梅雨空や鳥になりたし探し猫 | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 毎日のように梅雨空が続きます。リモートワークも日常化した働き方にも慣れてきました。といっても、現場作業でこそ仕事という方も多い中、プライベートの過ごし方にも、より一層のアイディアや再発見が必要になりました。みなさんはどんなことに喜びを見出しましたか?

 今月もメールで俳句を投稿し合っての発表となりました。

 身近な景色、足元の出来事など、新鮮に捉えた作品が多いと感じました。

 

 

2020.6月27日

 

 

冨田 渉

窓の外酔ひし眺める苺月

 

 

大竹 銀河

宿の窓ぼんと開きHEY!かたつむり

ソーダ水。底は思いのほか、静か

また携帯忘れてる、床に。扇風機のコード

路はコ字、乙字を描いて。町夕暮れ

垢、汗の染みつく赤縞のTシャツ

ビール手に同年代の二人。語らう

夕薄暑。カネの話をして歩む

 

 

山 多華子

窓の外セミ時雨聞く根室線

車窓に緑萌え行く湿原よ

深い霧晴れるを待つよ絶景よ

最果ての街に行きたし蝶になり

脳トレはトイレ掃除の後になる

 

 

大竹 和音

車窓越しセーラー服と向日葵や

アンコール止まぬラストライブや蝉時雨

LPの中ジャケ水着の女たち

ひとんちの畑や温き西瓜割り

井戸浚へ子から古銭を買ふ床屋

千秋楽佳境に入りて蝉時雨

 

 

小林 泰子

朝の窓変わらぬ景色に深呼吸

暗闇の窓に映りし自分かな

 

 

白石 洋一

涙ぐむ 気がつくと 泣いている

病院内を走り回るスタッフ達

雲と青空の手前に外輪山

MRIの共鳴音にリズムとる

60年生きたから 窓越しのイチジク

この世の中を渡りきれず窓を閉める

窓開ける 生きた証に 斧を研ぐ

母猫の尻尾纏わりつく仔猫

全開の窓からカボスの花香る

水やり過ぎて枯れる苗も有り

 

 

刈谷 吉見

窓越しにをんな深夜ラヂオの夏

鞄重き銀行員に涼風

異人の夏や兜太はビーフハート

古書縛り幸運すり抜け桜桃忌

音楽の果てに梅酒の瓶並ぶ

 

 

石井 温平

梅雨の窓心の病続きけり

窓開けて聴く老鶯や(あさ)(ぼらけ)

今朝もまた窓全開や梅雨入晴

句創りの遠近(おちこち)に飛ぶ梅雨の窓

男体の遠雷届く北の窓

 

 

福冨 陽子

風来坊キスゲ映りぬカラスの眼

咲きはじむサツキにしたたか走り梅雨

夏日来て戸袋の悪靈やをら消ゆ

野良猫のかぼそき声や夕立ち前

しあわせと御難を分くる窓一枚

逃げ猫の幻声聞きて窓開くる

枝払ひ景色広がり蝸牛

プラム酒を造り晴れ間の雫堕ち

 

庭のあぢさひ