当にわからなくて

 

突然亡くなったりするのも

 

僕はおかしくないと思っています」

 

 

 

ベテランさんと初めて話したのだけれど

 

こんな話をされるとは思わなかった

 

 

毎日真面目に仕事をしているから

 

護ってくださる方も増えたのだろう

 

ご先祖さまも応援している気がする

 

 

 

夫を知っている人と

 

久しぶりに話せて嬉しかった

 

 

 

家系の寿命と言わず

 

長寿を全うできますように