つゆの花 色めきてなほうつくし | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 

      先日昼間に雹が降りました。したたかに道路に打ち付け弾ける様子を眺めていると、何かをつぶやく言葉にも聞こえてきました。何と言っていたのかは……。何かをつぶやいていたのかは私だったかもしれません。

      ある深夜、南に向かって車で走っていると、丸い月が正面の高いところに浮いていました。月はずっと身近な友人のつもりでいましたが、そのときは見知らぬ他人の顔になっていました。きっと私の心が忙しすぎたのでしょう。忙しいという字は心が亡くなると書くものです。ご用心を。

      摂氏20度、ちょうどいい気温に恵まれ、6月の句会を開催しました。見学だけの方も含め、和気あいあいという雰囲気がほっとします。

     

 

  

荒木 あかり

雨上がり 腹を見せたヘビに夏到来
六月一日 黒の制服姿に 挨拶す
水田や ついばむ小さき白鷺の ひとり立ち
麦秋とヒバリの突き声に 目覚めるなり
インク草 幼きころに 戻るなり

 

 

小林 泰子

そよそよと葉っぱうなずき我もうなずき

大空に悪魔の梯子どこへ導く

稲光クーラー動き出して真夜中

 

 

佐藤 宣明

森開き 青苔荘のホットウイスキー

継承す「仮根説かねば禍根あり」苔の森開く

星星を噴き上げませう雪の下

いにしえの大気へもどる夏の午後

くるぶしと腱にこだわり衣替え

 

 

白石 洋一

ワイン赤 舌は甘みに騙される

ホーホケキョ上手になったね

ラジオのノイズが懐かしいんだ

野焼きの草炭20キロ先から舞い降りて

タバコやめ 後悔した人 おりません

 

 

刈谷 吉見

北勝富士 頭を垂れて春にゐる

お元気でといふ人ありて夏の旅

胡蝶蘭 皿と鉢置き変えてゐる

あだなさへ 呼べない廊下を走る子や

 

 

石井温平

川俣の石焼バーべキュー味噌で土手

今年また良くも悪くも梅雨入りかな

貪欲な梅雨の鴉や街の中

国会に抗議の続く梅雨不安

花々の艶やか梅雨の妻の墓

 

 

福冨 陽子

 水やりを忘れし葉らの声を聴く

 なつむしの羽音途切れて軒の下

 紫蘇の葉に触れもせで香や移り

 トマトやトマト 生まれた畑の遠さ 

 味噌汁の具を考えおり 長信号

 最後の運転 父の残せし車との別れ

 

 

      

      Ph.佐藤宣明(長野県白駒池)