人をいじめた記憶 | 吉澤はじめ MY INNER ILLUSIONS

人をいじめた記憶

この前、自分がいじめられた体験の事を書いたけど、今回は自分が小学生の頃に、人をいじめた話を書きます。

僕は小学生の頃、とても背が低い子でした。
確か6年生の頃に120センチぐらいしかなかったと思います。
とても活発で、いたずらをしたり、冗談を言ったりしていました。
放送部の部長をしていた頃は、きてれつな番組を作ったりして、まわりをかき回しては楽しませたりしたものです。
自分でいうのもおかしいですが、人気者でした。
「ダンジ」と言うあだ名で親しまれました。
一つ上の上級生に「日本男児のようにたくましくなれ」とつけてくれたものです。

小学校5年生のころだったと思いますが、近所にとてもお金持ちの同級生の女の子がいました。
背が高くて、細い目をした子でした。
何がきっかけだったかは覚えていないのですが、ひょんなことから僕が彼女のことを「エロミ」と呼ぶようになりました。
「エロミ!エロミ!」と呼んでバカにしたのです。
いつのまにか、まわりの同級生も、その子の事をそう呼びはじめました。
僕は、彼女が近寄ると、「わー、さわるなー!エロがうつるー。」といって避けました。
はじめは悪ふざけからはじまったイジメはだんだんエスカレート。
積極的に決してうす汚い子でもないのに、"ばい菌"扱いするようになったのです。
彼女はそれでもニヤニヤしながら、僕の肩を後ろから叩いて脅かしたりしました。
やがて、僕はクラスの人気者である事を利用して、みんなで彼女を無視したり、黒板にいたずら書きとかなどの嫌がらせをするようになりました。

あるとき、4、5人のグループで当時はやったこっくりさんをやっていたとき、「彼女がどこかでのぞいている」というような内容のお告げが現れて、みんながパニックになって騒ぐ事件がありました。
担任のM先生がそれを知って、僕たちに滝のような涙を流しながら叱りました。
僕たちも、いつの間にかみんな声を上げて泣いていました。
ちっとも、日本男児なんかじゃありませんよ。

それ以後、イジメは表面的にはなくなりました。

6年生の2学期に僕は転校し、やがて新しい学校に慣れた頃に、彼女のお父さんの会社が倒産した、という話をききました。
住んでいた家も引き払い、一家離散するほどの大打撃だったそうです。

それを聞いた僕は、自分が彼女の事をいじめた記憶を、どこかはるか遠くへ消し去ろうとしたものです。

僕はたまに過去のころの夢を見ます。
小学校の頃の友人と高校生の頃の友人がごっちゃになっていたりして、設定が無茶苦茶だったりもします。
でも、そこにはいじめている自分、いじめられている自分の両方がいて、服を着たままぬるま湯につかっているような不快感を覚えます。

自分が人をいじめた過去の事実を消す事はできませんが、その意味を繰り返し問い直す事はできる、と思います。

彼女へのイジメは、暴力こそなかったものの、まわりの人間から疎外されることの強烈な悲しみは、やがて僕自身がイジメられる事により、イヤというほど知らされました。

イジメ問題は、人々のコミュニケーションの中で、永遠に避ける事のできない命題だと思います。
それでも、少しでも思いやりのある社会を実現するためにできる事を、模索しつづけたいと考えています。