ドラえもんでおなじみの藤子・F・不二雄先生の短編集に収録されてる作品です。


「ミノタウロスの皿」

しばらくお肉を食べることにためらいを覚えてしまうような作品でした。中学生時代に読まなくて良かった。



ある惑星に迷い込んだ青年の災難。
災難というか、悲劇というか、滑稽というか。


彼が迷い込んだ惑星というのは人間と牛の役割が逆になってしまっていて、

人間=家畜
牛=人間

てな具合になってます。人間は牛に美味しく食べてもらうことに誇りを持っています。
ちなみに家畜の位置といえどちゃんと服を着て家もあり、家族もしっかりと構成されています。

地球から来た青年は狼狽え戸惑います。
もちろん、この惑星の方々も他惑星から来た彼を家畜にしようなんて考えていませんでしたがね。



しかしこともあろうに、この青年はもうすぐ食べられてしまう少女に恋をしてしまいます。
なんとかして少女が食べられるのを阻止しようとするのですが、少女は食べてもらうことを何より誇りに思っています。






あらら。



結末はお察しの通り。



この惑星では人と牛の立場が逆になってしまっただけの話なんですね。
地球に他惑星から話す牛が来て「牛を食べるのはおかしい!可愛そうだ!我らの星は人間を食べる」って言ったところで誰も取り合わないでしょう。
全く違う価値観、常識の中に放り込まれた人間の苦悩する姿と死をも恐れず栄光に陶酔するヒロインの姿を子ども向きの絵柄で描いているあたりがすげー怖いです。



このあたりの気持ちのすれ違いというか食い違いが読んでて切なかったんだけど。



最後のコマで一番矛盾してるのはコイツでは?と気付かされる。


価値観や常識が全く違う世界に投げ込まれるって作品は藤子・F・不二雄先生が短編で他にも描かれているのですが、漫画だと思って第三者の視点で読んでたつもりなのに「あれ、この矛盾経験あるぞ?」って気付かされたりするもんだから余計に怖くて惹きつけられます。

他の短編だと「気楽に殺ろうよ」とかね。


ホラーとかサスペンスな怖さじゃなくて、人間の根本になる矛盾、後ろ暗さ、汚さを「これでもか!」って感じに描き出すんじゃなくて、読んでいるこっちが「あ、、、」って感じに気付かされるから余計に響きます。

余談ですが、ミノタウロスの皿はアニメーション化されたりもしてまして、「あー、ドラえもんの人だー」ってノリで軽い気持ちで見ると、とんでもないトラウマメーカーになりますからご注意を!
ちなみに青年役の声優さん古川登志夫さんだった気がする!
古川登志夫さんと言えば「うる星やつら」の諸星あたる役!!
高橋留美子作品についてはまた今度語ろう。