もうすぐクリスマスの頃となりました。巷では日々あちこち忘年会で盛り上がっています。
今年は何ができたかなと思い返す余裕もなく、あれよあれよと時間が経っていく気がしていますが、時間に追い越されないよう地に足をつけて、また新しい年を迎えたいと思います。
今年の最後を納める自由俳句「風薫」の句会を開催いたしました。
半沢 美恵子
年の瀬や買い物躍る老いてなお
ささりんどう地味に剛き母想う
冬ぬくし平野の奥に富士をみる
おでん煮る隠居二人の朝昼晩
冨田 渉
冬すみれ踏みし少女の足の先
年の暮苦き記憶を負うて行く
篝火や探し歩むは君の顔
巻島 武宣
紅白の蒲鉾買ひし師走かな
晦日蕎麦今年も無事に打ち終わる
職も無き大晦やケセラセラ
捨てきれぬ煩悩もあり除夜の鐘
第九からラデッキーへと去年今年
開戦日ふたりのJ の忌となりぬ
一等星二つオリオンの四角
凍土打て〝WE WILL ROCK YOU〟足拍子
I Want To Dance With You,Christmas
大竹 銀河
時間外窓口に列年の暮
旅に出て給料薄し年の暮
八方の六方は海年の暮
父方か母方か年末の帰省
年末や夫たる資格なき父と
年越や祖父寝てからは祖父の席
母の血か父の血か冬好きなのは
山 多華子
十二月祥月命日四人なり
冬将軍乾いた葉々を踏み急ぐ
年の瀬や黄昏時の〆飾り
大竹 和音
除夜の鐘つき待ちの甘酒ぬくし
絣のもんぺ白黒写真の中の餓鬼
神の旅お供したひがちと不安
神の旅天女の湯あみ見惚れけり
梟も絵になる映画サタンタンゴ
ねんねこや孫しよひ揺らし子守唄
小林 泰子
年越しにみかんの皮積み上がる
寒空や真顔で泳ぐ通しガモ
公園をもくもくと歩く人々
荒木あかり
霜柱むくむく立つ白光放つ
エンディングノート行末思いヒトは生く
冬来たるイチゴハウスは光のページェント
冬空や鯨形の雲とランナー走る
吹きだまる枯葉掃き年を待つ
白石 洋一
宇田さんさようなら、さようなら
二度と会えないと想うことがこんなに淋しいなんて
沢山の思い出をありがとう荻町から心から
霜の朝に年も暮れ行き白菜生き延びる
暮れの準備は通販のワイン10本届く
命は有限の夢かなと読経の場にて
俺より先に死ぬなと二人の弟に言う
乳癌の宣告を冷静に聞いていた
追われたことしかない老猫は怯えるだけ
ふと見上げてジェット機の行方を見る
刈谷 吉見
しやけ届く異父姉はひと回り上
ぬくもるで真空管の紅き冬
年の暮ラヂオの窪みハタキかく
冬三日月橋の隙間に鍵落ちて
図書館で出会ふ気まづさ神の旅
空つ風元気でやりよ父の聲
螺子探す冬に小さなプラスのを
そーじきの線引つ込む速さ去年今年
だいつきらひ無関心さと凍空は
石井 温平
銭湯の特集記事や年の暮
ひとり沸くポットのお湯や年行けり
極月の深谷の葱の逞しく
町師走いつもどこかで道普請
米寿来る年越の日々満ち足るる
福冨 陽子
冬鴉ひと鳴きふた鳴き闇と化す
凩(こがらし)や季節飾りぬポプラなきあと
式了り捨てるさだめのカトレア赤し
解体の家掃くための箒買ひ
数え日や甥に双子の産まれきて
男体山雪冠り石(つわ)蕗(ぶき)は咲く
霜柱目覚むる魂の出家
寒月や緞帳より眩光漏れのごと
寒風に刹那陽差しの温かさ
