当社には、石鳥居が４基、塩化ビニール製鳥居が２基ありますが、朱鳥居が連なる稲荷神社は別として、神社には石鳥居は１基か多くて３基が普通です。

当社の御影石製の第一鳥居は、昭和７年に当時の氏子総代の代表で、当地きっての旧家である伊東吉太郎氏の奉納によるものです。

ですが、当時の社史(記録)には第二鳥居とあり、これは一体どういうことなのか、あとで記述させていただきます。

正参道の長～い第一石段を昇ると、踊り場手前に第二鳥居が現れます。

昭和１１年に金沢市二日市郷友会によって寄進された、当県小松市で産する滝ヶ原石造の鳥居で、「昭和十一年四月建之」とあります。

しかしながら、鳥居の台輪下の両柱にステンレス製の型枠で補強されているのは、平成３年９月に列島全体に甚大な被害を与えた大風１９号と、同５年２月７日に発生した能登半島沖地震によって、亀裂が入ったためです。

平成５年５月に補強工事をおこなったのですが、特注のステン製型枠を取り付けるため足場を組むなど、けっこう費用がかさみました。

そして、第二・第三石段を駆け上がると社殿前にたどり着くのですが、昇り切ったところには第三鳥居があります。

この第三鳥居は、先述した伊東家出身の伊東哲(さとし)画伯〔明治２４年―昭和５４年〕によって、昭和９年３月に奉納された御影石製鳥居です。

その後、親戚で当地・金沢市今町出身の八田與一技師の依頼で日本統治下の台湾に渡り、ダム建設の記録画の制作に従事しました。

この記録画は台湾・烏山頭(うざんとう)の記念館に今も展示されていますが、当社のすぐ側の花園八幡町の実家にも、現当主がギャラリ－を開設して展示をおこなっています。

私も、石川県立美術館で過去に開催された「伊東哲と石川洋画の先駆者達」や、伊東本家の蔵のギャラリーも拝観させていただいたのですが、戦後主に描いた抽象画とともに、当時の野良着の村人たちを描いた作品が強く印象に残りました。

ちなみに、柳原白蓮は、九条武子、江木欣々(えぎきんきん)と共に大正三美人の一人に数えられた女性で、平成２６年のＮＨＫ朝ドラの「花子とアン」で、女優の仲間由紀恵さんがその役を演じて話題になりました。

話を元に戻しますが、この塩化ビニール製のものは、摂社・諶屏堂(じんべいどう)の鳥居で、平成１１年に当時の還暦記念の方々によって奉納されました。

このお社は、我が国に初めて朝鮮半島より生姜をもたらした朝臣・武内宿禰命(たけのうちのすくねのみこと)を祀っています。

こちらも塩ビ製の末社・八幡山稲荷社の鳥居ですが、平成１２年にやはり還暦祝の方々によって建立されたものです。

それで、幻の第一鳥居はどこにあったのかと申しますと、旧北国街道沿いから本社へと続くＴ字路の分岐点に建っていましたが、昭和３０年初め頃、トラックによる衝突事故で石鳥居は崩壊し、別の場所に移築され、現在は社標しか残っていません。

この社標は、「郷社　波自加彌神社」「大正十三年八月吉日　和田末松」とあり、大正１３年３月１９日に郷社に昇格したことを記念し、氏子の和田氏が奉納されたものです。

揮毫(きごう)は、内務大臣・商工大臣・文部大臣を歴任した、金沢出身の政治家で実業家の中橋徳五郎氏によるものです。

で、幻の第一鳥居はここから何処へ移築したのかというと…。

現在、当社里宮遙拝所の鳥居となっております。

明治２４年に氏子中より奉納されたこの戸室石(とむろいし)製の鳥居は、前に述べたようにトラックの衝突により倒れ、ここに移築されました。

ですが、最上部の笠木と鳥木の部分と他の部分が色違いなのがわかると思います。

実は、上部は金沢城の石垣でも使われている戸室石で、他は別の石と合体させたもので、当時トラック会社に弁償してもらったのだそうです。

幻の第一鳥居は、このように遙拝所(※正式には御影所)鳥居に生まれ変わったのでした！。

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幻の鳥居