MY季語集「水中花」NHK俳句6月15日
選 者:櫂 未知子先生
ゲスト:毛利 衛さん (宇宙飛行士)
毛利 衛(もうり まもる、1948年(昭和23年)1月29日 - )は、
北海道出身の宇宙飛行士、宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙環境利用システム本部有人宇宙活動推進室長、
日本科学未来館館長、財団法人日本宇宙少年団団長、
東京工業大学大学院総合理工学研究科連携教授。
*宇宙で水の球に、桜のつぼみを入れて咲かせる実験に成功。
短夜に果てぬ夢見し水球花
兼題 「水中花」
水中花(すいちゅうか《すいちゆうくわ》)
酒中花(しゅちゅうか《しゆちゆうくわ》)
江戸時代、酒宴の席で杯に浮かべたことから酒中花ともいった。
ある日妻ぽとんと沈め水中花 山口青邨
泡ひとつ抱いてはなさぬ水中花 富安風生
水中花にも花了りたきこころ 後藤比奈夫
水中花けふ一日の水を足す 神蔵器
水中花誰か死ぬかも知れぬ夜も 有馬朗人
いきいきと死んでゐるなり水中花 櫂未知子
水中花何想う水の中 夏目雅子
人間に呼吸水中花に錘 石母田星人
夫に不満ジョッキに水中花咲かせ 岡本 眸
いきいきと死んでゐるなり水中花 櫂未知子句(2000年)
いきいきと死んでをるなり兜虫 奥坂まや句(2002年)
*類句類想問題で代表句となった。
特選
一席
鬱の字を書く間にひらき水中花 台湾雲林県 鄭元彪さん
*水中花の花開く鮮やかさが鬱を払う。時間を上手に扱った句
二席
角砂糖入れるが如く水中花 徳島県鳴門市 中川大典さん
*錘からぽとんと入れ、溶けるが如く花開く様は、角砂糖に似ている。
「如し」句の成功句
三席
東京の水しか知らぬ水中花 東京都中野市 遠藤米子さん
*どこにも行かぬ母を象徴する。うまい!
籠の鳥の淋しさ、あでやかさ、
入選
水中花鏡で話す美容院 福岡県須惠町 竹井美代子さん
*鏡を通して語りかける美容院の様子がよく分かる。
不思議空間の水中花
水中花夕日にをんな出勤す 広島県広島市 大下高明さん
*「水中花」」のけばけばしさと夜の女の取り合わせ。
水中花が、作者が、己が応援している感じ
通称も学名もなく水中花 兵庫県宝塚市 廣田祝世さん
*造花の花のわびしさ、されど潔さ。
名利とは無縁で淡々と生きてきた人生と重ねる。
喪の家のいたく水減る水中花 大阪府吹田市 柏原才子さん
*死者の魂がまださ迷っているのか、やや不気味
子の部屋に化粧品ふえ水中花 岐阜県各務原市 高橋貞子さん
*知らずに成長していく子。化粧品のけばけばしさ。
中身はなくけばけばしさだけが目立つ水中花のような子。
その危うさを愁う親心か
マスターも常連も老ゆ水中花 長野県安曇野市 佐々木久美子さん
*古いバーのマスターと常連、そして開店以来飾ってあった水中花。
水中花だけが老いず、赤い花を揺らしている。
昭和は遠くなりにけり。外は雨だな。
俳人の言葉
清崎俊郎
露けさのこの辺までは径ありて
一握りとはこれほどのつくしんぼ
自然随順
入選の秘訣
水中花水面の鏡に己映す
◯水中花己を映す水鏡
二百面相落選句
故郷の塩一つまみ水中花