2025年8月

 

兼題:新涼・秋風   当季雑詠

出題者:一桂

 

 

「涼し」は夏の季語ですが「新涼」は秋の季語です。「涼し」は暑さを前提とし、

「新涼」は暑さが去り行くことを体感とし実感するもの。

厳しい暑さの中でかすかな秋の気配を感じさせてくれる初風。

初風から晩秋までの風はしみじみとした趣があります。

秋風、秋の風、金風、素風、色なき風、秋涼し、爽涼、涼新たなど。

  <秋風をわすれて居たる寝覚哉  蕪村>

 

 

 

新涼の限界集落ひそひそと   泰山

耳が遠くなりひそひそ話は聴こえない

雰囲気は何となくわかります

*「隣のうち引越したかな」「いや亡くなったらしいよ」「不倫してるらしいわよ」・・

ひそひそ話のその内容に想像が膨らみます。

 

秋涼し海を育てし山の樹木   泰山

言ってみれば自然の輪廻

だから日本の魚は美味しいのです

*山から海へ、海から空へ、空から山へ・・

 

新涼は忘れたころに来訪す   一桂

災害と一緒です。

災害と一緒にしないで欲しい、と呟く声が・・・

*下五「来訪す」は表現が固い気はするが工夫の跡を感じる。

 ようこそ新涼さま。アツいおもてなしを致します。

 

秋風やどこから流れ何処へぞ   素頓

心変わりの一句とも。男心と秋の空

秋風に聞いてください

*どこからでもいいから秋風よ早く吹いてきてぇ~

 

地に天に海の流れに秋の風   素頓

雄大な光景

大きな句。地の神、天の神、海の神、風の神、有難う

*「天に地に人に遍く秋の風」としても良いね。

 

 

秋風の出どころ問はず心待ち   鳥閑

どこからでもいいから秋風よ吹け

どこ吹く風でしょう   鈴蘭コメント賞

*暑い日が続き、「どこからでも良いから吹いてきて~、涼しくしてくれ、秋風よ吹け」   と悲鳴のようなコメント。

 

生身魂昭和百年まだ八十路   鳥閑

その通り元気に行きましょう

あと20年弱だ

*生身魂(いきみたま)秋の季語。敬うべき年長者のことを生身魂と言うが、

 自分のことを生身魂と思っても許して・・

 〇4の高得点句。

 

秋風や妻はいそいそ旅支度   摩天

私がお誘いしたのです  鳥閑さまコメント賞

「お世話になりました」  素頓さまコメント賞

*奥さまと娘さんとお孫さんとの女三人旅を詠んだ句。

 詠み手から離れた句に読み手は言いたい放題の大盛り上がり。

 

新涼の浜辺に遺る砂の城   摩天

しっかりと出来ました。砂上の楼閣では無い

暇な人が時間を掛けて

*「新涼の浜に崩れし砦あと 摩天」こちらに訂正したいと作者が言うも、

  元句のままが良いと訂正句は却下。

  〇4の高得点句。

 

空港の灯を煌めかせ秋の風   呆兎

そうだ旅に出ましょう

外遊でしょうか

*夜の空港には詩情がある。

 ◎1〇2の高得点句。

 

秋風や旅行計画練り直す   呆兎

出発時間が迫って居ますよ

春風と間違えてましたので

*海から山へ、もう少し欲張ってみようか、一人旅から家族で行こうかなど

 いろいろ考えすぎて結局は計画倒れ。

 

 

 

 

新涼や川面に空を映しけり   碧水

爽やかな秋となりますように

季語が動くような

*「新涼や川面に映る青き空」としても良いね。

 

新涼や俳句歳時記擦れ切れて   碧水

「新涼」の句をたくさん作ったのですね

俳句の勉強に明け暮れた年月の成果が表れた句

*「擦れ切れ」は「擦り切れ」。

 買い替え時、でも年をかんがえると・・・だから今が買い替え時!

 

新涼や平和の鐘の響きをり   鈴蘭

声高らかに「長崎の鐘」。カラオケの定番。

あれ?何か見たような・・・

*新聞のコラムから「平和の鐘が響く」を頂き、兼題を足しての一句。

 それでも◎1〇2の高得点句。

 

盂蘭盆会四世代揃ふ八畳間   鈴蘭

座敷わらしも加わって

にぎやかです

*長寿国日本、四世代揃う家族はそう珍しいことではなさそう。

 〇4の高得点句。

 

 

☆一桂さんの投句もオンライン句会の8名参加も久しぶりのこと。

 いつも以上に賑やかな楽しい句会になりました。(*^^)v