2024年5月

兼題:夏みかん、甘夏みかん  当季雑詠
出題者:鈴蘭


   <甘夏蜜柑>

春から初夏にかけて旬を迎える夏みかん。歳時記によって春の季語にも夏の季語になっています。
酸味と香りを強く感じる夏みかん、暑い夏をスカッと爽やかに味わうなら夏みかんです。
夏柑、夏橙(夏代々)とも言います。
酸味は控えめで甘みが強いのが甘夏みかん(甘夏柑)。

夏みかん海を隔てて小田原城  泰山
どこからの景色
 位置関係が難しい
*「伊豆半島からの小田原城」との作者コメントにバズるが、
見事な写生句であり良い旅景です。

五月雨に幻のごと浮かぶ街  泰山
ゴーストタウンのように見える
 地方の過疎地の街
*幻灯機が映し出す高層ビル街の新宿。

夏みかん口と頭を刺激する  一桂
ふるえるほどです
 わかるわかる
*創作活動に必要な刺激

テーブルにおっさん顔の夏みかん  ゆめ
ケーシー高峰を思い出す
 成程、言われてみれば
*見た目が可愛くないし見るからに酸っぱそうな夏みかん。

強面のあばた面した夏みかん  ゆめ
果物のやくざです
 いかにも
*あばたといえばケーシー高峰さんをイメージしますが
ケーシー高峰さんを皆さんはご存じかしら。

夏みかんいつか会いたき憶い人  素頓
きっと合えます。長生きしてください。
いつかいつかと歳をとり
*憶うとは心の中で思い起こすこと。
この漢字を使ったことで文学的で洒落た句になりました。

人の世のかなしきさだめ薄暑かな  素頓
必ず黄泉の国へ行きます。
 お亡くなりになりましたか
*同級生の訃報、追悼の句。

甘夏の皮剥きながら無駄話  鳥閑
無駄話できる余裕がるとは
無駄はあなたをゆたかにします
*老人たちの寄り合いでしょうか、奥さま方の井戸端会議でしょうか。

富士を背に海を眼下に夏蜜柑  鳥閑
幸せな夏みかん
 絵のようですね
*最近は湯河原や二宮あたりが蜜柑の産地に。

関取の笑窪かわいや夏みかん  摩天
笑ってる場合ではないぞ、横綱、大関
 これぞ、あばたも笑窪
*◎1〇5の高得点句。横綱、大関の活躍を期待したい。

語り部は熱し知覧の新茶手に  摩天
帰らぬ覚悟を
 特攻の悲劇浪々と
*新茶を手にして大安売りしているとの読みもあり・・

山裾は限界集落夏みかん  一兎
老人と老木の集落
 将来が危ぶまれます
*◎3〇2の最高得点句。
夏みかんは多産、なのに消滅自治体候補の集落か。

母の日にオーロラ贈る烏輪かな  一兎
太陽フレアによるオーロラ。北海道でも見られたとか
鳥輪は勉強になりました
*烏輪(うりん)とは太陽のこと。月にはウサギ、太陽にはカラス。

戦争はテレビの向こう夏蜜柑  碧水
他人事ですね。
 戦争がない、夏ミカンはある幸せ
*平和ボケに手立てなし。

夏蜜柑抗(あがらう)ごとく転がりぬ  碧水
転がり方も武骨です。
 いえ、引力の導くままです
*抗(あがらう)ではなく抗(あらが)う。「抗(あらが)ふ」としたい。

夏柑やありのままでは生きられず  鈴蘭
ありのままの自分になろう ♪Let it be ♪
 偽りの人生よりはまし
*売り場の隅に追いやられ、見た目も良くて甘さの強い改良品種に席を譲る夏みかん。

薫風やオーボエに決め入部する  鈴蘭
これから始めるのですか
頑張ってね
*作者のことではなく孫の話し。



★★コメント大賞★★
たわわたわわ角(かど)の夏柑酸っぱいか  一兎
「酸っぱい作?」鳥閑さま

認知症それも良しとて夏立ちぬ  ゆめ
「あなたはそれでいいのかもしれないが、周りの人にとっては甚だ迷惑です」素頓さま

☆☆コメント賞☆☆
夏みかん口と頭を刺激する  一桂
「と口頭で報告」鳥閑さま

密かに上(のぼ)る塗装足場や夏みかん  一兎
「破調で足場も崩れそう」鳥閑さま

山裾は限界集落夏みかん  一兎
「夏みかんは多産です」ゆめさま

あぢさいや母への思ひ託しをり  泰山
「移り気、冷淡、冷酷、無常、高慢・・花言葉です」鈴蘭