Huluで綾辻行人先生原作の「十角館の殺人」のドラマを観た。

ミステリは好きだがさほど読書量の多くない私ははずかしながらこの本格ミステリの金字塔とも呼ばれるこの作品に触れたことがなかった。

 

孤島というクローズドサークル、天才建築家の不思議な館、かつて起こった殺人。

個性豊かなミステリー研究会の面々。

もはや「お約束」とも思える要素もりだくさんだが、読者を鮮やかに裏切る展開・描写の数々に終始感心していた。

本当にすばらしい作品だった。

トリックというか犯行の方法はやや運任せで力技な点もあったが、

犯人の年齢や思想にマッチしていて違和感を感じさせないところもすばらしかった。

 

さて、このドラマは母と一緒に観ていた。

母は私と違って生粋のどこにだしても恥ずかしくないレベルの読書家である。

学生の頃に買ったアガサ・クリスティーの文庫本をいまだに大切に読んでいるミステリ好きでもある。

母に「十角館ってこんな話だったかしら?」といわれた。

確かに小説を映像化するときに登場人物の性格・性別を変えたり、動機や犯人すら変えられることもある。

昔海外小説を日本の俳優で映像化した作品で、原作にはいない名探偵をきどった刑事が得意げに事件の内容をつまみびらかにしてほんっとうに辟易としたことがある。

まさか、この作品もその類かと原作小説を読んでみたのだが

すばらしく忠実に映像化されており、制作スタッフの原作へのリスペクトを深く感じた。

同じく原作に目を通した母はこう言った。

「忘れるってことは、何度読んでも新鮮に物語を楽しめるってことよ」

今日も朗らかな母が私は大好きである。

次は水車館を読みたいと思う。