夏始め栃の木の花染まりくる | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 五月は、これから夏を迎える気持ちのいい季節です。皐月は、早苗月、五月雨月ともいいますが、宇都宮では連休前に田んぼに水が張られ、連休を過ぎるとたいていの田植えが終わっている風景が見られます。やさしい風に吹かれながら日々、苗が育っていく様子がわかります。
先日、開催された句会の作品を掲載いたします。

 

山 多華子
学び舎に薫風抜ける初学期
習わしの五月雨衰いて移ろうや
温暖化風薫さえも憂える世
薫風に揃いてそよぐ麦の穂
薫風も傘にて避ける紫外線

渡辺 健志
風薫る心地よさに道忘る
微風になびく早苗の爽やかなる
横須賀の軍人彩る異国感

 

 

大竹 雲漢 
石段を登ればオブジェ風薫る
森の尿浴びて潔しや風薫る
風は皆清きを発すかをりかな
更衣着替の上の句帖かな
町中にマロニエ咲くや更衣
塾生も衣更へたり試験際

 

 

大竹 和音
刹那的アヴァンチユルや虹の橋
うら若きあやめ身のほど知らぬ芥子
昼顔にフラレるからとからかはれ
髪を結ふ夏の少女薫るシャボン
初夏の市人目気にせず寄り添ひて
まだ往かぬ花火のすべて咲かそふぞ
姫百合や抱きあひて寝る永久のやふ
籠の鳥身請けし夢や夏の雪
すすり泣く君と母の声 異国初夏
見返りを求めぬ愛に薫る風

 

 

小林 泰子
風薫る食卓飾るよもぎ餅
薫風の踊るトンビら和やかに
アボカドのぬるりと剥ける快感よ

 

 

荒木 あかり
薫風や我が胸のもやもや吹き飛ばし
燃え立つつつじ振り返れば黒き影
五月晴れヘビも這い出る暑さ
黄ボタン賞味期限つきを知りや知らずや
水田に映るまち見知らぬワンダーランド

 

 

白石 洋一
新しい時代が始まる日に鼻水
そら豆や上向き鞘の勢いは
霜萎れナスとピーマン生き返り
雨二日イチゴの赤み早まりて
鼻腔奥土の匂いが薫風乗る

 

 

刈谷 吉見 
更衣へミックロンソンのソロ涼し
ポーの本栞すゝみて黒揚羽
五月田や他郷に膝抱き爪切りぬ
同人誌埃払ひて風薫る
いつか手をつながぬ日々や風薫る
階段のうちがは母の薬眠む

 

 

石井 温平
五・一・五「薫風おかりや」バースデー
奔放な句会「風薫」アイスティ
颯爽と句友集へり風薫る
薫風や句会披講の声通る
孫よりの誕生祝いや風薫る

 

 

福冨 陽子
五月晴れ栃の木の葉のそら怖さ
煮込むほど果てなしカレーの哀しき
せわしなく蟻這い驟雨の予感
ヒヨドリやみかん色の靴履けり
薊踏み跳ねゆく猫の尾の揺れし
薊踏み闇の絵巻か歪み月
存分に寝てよい朝あしたの早起き
鋸の冴え音立てし木こりと化す
淡は竹ちく煮る亡き祖母の影風薫る
芥子群や引き抜くすまなさ爪に土

 

 

野苺の花