NASCAR第22戦:ブリックヤード400は、アメリカモータースポーツの聖地、インディアナ州インディアナポリスのインディアナポリス・モータースピードウェイで開催される、Brickyard 400。2.5マイル(4キロ)を160周、400マイル(640キロ)を50+50+60周の3ステージ制で走る。
1909年に建設され、常設の収容人数は257,325人で、世界で最も収容人数の多いスポーツ会場としても知られている。1911年5月30日のメモリアルデーに初のインディ500が開催され、8万人の観客が集まったと伝わっている。2度の世界大戦を挟んで開催が続いたが、戦時中に注視されている間に荒廃が進み、スピードウェイが戦後に売却され、解体した上、住宅分譲地にされる危機が迫っていた。
1937、39、40年に3度のインディ500制覇を果たしたウィルバー・ショウ(1902~54)は、ショーは大手自動車メーカーに手紙を送り、スピードウェイを買い取ってくれる後援者を探そうとし、その中で、ハルマン・アンド・カンパニーの経営者であるトニー・ハルマン(1901~77)に出会い、75万ドルでハルマンは、スピードウェイを買い取り、改修する。
ハルマンは、インディ500の生涯にわたるファンで、ショーをスピードウェイの社長にし、1954年10月20日、52歳の誕生日の前日に飛行機事故で死亡する。それ以降もハルマン・アンド・カンパニー所有し続け(1945~2019)、1961年10月に、アスファルト路面に舗装され、スタート・フィニッシュラインには幅3フィートのレンガが並べられてた。
1950~60年まで、F1世界選手権に組み込まれたものの、1952年にその年のチャンピオンのアルベルト・アスカリが参戦したが、それ以外の参戦はなく、実態はなかった。マリーの息子である、トニー・ジョージ(1959~)は、オープンホイール関係者が軽蔑していたNASCARのブリックヤード400(1994年~、/後述)を招致する。
2000年には、F1アメリカグランプリとして、オーバルのインフィールドにロードコースを建設し、初年度には、20万人の大観衆を集めた。2007年にグランプリは終了。トニー・ジョージは、IRL(インディ・レーシングリーグ)を創設し、インディカーシリーズは分裂。一方のCARTドライバーを排除するとともに、インディカーシリーズにこの年から組み込んでいる。
2000年にCARTのチップ・ガナッシレーシングが、インディ500に1回限りのエントリーとして出場し、ファン・パブロ・モントーヤが優勝している。さて、話は長くなったが、ブリックヤード400に戻そう。従来のオープンホイールのファンには、ストックカーを軽蔑するファンもいたが、トニー・ジョージは、NASCARのレースを開催することを決め、1994年から開催スタート。
開催するにあたり、1992年から、NASCARのチームがテストに招待され、NASCARの車体を支えるために、大規模な改良プロジェクトを開始した。外側の擁壁とキャッチフェンスを交換している。初回のレースで、前年にデヴューしたジェフ・ゴードンが優勝し、フル参戦からの撤退前年の2014年に5回の優勝を果たし、最多勝となっている。このレースには25万人以上の大観衆を集めている。2位は4勝のジミー・ジョンソン、3勝のケビン・ハーヴィックが続いている。現役最多勝は、カイル・ブッシュの2勝だ。
2021年から3年間は、ロードコースでの開催となったため、オーバルでの開催は4年ぶりになる。19年、20年は、ハーヴィックが優勝しているので、直近の現役ドライバーの優勝は、18年のブラッド・ケセロウスキーとなっている。ちなみに1996年のレースで、優勝したデイル・ジャレット(1956~、1999年ウィンストンカップシリーズチャンピオン)が、ブリックヤードにキスをするというパフォーマンスを見せている。
これは2003年のインディ500で、ジル・ド・フェラン(1967~2023、2000、2001年のCARTチャンピオン)が同じことを行ったことにより、インディ500の新しい儀式の一つとして認知されるようになっている。今年のPPはタイラー・レディックが、49秒469秒(181.469マイル/292.791キロ)で、今シーズン2度目、通算8回目の獲得。
デニー・ハムリン、チェイス・エリオット、ウィリアム・バイロン、カイル・ラーソンのトップ5。プラクティスは、レディック、ライアン・ブレイニー、ハムリン、クリストファー・ベル、アレックス・ボウマンの順となっている。いずれもトヨタ勢とヘンドリック勢が上位を占めている。
観客数は、2000年代の後半から減り始め、2016年の観客動員は5万人を切り、20万人分もの空席が残ったとか。当初は、芝生のインフィールドを開放しなかったために、観客が入り切れず、抽選システムを使わざるを得なかったとされている。1996年、新しいコンクリートの壁とキャッチフェンスがバックストレッチの内側に沿って建設され、ストックカーのレースに耐えうる環境が出来たとされ、観客席が開放されたという。
