2020年3月

兼 題 「彼岸」「当季雑詠」
出題者  摩天

 
   <東京都中野区 成願寺>

春分の日(3月20)をお彼岸の中日といい、前後3日間を合わせての7日間がお彼岸です。
お彼岸のお供え物と言えば「おはぎ」ですが、春に「牡丹餅」といい、夏は「夜船」で秋に「お萩」、冬は「北窓」というそうです。
彼岸太郎、涅槃西風(彼岸西風)、彼岸船など
俳句を嗜むと美しく味わいのある日本語に出会います。

*新型コロナウイルスの感染を避け今回はネット句会になりました。
スカイプでという案もありましたが、選句・コメント集を読んで質問や感想等をメールしあう方法で行われました。

  
    <札幌市 新栄寺>

寡婦となり三十余年彼岸船  泰山
「◎に忖度はなし」
「彼岸船とは?」
此岸から彼岸に渡る船が彼岸船。
忖度なしの◎1と〇3で最高得点句です。

吉と出よ彼岸太郎に願ひたる   泰山
「彼岸太郎、八専次郎、土用三郎、寒四郎. 知りませんでした。」
太郎があるなら次郎は?次郎も三郎も四郎もありました。
その日が晴れるとその年は豊作になると言われています。

尺八や友をしのびし入彼岸   素頓
「尺八の音が流れてくるようです」
尺八の音が好評価。優しい心が優しい音を奏で佳句が生まれました。

砂浜に鳥の白骨彼岸過ぎ   素頓
「プテラノドン(恐竜)の化石かも」
石巻市渡波の海岸を散歩しての句。あの大津波から早9年が経ちました。

疫病の終息祈る彼岸かな   鳥閑
「これ以上の罹患がありませんように。人類は疫病との闘いだそうです」
「終息」か「収束」か?
収束はおさまりをつける。人為的  終息は事がおわっておさまる。自然に

辛党の父の墓前に彼岸餅   鳥閑
「死んでから甘党になりました」
けして嫌がらせではありません。

  

武漢より招かざる客彼岸西風   摩天
「中国は開き直り。ついにパンデミックに」
コロナウイルス、パンデミック、緊急事態宣言など聞きなれない言葉も続々。

(追悼)わが耳に君の歌声彼岸寒   摩天
「明日は我が身か」
ご葬儀にこの句を色紙に書いてお持ちしたそうです。

基地縦断道路開通彼岸後   一兎
「滑走路横断でなくてよかった」
米軍通信基地を縦断する道路ができることになりました。
漢字だけの句から基地問題の難しさをカンジます。

此岸にはクルーズ船が彼岸まで   一兎
「死者がでました。命がけのクルージングです。」
彼岸までという期間であってほしい。
此岸から彼岸までの渡し船になりませんように。

妹に母の面影彼岸かな   碧水
「妹の方は「姉ちゃんに母の面影」と詠む」
「おそらく本当の親子でしょう」
平凡な句と作者は言っていますが、◎2〇1でこちらも最高得点句です。

息災を父母に感謝し入彼岸   碧水
「ご先祖様にも感謝。長命の遺伝子です」
義理の親子関係ではその遺伝子の引継ぎは残念ながらありません

住職の説教ながし彼岸寺   ゆめ
「流しの説教、聞いてみたい」
「説教聞き流し」
「長し」なのにコメントは「流し」でウケています。
その思いトイレで流しましょう

誰が挿せし墓前には早や彼岸供花   ゆめ
「実は故人の愛人です・」
「正妻の前に愛人か?」
「墓場まで持って行った秘密」
作者の狙い通りに昼ドラ風、女の戦いがコメントに。

お彼岸や蝋燭点(とも)すチャッカマン  鈴蘭
「下5は意表を突いた感がある」
チャッカマンは商品名「だからとりません」、「だからいいのよ」に分かれました。

自分史に満州のこと彼岸西風   鈴蘭
「ご苦労なさいました。私の義姉が満州引き上げ者です」
自分史と書けば作者の歴史と思うのが自然。
ですが叔父が書いた自分史なのです。
                                      *敬称略

  
    新型コロナウイルス感染症の終息を祈ります