歴史的証言者になれた喜び、というべきであろうか、そんな体験が出来た。
聴いた後、震えが止まらず、3時間くらい動悸が続いた。体にものすごくずっしりと巨大なものがのしかかってきた。
宮田さんのチャイコの悪くはなかったが、いまいちピンと来なかった。
やはりメインはショスタコーヴィチの交響曲第4番。
もうステージに溢れんばかりにびっしり詰まったオケ。そして、あるとあらゆるパーカッション。
演奏が始まる前からの会場の緊張感からして、いつもとは全く違う。
ショスタコーヴィチの4番という難曲を聴きに来る聴衆は、それこそ高いモラルと、そこで何が起きようと
しているか、というのを固唾を飲んで見守る人たちだ。
いよいよ演奏が演奏が始まる。
デッドな文化会館のホールに、冒頭からとてつもない音が響き渡る。
絹のような弦と、鋭角で抜群にうまいパーカッション。日本のオケとか、そういう次元を超えている。
インバルは頻繁にキューを出していたが、それに必死に食らいついていく都響。
とにかく機動力がすごい。まるでインバルの手足のごとく動く。インバルは煽るのではなくて、都響側が自発的に極限の緊張感を持って食らいついていっているのが分かる。信頼感があるのだろう。
この演奏で一番ベストだと思えたのが第1楽章のクライマックス。
プレストに入った瞬間、Vnは狂気の主題をコンマスの矢部さんを筆頭に一心同体でインバルの棒についていく。さらにこんなにうまい演奏は聴いたことがないというカスタネットが加わる、そしてインテンポで最大音量に持っていく。体がぶっ飛びそうになった。
第2楽章に入ってからは、インバルはテンポを落とし、何かを回想するように歌う。陰影が濃く、哀愁が漂う。旧盤は聴いていないが、今の彼でなければ出ない表現だろう。
第3楽章の冒頭も同じようなテンポで始まるが、なかなかテンポが上がらないため、ここの部分だけやや弛緩したように感じられた。聴く側の問題かもしれないけど、ちょっと集中力に欠けていたような気がする。
でも、最後のクライマックスはさすが。第1楽章と同じように、壮絶そのもの。
そして、最後の静寂。最後の一音一音が消えていくように終わる。。。
しばし沈黙があった後、聴衆からものすごいブラボーの嵐。
危なく涙がこぼれそうになった。
カーテンコールのインバルの満面の笑み。
聴衆も一体となって、歴史的名演が生まれた瞬間だった。
本当にすごい体験をした。ラトル/BPhで同じ曲を2度現地で聴いたが、残念ながら今回のような体験は得られなかった。
あの瞬間に居合わせられたことを誇りに思う。
あれから1週間弱。今日と明日は得意のマーラーで「大地の歌」である。