【ニューアルバム楽曲解説11】White March | 吉澤はじめ MY INNER ILLUSIONS

【ニューアルバム楽曲解説11】White March

タイトルは「白の3月」と「静かな行進」のダブルミーニングになっています。
震災の日、テレビに津波とともに映し出された横殴りの雪が頭にこびりついていました。
現実の出来事として記憶に定着させるには、あまりにも衝撃的でした。
その後、岡淳氏の誘いでジャズ・フォー・東北に参加して被災地を訪れ、いかに恐ろしい災害がそこで起こったのかを頭ではなく体で感じました。

この楽曲は、美しい東北の海外線の景色、自然、そしてまた厳しい気候の中、幸せを求め努力する人々のくらしとともに、ひたひたと忍び寄る放射能の恐怖をイメージしています。
アルバム全体として、震災をモチーフにすることはするつもりはありませんでしたが、逆にいえばいっさいそれを排除する事も不可避だと感じました。
僕が音楽家として出来る仕事として、当然のように表現すべき一つのテーマであると思いこの曲を書き上げました。

震災後にノートPCで打ち込んだピアノのシークエンスとストリングスのテーマを編集しているうちに、7年くらい前に作ったSLOW TECHNOというアンビエント系のデモ曲の硬質なビートとウーリッツァのシークエンスを合体させたときに、この曲の全体像が僕の脳裏にはっきりを浮かびました。
岡淳による二本の篠笛がさらにこの曲の奥行きを広げ、より立体的な映像が浮かんできました。
もともとはダブ的な要素はなかった曲なのですが、こだま和文氏とのデュオユニットでの経験を生かしたいと考え、大胆なダブ処理(ディレイなどのエフェクト処理)を施すことにしました。

大好きな映画音楽「砂の器」から受けた影響も少なからずあります。聴く方々がそれぞれの記憶をこの曲に照射させて、思い思いの映像を結実していただけたら作曲者冥利につきます。