父は
自分が出来ないことを
認められないのか
認めたくないのか
認めると不利にでもなると思っているのか
出来ない事を、出来ると回答することの方が多かった
その様子から
やはり父は、この調査を
以前の仕事がらみの調査と勘違いしているのでは?
出来ないといえば、仕事上に支障がでてしまう
その為に、「出来る」と答えているのではないのか
そう感じていた......
その確信を得たのは
左半身麻痺の調査になったときだ
要介護認定調査員は
父の左半盲には質問が無かったけれど
麻痺の出ている左手と左足を上げるように
指示をした
父の左手の握力は0に等しい
左手を左手と意識して動かすことが難しく
自力で腕を上げることが難しい
そして、左足は、指一つ動かせず
触っても、抓っても、叩いても
本人には感覚が無い状態であるということを
療法士から聞いていた
実際、父の手足はい何時も冷たく
神経が通っていないように感じていた
その状態の父が
「左手を上げて」という
要介護認定調査員の指示で
左手を膝の上から少し上に持ち上げた
けれど、その左手の甲は机の下にぶつかり
何度試しても、机の下に手の甲がぶつかるだけで
机の上に手を乗せることが出来なかった
父は、不思議そうに自分の手を眺める
そして、自分の左手を右手でさすり始め
右手を添えて、やっと机の上に
左手を上げることが出来た
左足は、指一つ動かす事は出来なかった
けれど
その様子に
要介護認定調査員は
「だいぶ動きますね、麻痺はそれ程酷くないようですね」と
その言葉に父は嬉しそうに
「はい、大したことはありません」と答えた
左手が少し動いたけれど
自分の手が
何故
机にぶつかって
机の上に乗せることが出来ないのか
解らない状態でも
麻痺は、それ程酷くないと判断されるのだろうか?
その時、私は
また、父を否定しなければならない心苦しさを
抱きながら
療法士から伝えられていること
そして、何時もは
動かすことも出来ない状態であることを
要介護認定調査員に説明をした
その説明が終わると
父がいきなり
私に
「この馬鹿娘
お父さんは手を動かせるんだ
動かないのは、わざとやっているんだ
それぐらい解らないのか」と
声を荒げた
要介護認定調査員が
「わざとですか?」と言いながら不審な目を父に向ける
私は、その疑いの含まれた目に
焦りを覚え
わざとやっている訳がないと
父の身体の状況を
再度
要介護認定調査員にダメ押しのように説明した
そして
私の説明を聞き終えた後
「障害者手帳を持っているか」と聞いてきた
要介護認定調査員に向かって
いずれ申請するつもりでいる旨を伝えた
その時、父が
「お父さんは、障害者じゃない
この馬鹿娘、馬鹿娘、バーカ、わざとだ、わざとに決まっている」と
興奮し
最初は怒り交じりの声が
最後は消え入りそうな声になっていた
その状態の中で
要介護認定調査員は
私が説明した内容については
後で、看護師に確認をする
そう言って、次の質問に移った
その瞬間
父の目が曇った
今まで、以前の父の目の輝きだったのが
一瞬に表情まで変わってしまった
その、大きな変化に私は驚き
父に「大丈夫」かと声をかけたが
其処には、それまでの父はおらず
虚ろな、濁った、全てを諦めてしまったかのような
目をした空虚な状態の父に変わっていた
私が、父のプライドを打ち砕いてしまった
私は言いすぎてしまったのだ.....
言い過ぎてしまった根っこには
私が、担当看護師を全く信頼出来ていない事がある
信頼できない、担当看護師が
父に不利なことを言うかもしれない
けれど、もし、不利なことを言われても
事前に耳に入れていた
家族の意見と違えば、要介護認定調査員も
矛盾を感じて、突っ込んで聞き取りをしてくれるだろう
そぅ考え、少しでも本当の事を
直接、要介護認定調査員の耳に
入れておきたかったのがひとつ
そして
聞き取りの結果
「出来る」と答えた時には
書類の「出来る」と言う欄にチェックを入れるのに対して
「出来ない」と答えた場合のみ
余白に、何かを書いて「出来ない」の欄に
チェックを入れる事をしない
要介護認定調査員の対応に
不安を覚えたことが二つ目の要因だ
何処にも頼りどころを見つけられない
自分がその場で、必死に考えた対応の方法
けれど
結果として
父に悪い方への大きな変化を生じさせてしまった
私は、神経質になりすぎていたのだろうか
父に嫌な思いをさせたくないと思っていながら
父の思いを優先させる事が出来なかった
今更後悔しても遅い.....
私は、馬鹿娘ではなく、大馬鹿娘だ.......
その後、私は口を挟むのをやめたのだけれど
父は、聞き取り調査の質問内容すら
理解するのを拒否しているかのように見えた
調査が終了し
父と病室に戻った際に
私は、今日の調査中のお父さんは立派であり
調査に協力してくれてありがとうと、礼を言い
そして、自分が言い過ぎたことを誤った後
今日の調査を仕事関係だと思っていなかったか
確認をしてみた
父は、私を馬鹿娘扱いしたことには
何も触れなかったけれど
「去年の聞き取りよりも難しかった
役所の聞き取りなんてそんなもんだ
疲れた」と言って
目を瞑ってしまった
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