2023年8月

兼題:玉蜀黍  当季雑詠
出題者:鈴蘭



痩せている土地でもよく育ち、焼いてもゆでても美味しい玉蜀黍(とうもろこし)。
玉蜀黍は唐黍とも言い、
唐から伝わった黍に似た穀物ということで「とうきび」と呼ばれるようになったそうです。


戦跡とうもろこしの手向けあり   泰山
ざわわざわわ・・・あっと、さとうきび畑か
*沖縄のゴマという防空壕跡に玉蜀黍が手向けてあったことを詠まれた句。
玉蜀黍を題材に南の沖縄と北の北海道を詠まれました。
「行き行けど唐黍ばかり北大地 泰山」。

天空の大シンフォニーはたた神   泰山
霹靂神と書いて「はたたがみ」とは晴天の霹靂です(コメント賞:一兎さま)
ベートーベンも敵わない(コメント賞:素頓さま)
*「はたた神」とは雷のことで夏の季語。
カミナリは「神鳴り」、神さまが鳴らすもの、魚に神または魚に雷と書いて「鰰、鱩(はたはた」から「霹靂神(はたたがみ)」だそうです。

玉蜀黍噛み切る時の突き抜け感   一桂
気分よく噛み切るとは歯が丈夫ですね。
*糸切り歯健在!玉蜀黍を噛み切るごとに食べまくる爽快感、食った食ったぁ~

かくれんぼとうきび畑迷路かな   ゆめ
確かに迷路を作るには最適な背丈のトウモロコシです
*とうもろこし畑でのかくれんぼは、
迷路の中でしているようで見つけるのも隠れるのも大変そう。

とうもろこし捥げばコキと音のして   ゆめ
自分の指ではないのか(コメント賞:素頓さま)
*上五は「とうもろこし」として、中七を「捥ぎれば」または「コキン」としてはいかが。

とうきびの焼きし匂いの裏通り   素頓
裏通りが似合う
*表通りは賑やか、裏通りは静かで落ち着くというイメージがある。
裏通りの匂いを詠む作者、きっと行きつけのお店も裏通りにあるのでしょうね。
中七の「焼きし」は過去になるので「焼ける」でいかが。

もろこしや就職きまる娘かな  素頓
もろこし屋とは食品会社?(コメント賞:鳥閑さま)
*「や」と「かな」のふたつの切れ字をひとつにするため「もろこし屋」としたいが
それでは季語がなくなってしまいます。



唐黍の人形遊び茶髪の児   鳥閑
茶髪は人形と子供に係る?
*トウモロコシのヒゲは髪に、皮を洋服にして廃物利用の工作。
「茶髪に染めた児が作る茶髪の人形」という句意説明を疑うのはよしましょう。

長崎の鐘唐黍の実る頃   鳥閑
あれから78年か
*◎3〇2の最高得点句。
浦上天主堂にかかげられていたお祈りの時刻を告げる鐘。原爆投下の翌日に炎上した天主堂、その際に落下したがヒビひとつはいらず掘り出され「平和の鐘」として鳴らされている。♪なぐさめ はげまし 長崎の ああ長崎の鐘が鳴る

唐黍を丸ごと高き歯音かな   摩天
とうもろこしと歯は相性が良い
*丸ごとといっても芯は残します。豪快に食べることができる丈夫な歯が羨ましい。
まるでインド象のような食べっぷり。

盆踊りひとつ覚えの炭坑節   摩天
東京音頭も知っている
*踊る阿呆に見る阿呆同じ阿呆なら踊らにゃ損損、
ひとつ覚えの炭坑節、××の一つ覚えと言われようが踊らにゃ損損。



玉蜀黍そこまで剥いて買わずかな   一兎
オイオイ、それはないぜ
*このような客はキャベツにも多い。魚をさばいてもらって買わないヤツもいるですって~~

夏風邪や付けでは外す万歩計  一兎
散歩に行こうか、やめようか?「付けては」のミスタイプ?
外す濁点(コメント賞:鈴蘭)
*「付けでは」の「で」は「て」のミスタイプ。

テーブルに唐黍五本旅の宿   碧水
5人家族の旅
*ウエルカムスイーツ(お着きお菓子)の代わりのトウモロコシかと思いきや、
ボート部の合宿で使った民宿でのこと。ならば「テーブルに唐黍五本合宿所」でいかが。

朝どれの唐黍の山道の駅   碧水
必ずお客さんが集まります。
*安くはないが道の駅で買うのは正解です。どれどれと集まるお客さん。

名物の焼き唐黍を爺と買ふ   鈴蘭
支払は爺
*札幌大通公園のとうきびワゴンは風物詩です。
名物の唐黍ワゴン食べに来て~~~

雨天休業公園のビアガーデン   鈴蘭
商売になりませんね。
*同じ公園内には渡辺淳一文学館があり、そこのカフェでは昼のみメニューがあります。
文学を語りながらの生ビール



茹でて良し、焼いて良しの玉蜀黍、その香りもまた良し。
香りを集めてみましたので玉蜀黍の香りをお楽しみください。
*とうきびの焼きし匂いの裏通り 素頓
*コンビニにあふれる匂い焼きもろこし 素頓
*醤油香にひかれ唐黍買い求め 碧水
*縁日や焼もろこしの匂い立つ 摩天
*潮風や焼唐黍の香の誘ひ 鳥閑