NASCAR第3戦は、アトランタに次ぐ1.5マイルオーバルのラスベガス・モータ・スピードウェイでの開催。1.5マイルを267周する400マイルレースだが、前日の雨、そして秒速20メートルを超える強風の中での開催となった。
オープニングセレモニーでは、当日(3月6日)にナンシー・レーガン(1921~2116)が亡くなったことが伝えられ、それを悼むメッセージが。
フロントローはカート・ブッシュとジョーイ・ロガーノ。カートは2戦連続のPP獲得になる。小粒の雨が降り続ける中、パレードラップが長引き、ようやくスタート!
カートが飛び出し、因縁のロガーノとマット・ケンゼスが、サイド・バイ・サイドの2位争い。ロガーノが2位を確保し、カートを追う。
トラフィックでロガーノがかなり詰め寄る場面もあったものの、30LAPを終了のコンペティションコーションまで、カートはトップを守る。
が、カートはピットロードスピードオーバーで、ドライブスルーペナルティ。一気に35位まで落ちてしまう。
2タイヤチェンジのデニー・ハムリンがトップに立ち、ブラッド・ケセロウスキー、ロガーノ、マーティン・トゥレックス・ジュニア、マット・ケンゼスのトップ5で36LAP、リスタート。
<Vegas pulls one over on Pearn>
ハムリン、ケセロウスキーに続き、またもロガーノとケンゼスが3位バトル。ケンゼスが何度も寄せているように見え、観ていてヒヤヒヤする。ここもロガーノが先行。
44LAPに2位のロガーノにハムリンが捕まり、瞬く間にトップ10圏外に落ちていく。4位につけていたケンゼスだったが、ルースホイールで、アンスケジュールのピットイン。1LAP遅れの34位にまでドロップ。
82LAP、ハムリンをきっかけにアンダーグリーンのピットイン。ジミー・ジョンソンに先行されていたケセロウスキーだが、ギリギリまでブレーキを遅らせ、ピットロード直前でハードブレーキをかけて逆転。
ピットが一巡した時点でケセロウスキーがトップに立っていた。2位ロガーノ、ジョンソン、ケンゼス、ケビン・ハーヴィックと続く。
99LAP、デブリで2回目のコーション。これはドライバーのドリンクボトルだ。強風で飛ばされ、コースに転がったんだろう。
リードラップカーが一斉にピットイン。これで救われたのが、ピットタイミングがズレていたケンゼスだ。順位はリセットされ、トップグループに復帰となる。
105LAPに、2タイヤをチョイスしたジョンソン、ハーヴィック、カイルがトップ3となってリスタート。5位スタートのロガーノがボトムに降りて一気に3台ごぼう抜きで2位にジャンプアップ。
<Strange weather continues with sandstorm>
125LAPにカートが、バックアップカーでリアスタートだったエドワーズを捉え、9位にまでリカバリー。
レースはハーフウェイを過ぎた。ジョンソンのトップは変わらず、ロガーノ、ハーヴィック、ケセロウスキー、チェイス・エリオットのトップ5でグリーンランが続く。
134LAP、ジョンソンがグレッグ・ビッフルとコンタクトして減速した間隙を突き、2台の間をすり抜けて、トップを奪う。
179LAP、デブリで3回目のコーション。このピットでロガーノ、ハーヴィックに次いで3位でトラックに戻ったケセロウスキーだが、ピットロードスピードオーバーで、ドライブスルーペナルティ。
リアまで下がったケセロウスキーに対し、解説の石見さんは「優勝争いから除外」と一刀両断・・・。
186LAP、ロガーノ、ハーヴィックのフロントローでリスタートするも、198LAP、AJ・アルメンディンガーにプッシュされたカイル・ラーソンがスピン、ウォールにクラッシュして4回目のコーション。
<Kenseth, Elliott collected in multi-car crash>
