時々YouTubeで見ている、いろいろなTop10ランキングのチャンネルWatchMojo。

 

いつのまにか、ジュニア版やらトラベル版やらの姉妹チャンネルや各国語版ができていて、

 

日本語版もできていました。

誰がナレーターしているのかと思っとけれど、英語版に日本語版字幕がついているだけなんですね。

(フランス語版やスペイン語版はちゃんとネイティブのナレーターがいるけれど)

 

世界中、みんなランキング見るの好きなんですね~

 

(多分、見て自分はこうだ!と思ったり発信したり、他の人の意見を見たりするのが、このチャンネルの一番おいしい所と思います)

 

最近えーえーえー、、、と思ってしまったトップ10はこちら。

 

「最も習うのが難しい楽器トップ10」

(日本語版探しましたが、残念ながらなし。英語版をはりつけています)

 

1位はヴァイオリンで、それは、んーーそうかな、と思いつつも。

 

タイトルからして、企画からして、これ、ちょっとおかしくない?

 

というのが元音楽学校鍵盤楽器専攻生の感想です。

 

というのも、

 

楽器をマスターする難しさというのは、様々な観点があり、その観点を明確にしなければ、

 

いったい何のトップ10?という印象が強くなりなす。

 

また、音楽の専門家であればあるほど、その楽器のスペシャリストであればあるほど、

 

どんな楽器でも極めるのは等しく難しい、

 

という結論に至ると思います。

 

楽器を習う難しさというのは、どういうものがあるか、まとめてみました。

 

1音を出す難しさ

この観点で行くと、一番易しいのはピアノなどの鍵盤楽器、もっといえば、音量音色をスイッチで調節できる電子キーボードでしょう。

 

音を出す難しさというのも2つの観点があり、

 

1つ目はその楽器らしい音を十分な音量で出す。

 

2つ目は音程を正しくコントロールする(ドレミファの12平均律及びその間の音の意図的なコントロール)。

 

この観点で最も難しいのは、各地域に伝わる伝統的な楽器で、打楽器や弦楽器系より管楽器系だろうと思います。

 

手や道具(バチなど)を使ってたたいたり、はじいたりして出すより、息で出す楽器の方が音量や音程のコントロールが難しいのではと考えるからです。

 

日本の楽器で言えば尺八や、地域に伝わる原始的な笛というのはこの観点で難しいと思います。

 

誰もが知っているオーケストラにある楽器では音を出すという点ではオーボエ、音律のコントロールという点ではホルンではないかと思います。(学生時代アンサンブル作品を書いた時に、これらの楽器のパートで一番気を使いました)

 

2習う難しさ

楽器によっては、練習環境を整えたり習うこと自体が難しいというものもあります。

 

楽器が大掛かりで一般家庭に持つのが難しい(パイプオルガンなど)、

 

楽器を演奏できる人があまりいないので、先生や練習のための教本を探すのが難しい(伝統的あるいは希少な楽器)、

 

楽器そのものを手に入れるのが難しい。

 

この観点からするとやはり難しいのは伝統的な楽器、また新たに作られた楽器も入るでしょう。1960年代にシンセサイザーが現れた時には誰もどう扱えばいいかわからない困難な楽器でした。

 

パイプオルガンはピアノやオルガンで代用練習がかなりできるので、それほど難しいとは思えません。

 

誰でも知っているオーケストラにある楽器の中でいうとヴィオラかなと思います。ヴィオラの為の曲も少ないし、ソロでは成り立ちにくい楽器であるので、練習が難しい感じがします。

 

3期待される演奏の複雑さ

習うのが難しいという中には、期待される演奏レベルというのもあると思います。楽器が複雑な音楽を演奏できる許容範囲を持っていれば持っているほど、演奏者には高い演奏能力、技術力を要求されます。

 

音列のない打楽器では複雑なメロディーを奏でることはできないし、管楽器では重音は基本的に出せないのでハーモニーを一人で担当することはできません。弦楽器は重音は出せますが限定的です。ヴァイオリン奏者に4声フーガを演奏しろといってもそれはほぼ不可能です。

 

その点ピアノは、オーケストラ作品並みの複雑な内容を一人で演奏することが求められます。ピアノが演奏できます、得意ですと言って、オーケストラの中の1楽器のパートを鍵盤で弾いても、誰もピアノを弾いているとは思ってくれないでしょう。

 

