五月の心地よい風と青い空。植物も育ち花屋の店先はカラフルな色彩であふれています。我が家の庭のスナップエンドウも日々実っているところです。
今回の句会の兼題は「子どもの日にちなんだもの」でした。最近は鯉のぼりを立てるお宅も少なくなり風物詩を見届けたい者としては者としてはちょっと淋しい気がしましたが、住宅事情もあり仕方がないかもしれません。
今回はソーシャルディスタンス座会でしたが、次回は天気に恵まれれば外に出かけて詠みたいと思います。
吉羽 英和
娘作兜の折り紙懐かしや
晴天に雄々しくおよぐ鯉のぼり
たけのこを焼ひて恩師のちゃんちゃんこ
白鳥 湖上
一回忌ただ手を合わせ鯉のぼり
青葉山亡祖父選びし鯉のぼり
渡辺 健志
田をつぶし蛙の声の微かなり
すれちがい振り返る先に走る雉
庭々のテントあざやか田舎町
疋田 勇
羽蝶蘭絶壁に咲く優雅さよ
雨蛙雨の雫に辿りつく
夏立ちぬ姉は母に似たりけり
肩叩き気持ちの良さにうたた寝し
春の風花の香りに目が緩む
大竹 銀河
玄関の昼の電灯雨の庭
田園は大地の臭気立ちこめる
ふかし芋胃にほどけゆく柔らかさ
白靴が先頭行くや筑波山
鯉のぼりほどの高さやコウノトリ
片付けし箪笥の揺るる足拍子
手ぬぐひの球の解けし桶の水
箸先のけし一粒やとろろ丼
目の奥の白黒映画濡れてゐる
ふくらはぎへと陽の光照り返す
山 多華子
鯉のぼり游ぐ川べの二人連れ
鯉のぼり踊る舞台の水清し
風薫り時季楽しむ鯉のぼり
柏餅兜と並ぶ飾り棚
この痛み次の春待ち種蒔きか
菫咲き心浮き立つ彼の大地
大竹 和音
ベランダに雑魚鯉のぼり五百円
鯉のぼり見せてあげたく田舎道
呼子鳥栃木訛りののど自慢
名曲の大合唱や百千鳥
春の蝉慣らし弾きするヴィオラ哉
無意識にカチカチボヲルや桜ん坊
鰻捕る親子河童が牛喰沼
宿借りや中心街の空きデパート
足枷(あしかせ)のくつつき半兵衛野に屈(しゃが)む
おなもみを手裏剣にして忍者ごつこ
小林 泰子
うずま川みなも揺らめく鯉のぼり
ルピナスのないしょ話に耳すませ
白石 洋一
荒れ畑イノシシ耕す五月晴れ
鯉のぼり門扉に張られ泳げんな
柏餅匂いの記憶五歳かな
養鶏場にポルシェが停めてある
サンサーンス聴きながらハウスに
白と紫の藤の花ツゲを覆う
アスファルト桜の花びら点描
高菜折り漬物に叔母の味真似る
弱った蜜柑を割って枝に刺した
梅の花は咲いただけじゃ実らない
福冨 良
麦の秋しつかりつかまる蛙の子
桃の花散るも若葉に光くる
初夏の風親子を撫でし昼下がり
麦の穂も刈り時となる初夏の田や
刈谷 見南國
四万十に薄き石投ぐ端午かな
端午それは陣地取りたる力なり
なぜ一回転したの今端午の日
小一時間歩くカロリー柏餅
トマトスープからスプーン着地音
褒められる牡丹の脇に猫遠慮
内野ゴロの山ひと夏の少年は
石井 温平
雛温し行李の蓋をそつと開け
町名の歴史偲ばる幟(のぼり)かな
矢車や曾孫しかと抱きつつ
酒好きのわが家に届く柏餅
菖蒲湯や国民學校の友想ふ
福冨 陽子
庭草とねんごろに八十八夜
留守番の猫あくびして立夏なり
風待ちの父母居ます鯉のぼり
草餅の柏葉乾ひて灯を落とす
粒餡か漉餡か皐月はじまる
山菜天ぷら怪音階で揚ぐ
風薫るいつかの奏楽(そら)の暗黙知
夏庭や鵺か迦陵頻伽ゐて
ひょうたんの花
