東京豊島区「JR目白駅」界隈の廃屋群-36から更に先へ進むと、この無人の家があった。

左燐家が住宅建築の工事中のようだ。そうして、ここが無人化。この世は様々・・・それでいいのだろうかとも思うが、私に出来ることなど微塵もない。だからせっせとこの廃屋旅を続けている。

 

窓下に段組みをしたそこにもう植物の無い(枯れた)鉢植えがいくつも置かれていた。

こうした風景は無人化した家々の庭でよく見る。私は野草や山野草が好きだから、こうした風景はいつになっても馴染めない。

それは「枯れてしまった」と云う妙な後悔ではなく、変な言い方をすれば「愛情が消えた」ように見えて仕方がない。誰かが好き好んでそうした訳でもないのに・・・。

 

2階ベランダ向こうの曇りガラスを通して、白い服が掛けられているのが分かった。たぶん女性ものの「ワンピース」の類のものだろうか。「男やもめに蛆が湧く」男の目線だから、然程確信は無いのだが・・・もしこれが女性もののワンピースだとしたら、夏の装いの一つなのではないだろうか。

 

そう云えば、昔、私がまだ子供の頃、母親はこうした夏のワンピースのことを「アッパッパー」と云っていた。あれ「アッパッパ」だったろうか。確信が持てなかったのでネットで調べてみると、それは「アッパッパー」であることが正しいと記されていた。何かバカみたいな言葉であるが、これは今でも通用する女性の夏用の衣服であると紹介された。

「そんなバカな」と思うが、未だ少しは若かった母親は、服など買うお金がぜんぜん無いのに、そうした「新しい服」の言葉をどこで聞きつけていたのか、知っていたのである。

 

夏の白いアッパッパーが無人化した民家の窓庭に、ハンガーに吊るされているのを、汗だらけで廃屋旅をしている私が見上げている。「かあさん、ぼくの麦わら帽子はどこに・・・」ではない。ちょっと呆れる言葉に雰囲気が似ているアッパッパーを・・・。

 

時代はめぐるのだろうか・・・。

撮影日:令和4年8月12日