この年にインディカーシリーズの分裂劇が起き、CARTのドライバーが排除され、代替えのレースとして、ミシガン・インターナショナルスピードウェイで、US500が開催され、インディ500の人気低下に伴い、ブリックヤード400の観客数が上回ったというのは、この頃のことだろう。今では信じられない話だが。
この時期のトニー・ジョージは、この状況を、一部のレースファンの間で嘲笑され、オープンホイールレースでファン、スポンサー、ドライバーをNASARに奪われたと非難されている(ドライバーと言うのは、ダリオ・フランキッティ、サム・ホーニッシュ・ジュニア、ダニカ・パトリックのほか、F1を経由したが、モントーヤも含むだろう)。※ダリオ、モントーヤは後に復帰。
2020年、インディアナポリス・モーター・スピードウェイは、インディカー・シリーズやその他の関連施設と同様に、ロジャー・ペンスキー(1937~)が所有するペンスキー・コーポレーションの子会社であるペンスキー・エンターテインメント・コーポレーションにハルマン・ファミリーから売却されている(買収金額は非公表)。
配信が始まった。インディ500と、ブリックヤード400の優勝者の集合写真があるが、遠くて誰だか分からない。ゴードンの姿はあったようだが、あとは、ガナッシのレーシングスーツを着たドライバーがいたから、多分、スコット・ディクソンだろう。過去のブリックヤード400の映像が流れるが、やはりかつての熱気は凄い😲。
ジョンソンも、カーナンバー84でスポット参戦するようだ。 同じ17列目にいるのは、34番手スタートのカイル・・・。メインスタンドには、そこそこ観客は入っており、インフィールドの芝生にも観客はいる。ただ、他のスタンドでは空席が目立つ上、クローズされている観客席もある。ロードコースでの開催時よりは、観客は入っている気はするが。
カイルは、プレーオフスタンディングで19位。優勝しなければ、プレーオフ進出は不可能。その上、その後ろにいるトッド・ギリランドと25ポイント差と言うのは絶望的だ。チームメイトのオースティン・ディロンは、ギリランドの更に下と言うことになるのだけども。リチャード・チルドレスレーシングのマシンがいかに遅いか、と言うことも意味している。
レディックとハムリンのフロントローでグリーンフラッグ。レディックがリード、ハムリン、エリオット、ラーソン、マイケル・マクダゥエルが続く。19LAP、一気にポジションを落としたAJ・アルメンディンガーがピットイン、4タイヤチェンジとトップオフ。オッズは+340エリオット、+450ラーソン、レディック、+500ハムリン、+900ブレイニーのトップ5。
25LAP、ハムリンがピットイン。翌周、エリオット、ラーソン、バイロンのヘンドリック3台がピットイン。その後もトップ勢のピットストップが続く。エリオットは白線オーバーで、ドライブスルーペナルティ。37LAP、タイ・ギブスがピットイン。次の周にトップのレディックがピットイン。インディ500のフューエルウィンドウが33周強だから、NASCARの方が長いようだ。トップは、マクダゥエルに繰り上がる。
去年のロードコースで勝利を収めているマクダゥエル。ロードとオーバルで連覇したら、文字通り前代未聞だ。マクダゥエルも入った。これで上位陣はほぼピットイン。40LAP、クリストファー・ベル、コリー・ラジョイ、ケセロウスキーの3台が、ノーピット。ハムリン、ラーソン、ブレイニー(2タイヤ)以下が、タイヤ交換を行っている。
41LAP、トップ2がピットイン。ケセロウスキーがトップに立つが、ノーピットで走り切れる筈がない。42LAP、ケセロウスキーがピットイン。ハムリンがトップに繰り上がる。雨粒が見えた気がするけども、気のせいだろうか。天気は曇りで、ポコノと違って快晴ではない☁。ケセロウスキーが、ペナルティでピットスルー。周回遅れに。
そのままリードを守り切ったハムリンがステージ1を制し、ラーソン、ブレイニー、バイロン、レディック、マクダゥエル、ボウマン、タイ・ギブス、リッキー・ステンハウス・ジュニア、ノア・グラグソンのトップ10。上半身裸の男性や、ラフは服装の女性も多い。この時期のインディアナポリスは相当暑いのだろう💦。
リードラップカーがピットイン。ギブス(+5/2)、ウォレス(+9/2)、ハムリン(ー2/4)、ラーソン(ー2/4)、ハリソン・バートン(+10/2)のトップ5。12秒台で4タイヤチェンジをしたブレイニーは、10位までポジションを落としている。レディック、マクダゥエル、ジョン・ハンター・ネメチェック、ジョーイ・ロガーノ、ラジョイ、カイル、ギリランドの7台がステイアウト。