このコーション中に前日のUFC196で、ホーリー・ホルムを破り、UFCバンタム級チャンピオンになったミーシャ・テイトが映し出される。実況でちゃんとそれに触れたことに、ちょっと驚く(同じFOXの中継とは言え)。
204LAP、ケンゼス、ジョンソン、カイル・ブッシュ、ハーヴィック、カートら7台の2タイヤ組が上位を占めてリスタート。
210LAPにジョンソンがケンゼスをパスして、再びトップに。215LAP、リーガン・スミスとラーソンが同時にスピン、白煙を上げてウォールにヒット。
この5回目のコーションが勝負の分かれ目だった。ロガーノ、ケセロウスキーのペンスキー勢と、オースティン・ディロンがステイアウトし、ジョンソン、ケンゼス、カイルらの前に出たのだ。
フューエルウィンドウは50~56LAP、残り周回では燃料ショート。ロガーノのクルーチーフは、「雨雲が近づいていることを見ての判断だ、ケセロウスキー陣営も同じだろう」とコメント。これは賭けだ。
224LAP、ペンスキー2台のフロントローでリスタートするが、思い切りボトムから攻めたカイルが、一気にトップへと駆け上がる素晴らしいムーブ。
<Kes makes late-race pass for victory in Vegas>
が、その直後にルースとなったケンゼスがスピンし、後方からエリオットが突っ込み、カート、エドワーズも大きくスピン。
これでケンゼスとエリオットはリタイア。自分の未熟さを謙虚に語るエリオットの好感度が一気にアップ。
233LAP、カイルとロガーノのフロントローでリスタート。カイルが先行、ロガーノ、ケセロウスキーが追い、ジョンソンが続く。
燃料でもタイヤでも、カイルが有利、ペンスキーの2台は劣勢の筈だ。が、残り20周を切り、ロガーノがカイルとの差を詰めていく。そして、ロガーノより、ケセロウスキーの方が速いのだ。
カイルの右フロントにバイブレーション。260LAPにケセロウスキーはロガーノの前に出て、カイルに迫る。残り6周、遂にケセロウスキーがトップを奪い、ファイナルラップには、ロガーノも2位に。
そのままケセロウスキーが、去年3月のフォンタナ以来、約1年ぶりの勝利(通算18勝目)を上げ、ペンスキーの1、2。
チェッカー目前で、ジョンソンがカイルをパスして3位に入り、ディロンは5位に食い込んだ。
除外と言った石見さんが、「ごめんなさい」と謝罪する中、ケセロウスキーはナショナルフラッグを持ってのバーンナウトを見せ、走り出したところで、落としてしまいブーイング。
<Wind disrupts Keselowski's burnout>
すぐにマシンを降りたケセロウスキーは、フラッグを拾い上げ、その場で振ってみせる珍しいシーンのおまけつき。
1993年のドニントンで、アイルトン・セナがブラジル国旗を落としてしまったシーンをすぐに思い浮かべた僕は、希少種のオールドファンかな。NASCARでも、こういうシーンあったんだろうか?
「久しぶりのビクトリーレーンさ。チームのみんなに立たせて貰った最高の気分だよ」とケセロウスキーはいつになく喜びを爆発させてインタヴューに答えていた。
ロガーノは、「予選も、今日も2位。あと少しなのは悔しいね」と笑顔を見せながらも無念さを滲ませ、トラブルで勝利を失ったカイルは「勝てればよかったけど、トップ5フィニッシュで、やるべきことは出来ただろう」とコメント。
石見さんは、今季のチャンピオンにロガーノ推しだけども、大人の走りでポイントを重ねているカイルに僕は成長の跡を見る。とは言え、レギュラーシーズンだけでは、チェイスでどうなるかの予想は難しい。
カイルのチャンピオンとて、多くの人が予想出来なかっただろうし、去年の最強は、おそらくロガーノとハーヴィックだと僕は思う。
それを覆すのが、今のチェイスフォーマット。強くても、安定していても勝てない。7度目のチャンピオンに大手をかけても届かないジョンソンがいい例だ。
ロガーノは最有力候補には違いないし、まだ若い(25歳)。僕としては、去年、ロガーノにやられ続けたケセロウスキーに一矢を報いて欲しいが。