ピアノは両手で弾きますが、ケガや病気で右手が使えなくなり、左手だけで演奏するプロのピアニストもいて、左手だけの作品というものもありますが、そうした作品でもその音楽は弦楽器や管楽器1つでは演奏困難な複雑なものです。

 

こうした複雑な音楽を一人で演奏するためには日々の練習が欠かせません。第1のポイントである音を出す難しさや音律をコントロール難しさというのは、一度マスターしてしまえばそれを失うことはあまりないのですが、複雑な音楽を演奏する能力というのは練習を怠ると失われることが多々あります。そのため弦楽器や管楽器の生徒は試験前に頑張ればいい演奏ができるが、ピアノは日々練習しないと能力を維持できないと学生時代に広く言われていました。

 

その点ではギターも複雑な音楽が演奏できるので難しいといえますが、ギターというのはピアノに比べると歴史が浅く、またソロというよりはバンドの一員で演奏することが多い楽器なので、ピアノ並みの複雑な音楽を演奏できる楽器だけれど、ピアノほどそれに挑戦する人は多くなく、期待もされていないというのが現状かなと思います。ただ、弦をはじくのは鍵盤をたたくより手に負担がかかる行為だと思うので、同じ楽曲をピアノとギターで弾くとしたら、ギターの方が難しいのではないかと思います。

 

4演奏で魅了する難しさ

楽器を演奏するというのは、音楽で人を魅了するというのが、アマチュアであれプロであれ、目的とするところだと思います。楽器を演奏するのを人に見せて、「スゴイ」と思ってもらうというのもありますが、究極的には自分が奏でる音楽で人に感動を与えたいというところでしょう。

 

この点で一番難しい楽器は電子楽器ではないかと思います。

 

私は学生時代エレクトーンを引いていました。いろんな音色をボタンとレバーで自由自在に組み合わせて、軽い鍵盤で楽々と弾きますが、その反面自分の思いを伝えるのは難しい楽器でした。私が子供の頃に弾いていたエレクトーンはどんなふうに鍵盤を指で押さえても同じ音しか出ません。鍵盤のタッチが音に現れないのです。その後タッチが音に現れる機種が出てきましたが、大まかなコントロールしかできませんでした。

 

素晴らしい演奏というのは、微妙な演奏者のコントロールから生み出されると思います。一つ一つの音をどうやって出すか、どうやってつなげるか、細かく探求しそれを表現する技術を身に着けた結果、感動を呼ぶ演奏が生み出されるように思います。

 

なので、その微妙なコントロールが制限される電子楽器では、演奏というよりは発想や録音技術で勝負するしかないという感じになります。

 

ただ、最近では技術の進歩で電子楽器がアコースティック楽器並みにタッチが活かせるようになり、それによって楽器の演奏の幅が広がっているようです。

 

出せる音域が限られる楽器、音律が出せない打楽器、ベース担当の楽器などもこの観点で難しいとは思います。

 

5体への負担

以前は音楽をやるというと運動苦手で病弱というイメージもありましたが、楽器を演奏するというのはフィジカルな強さが必要なところがあります。

 

例えば、オルガンで両足でベースを弾くには腹筋が必要だし、管楽器は肺活量が必要、唇の大きさが出せる音量を決めるともいいます。

 

その観点で一番負担がかかる楽器というのは、打楽器かなと思います。楽器によっては素手で会場を響くほどの音を出しますし、ロックバンドのドラマーは、他のメンバーより休むところがなく出ずっぱりで体力が必要そうです。

 

これらの観点で、どの観点から見てもそこそこ難しい楽器となると、Mojoが選んだ1位のヴァイオリンは何となく納得できます。

 

ヴァイオリンらしい音を出すという点で困難な楽器ですし、いい楽器は高価で入手困難であり、求められる音楽もそこそこ複雑であります。唯一4番目のポイントは、それほど難しくないかなとは思います(ヴァイオリンって演奏をマスターすれば一番感動させやすい楽器のように個人的には思います)。ヴァイオリンが音量があまりでない楽器なので音量を出すには肉体的な強さも必要。最近のヴァイオリニストはイメージに反してしっかりした体型の人が多いそうです。

 

習うのが難しいというより一番魅力的な楽器という点でヴァイオリンかもしれません。

 

ただ、それ以外はランクすること自体が無理なような気がします。どの観点を最も重要視するかによって変わってきてしまうかなと思いました。