6(56)LAP、レディックとマクダゥエルのフロントローでリスタート。ネメチェックがリード、レディック、カイル、ラジョイ、マクダゥエルが追う。15(65)LAP、現在、ステイアウトしているトップ勢は、20数周走っている。もう10周程度を走るのが限度じゃなかろうか。
18(68)LAP、コディ・ウェアーが白煙を出しながらピットへ向かう。走っている間に左リアタイヤが外れ、翌周にコーションが出る。2回目のコーション。リードラップカーがピットイン。ここでカイルはステイアウト。コーションラップ中に2017年のデイトナ500で優勝したカート・ブッシュのクルーチーフだったトニー・ギブソン(1964~)の過去映像が久々に映る。
今、何してるのは知らないが、僕の1つ下である。24(74)LAP、カイルとギリランドのフロントローでリスタート。何台がステイアウトしたかは分からないが、5位のラジョイまでは、間違いなくそうだろう。ターン2でマルチクラッシュが起き、バイロンと、AJ・アルメンディンガーがインサイドのウォールにクラッシュし、3回目のコーション。
激しくクラッシュしたバイロンには、セーフティクルーがやってくる。その様子を見ていたゴードンは厳しい表情に。アルメンディンガーはガレージへ、バイロンはレッカー車に牽引される。ハリソン・バートンもダメージを負っている。いずれもリタイアだろう。カイル、ダニエル・ヘムリック、ジョンソン、エリック・ジョーンズ、クリス・ブッシャーがピットイン。
ケセロウスキー、ラーソンも入っている。29(79)LAP、ウォレスとエリオットのフロントローでリスタート。ウォレスがリード、エリオット、ハムリン、ギリランド、ラジョイが続く。ハーフウェイを過ぎたが、ウォレス、エリオット、ハムリン、ギリランドのトップ4は変わらない。
48(98)LAP、4位のロガーノがピットイン。4タイヤと給油タンク2本のフルサービスでピットアウト。ロガーノは、トップのウォレスの前に滑り込む。ピットクローズになる。そのままウォレスがステージ2を制し、エリオット、ハムリン、ブレイニー、ネメチェック、レディック、ステンハウス、トゥレックス、ベル、チェイス・ブリスコーのトップ10。
リードラップカーがピットイン。17台がステイアウト。105LAP、ハムリンとネメチェックのフロントローでリスタート。ラーソンと3ワイドになったトゥレックスは、コンタクトの上、リアからクラッシュ!その少し後ろで、ジョシュ・ベリーがクラッシュ、フロントからハードクラッシュし、5回目のコーション。
110LAP、ハムリンとネメチェックのフロントローでリスタート。ターン1で、後ろから押されたブレイニーが、ジョンソンにヒット、さらにジョーイ・ロガーノを巻き込むマルチクラッシュが起き、6回目のコーション。ロガーノとジョンソンの2台とも大破。ジョンソンは何とかピットに向かうが、ロガーノはその場でマシンを降り、セーフティクルーが駆け寄る。その場でリタイア。
ハムリンをトップにリードラップがーがピットイン。115LAP、ネメチェックとロス・チャステインのフロントローでリスタート。チャステインがリード、ネメチェック、アレックス・ボウマン、ジャスティン・ヘイリー、ラーソンが続く。チャステイン、ネメチェック、ボウマン、ラーソンのトップ4は、コーションラップが続いているとは言え、40周以上を走っている。
122LAP、ネメチェックとボウマンがピットイン。123LAP、チャステインが入ったので、ラーソンがトップに浮上。いずれも4タイヤチェンジ。124LAP、ラーソンもピットイン。エリオットが繰り上がる。ただ、ピットに入ったトップ勢を除けば、どのドライバーも、もう1ストップは必要。
エリオットがピットロードを走っている、125LAP、マーティン・トゥレックス・ジュニアが単独でスピン、クラッシュ。7回目のコーション発生。クラッシュ自体は軽微だけど、右リアタイヤがパンクしていて、マシンは動けず、レッカー車に押して貰い、ピットボックスに向かう。ノア・グラグソン、ゼイン・スミスらがピットイン。
130LAP、ケセロウスキーとヘムリックのフロントローでリスタート。ケセロウスキーがリード、ブレイニー、スミス、ヘムリック、ハムリンが追う。ケセロウスキーのラストピットは、102周だから、もう1ストップは必須。141LAP、ラーソンは、オースティン・シンドリックをパスし、9位に浮上。
148LAP、ラーソンが因縁のハムリンを抜き、トップ5に。152LAP、ケセロウスキー、ブレイニー、ヘムリック、ラーソンのトップ4の差は1秒を切っている。ラーソンはヘムリックを捉え、3位に。翌周にヘムリックはピットイン。158LAP、トップ3は一団となって、優勝を争う。ラーソンはともかく、ケセロウスキーは大丈夫なのか?
