先日、「風薫」第十二集を刊行しました。一年半から二年に一度句集を作ってきましたが、まだ青年期という実感です。その間にはそれぞれ都合があってメンバーも入れ替わりました。でもそうやって句の会は育っていくのかもしれません。
今後とも自由俳句「風薫」をよろしくお願いいたします。
今回の句会の兼題は「鏡」。身近にありながらも以外に難しかったかもしれません。
高崎 志朗
フラワーパーク水面映へたり藤の華
フラワーパーク水面映へたり藤の壁
兄と吾の反射ごつこや子どもの日
薫風や鏡のチェック初デート
三度ほど鏡見直す五月晴
渡辺 健志
湖染むる蝦夷ざくら濃し風もなし
余市川工場沿いに花続く
北海道桜紅梅咲き揃ふ
下北の涯に咲きをり余花かな
田水張り富士はふたつや甲斐の國
色残る花をさらひし五月雨や
早苗田に浮かぶ花びら色やさし
主絶へ垣越ゆ薔薇や果て知らず
大竹 和音
幼子の見て指環だよ白詰草
エレベーターのドアを鏡に浴衣帯
夏の靄寝ぼけまなこのルームミラー
シャツ白し吾子は聖歌を弾き語る
煤色の飯盒洗ふ夏の川
駄菓子屋の舌あかき子らゆすらうめ
葉桜やハーモニカ吹く焼きそば屋
小林 泰子
汗こもる活字しみ入る指サック
前髪を揃えし我と鏡の吾
髪洗う鏡の我に問いかけり
白靴や洗う洗うも泥尽きぬ
稜線に夕日の名残り滲む初夏
白石 洋一
下着を長袖から半袖に四月十三日
子を産めない雌猫の名はチョロとタヌ
遠くない未来のあの世は何処に
シライシヨウイチはナニモノか
新玉葱糠漬けのつまみ食い
生きていくことは記憶を重ねることかな
アオキの実あの赤色は目立ち過ぎ
耳鳴りしか聞こえない寝入り前
老いた自分を確認する鏡
ガラスに映る私は初老の男
刈谷 見南國
初夏や膳にぶつかる丸鏡
あめんぼう手鏡の手に少し熱
鏡の中の老ゆる早さや著莪の花
みどりの日ひとり小路を歩くだけ
レコードをパタパタ掘つてホトトギス
螢来るレコード掘るよなスピードで
福冨 陽子
浴室の鏡の端の蚊は生きる
残り雨水鏡にも風薫る
夏の宵鏡の中の吾は別人
「風薫」の名付けは初夏の土曜にて
シジュウカラ声高に呼ぶ枝垂れソネ
夏雨や胎児となりて浅眠り
ところてん顔に酢の跳ね中座なり
ドウダンに油虫ゐてこともなき
日焼け止め塗らず日がなは凡となる
5月の連休に咲いた白つつじ
