本書のより詳しい要約をして、ELPやメンバーの演奏をいろいろ聴いて、あらためて気づいたことをまとめました。

 

2013年以降

本書は、2012年までのELPのメンバーの足跡を綴っていて、それ以降彼らの活動を思い返してみると。。

 

まずは、2013年3月にキースはタルカスをオーケストラ編曲した吉松隆さんの還暦コンサートに現れて、アンコールにステージに登場して「ハッピー・バースデー」をピアノで弾いたそう。

 

 

その時のインタビューでは、「ライブはもうきついので、これからは作曲に専念する」と語っていました。

 

その後、9月には指揮者デビューを果たして、2014年にもコンサートをしていたようです。

 

 

2014年はキースの70歳の誕生日の年で、様々な記念コンサートやイベントが行われたようです。

 

 

一方、2014年にはグレッグはすい臓がんの診断を受け、この後長い闘病生活に入る年でもありました。

 

カールは、カール・パーマー・バンド・ELPレガシーで精力的に活動を続けていました。

カール・パーマー・バンドによる「展覧会の絵」です。

 

2015年7月、キースは雑誌のインタービューを受けていて、そこで最近ライブ演奏を再開したことや、イギリスのオーケストラとの仕事でトラブルがあったことなどが語られていました。また、その中で「死について考えたことがあるか?」という質問に対して、「考えたことがないけれど、親しい友人が亡くなった時には生きていることに感謝する」と応えていました(今から見ると胸が痛むやりとりです)。また、今後の活動について、引き続きオーケストラの為に作曲したいという、それが今の自分の本分だと言っているのも印象的でした。

 

そして、2016年の日本ツアーに先立って、こんなビデオもありました。

ELP時代に変わらず野心的な機材で臨もうとしていたのがうかがえます。

 

日本ツアーでは、ELPの作品を演奏する弦楽四重奏団モルゴーア・カルテットとの共演もあったとか、

 

今見ると不思議なのは、2013年にはライブからの引退を明言し、作曲に専念すると言っていたし、2015年のインタビューで自分を「作曲家」といっていた彼が、なぜ2016年急に大規模なライブをすることになったのか??

 

2016年6月にはカールがデビュー50周年のライブを計画していたけれど、キースの死を受けてキースへのトリビュートコンサートに変わりました。こちらのライブでの映像、その場にいたら胸がつまってきそうです。

Eがなくなって、LPとなったロゴ。この6か月余り後にはLもなくなってしまうとは。。

 

様々なミュージシャンがキースをトリビュート。

 

 

タルカスを聴いて人生が変わったというミュージシャンがなんと多い事か!

 

影響は若い世代にも。

 

 

 

モルゴーア・カルテットは、翌年ELPの作品のみのアルバムを発表。

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ELPの作品をコピーするバンド、演奏者多数現れます。

 

その先頭に立っているといえるのは、ジャズ・キーボード奏者レイチェル・フラワーでしょうか?

盲目でありながらピアノだけでなく、キース並みに多種多様なキーボードを操るところが脱帽です。

 

このインターナショナル・コラボでもたびたび登場。

さまざまELPカバーバンドの演奏がYouTubeにアップされていますが、彼らがELPのアルバムの演奏をもっとも忠実に再現していると思います。

 

永遠の謎

2010年の40周年ライブの後、カールはELPと演奏しないと明言しますが、その陰にはグレッグとの軋轢があったのかと思います。また、かなり想像たくましくすると、その前にキースとグレッグが二人でツアーを始め、40周年ライブの後も二人でツアーする予定だったのが、その発言を導いたような気もします。
 
2015年のインタビューで、キースは、カールからグレッグでなくジョン・ウェットンと組めばよかったと言われていたことを冗談交じりにいっています。カールはエイジアでジョンとバンドを組み、よい関係が続いていたと伺えます(そのジョンも2017年には亡くなってしまうのですが)。
 
そもそも謎なのは、それに遡って2009年にキースとグレッグが作曲を始めたきっかけは何だったのかです。グレッグの自伝でもきっかけは不明でした。二人を新曲発表しないものの、「遊び」でELPの初期の曲を二人で演奏してみて、曲の本質に迫る白鍵をし、2人でのライブ活動が生まれます。

 

グレッグはELPのマネージャーとの役割を担っていたと思います。特にスタジオ録音では実質ボスでした。キースはナイスの時代からスタジオ録音アルバム作成は得意でないところが見られて、ELPの素晴らしい数々のスタジオ録音アルバムはグレッグと彼の息のかかったエンジニアの功績と思えます。

 

一方、グレッグは素晴らしい歌唱力を持っていてそれは努力というより天性のものと思えるのですが、あまりにも多様な歌唱ができるがゆえに、グレッグならではアイコンになるようなボイスがなくて印象が定まらないという側面もあったのではと思います。そのため「ELPのボーカルはどうも」と考える人が多いような気がします(グレッグの歌声のファンは沢山いるみたいですけれど)。近頃は高音でキンキンとひびかせる男性ボーカルがいる中で、グレッグの低音ボーカルは貴重と思うけれど、もうちょっとボーカルも頑張ってほしかったような気もします。

 

そして、キースはジャズ・ピアノ・トリオのようなライブ演奏をイメージしていて、ジャズでは各奏者がソロのインプロビゼーションを披露するのが通例で、ベースも例外ではありません。カールはドラムのソロで沸かせるものがありましたが、グレッグは初期の頃インプロビゼーションを試みていますが、どうにも奇妙で、後にはラッキーマンなどのかれの歌を代わりにはさむようなライブ演奏スタイルになってきます。それも、惜しいなと思う所です。

 

最近、キースのモーグのシンセサイザーを演奏を聴いていると、未知の生き物が唸り声をあげているようなそんな印象を持ちます。シンセサイザーはさまざまな演奏者がいますが、そのような音を作り出しているのはキースだけのような気がします。

 

昨年ニューヨークのメトロポリタン美術館でキースの展覧会が行われていたようで、全く知らず惜しいことをしました。日本でも同じような展覧会をやってくれないか。。機材が沢山あるので大変かもしれないけれど。ジミー・ペイジが訪れて、キースをキーボードのジミ・ヘンドリックスと讃えていたそうです。

 

今年の50周年記念のフィルムはどんなものができるのか、楽しみにして待ちたいです。