6位にいたカイルが、元チームメイトのハムリンとコンタクト、スピン、クラッシュし、8回目のコーション😢。NASCARオーバータイムに。トップ3はステイアウト。スミス、ハムリンらがピットイン。ケセロウスキーは、オーバータイムが続けば、燃料は確実に持たない。ステイアウトはギャンブルと言って良い。
そのままケセロウスキーとブレイニーのフロントローでリスタート、となると思いきや、ペースカーに続いてケセロウスキーがピットロードへ。何でコーションラップでピットに入らなかったのだろう?ケセロウスキーのポジションのインサイドにラーソンが入ってきて、リスタート。ターン1で、ヘムリックとネメチェックのコンタクトし、2台がインサイドのウォールにクラッシュ、跳ね返ってきた2台に、ボウマンとハムリン、チェイス・ブリスコーが巻き込まれる、インシデント。
9回目のコーションから、レッドフラッグに。アクシデントの前に、ネメチェックのマシンをレッカーが牽引したり、セーファーウォールのリペアをしたり、忙しい💦。ハムリンのクルーチーフ、クリス・ゲイブハードが頭を抱えていたりする。
17分8秒でレッドフラッグが解除され、コーションラップに戻る。2度目のオーバータイム、ラーソンとブレイニーのフロントローでリスタート。ラーソンがリード、バランスを崩すブレイニーをレディックが捉え、2位に浮上。プリースがフラットタイヤでスピン、コースアウトするが、レースはグリーン。ファイナルラップへ。
プリースが動けず、そのまま10回目のコーションと共に、コーションチェッカー。そのままラーソンが、今シーズン4勝目、通算27勝目を挙げた🏆。レディック、ブレイニー、ベル、ウォレス、ギリランド、シンドリック、ダニエル・スアレス、グラグソン、エリオットのチップ10。ラーソンは、インディ500とコカ・コーラ600のダブルに挑戦したが、果たせなかった。
が、ブリックヤード400を初制覇。今後、ダブルへのチャレンジがあるかは分からないが、「忘れ物」を取り戻した感はある。優勝数でトップ、ポイントランキングでもリーダーを取り戻した。バーンアウトと、勝利の咆哮に大歓声が応える。やっぱりインディアナポリスは、ロードよりオーバルが良いな。
13位オースティン・ディロン、15位チャステイン、21位ケセロウスキー、22位クリス・ブッシャー、23位ギブス、24位ブリスコー、25位カイル、26位プリース、27位トゥレックス、31位ボウマン、32位ハムリン、34位ロガーノ、35位ベリー、38位バイロンと言うところ。
ラーソンは、インタヴューで、<ダブル>への挑戦をNEXT MAYと言い切った。インディアナポリスのファンへのリップサービスかもしれないが、今シーズンチャンピオンを獲得すれば、リック・ヘンドリックも了承するかもしれない。オリンピックでNASCARは、2週間の休みに入る。来月11日のリッチモンドでのCook Out 400。カイルが逆転で、優勝とプレーオフ進出を狙えるのは、ここしかない。他はブルックリン、デイトナ、ダーリントン(サザン500)だ。最後の希望を託してみたい💪。