先人の三寒四温とはよく言ったものだと思うほど、その文字をなぞるような天候が続いています。桜の花が去ると一段と緑が色づく季節です。めくるめく春を味わいながらさらに詠んでいきたいですね。
大倉 美和
一日の春塵乗せて帰り路
枝辛夷(こぶし) おみくじのごと夜明け待つ
一瞬を止めしうぐいす初音かな
田代 由美子
畔焼きの車内に紛れ花曇り
偲びつつ団子丸める彼岸かな
午後の土手 土筆摘みする婦人おり
すそ分けの菜の花 芹に舌鼓
空青くつぼみふくらむ桜色
白石 洋一
春近し 毛布一枚 減らしけり
古き友 ROCKの話を メールする
カメムシは 神出鬼没 このやろう
雨音や 子守唄にも 似ておりぬ
朝来たり 朝ヒンヤリと 朝の息
冬越えて トラクタなんとか 動きける
ぼんやりと 暗い空には 起きれない
佐藤 宣明
沈丁花 一枝を供えて春彼岸
春がすみ重要メールを消去せし
菜の花は眠たきものぞ車窓ごし
春雷や喉にご飯のたちどまり
さやさくら さやさやさきて さやとちり
金子 泰夫
花びらを踏みし朝刊とりに行く
贈りもの 扉の前や花じゅうたん
開けし窓 風に吹かれり ひとひらの
刈谷 吉見
帰りしな 未練で撮りぬ白鳥や
春の雨 できることはしてみる希望
春の朝 流しで水を飲む猫や
サリンの日 二十年経ち また春の来る
福冨 陽子
春雨の音せず地中に抜けりゆく
三月の末日に蒼き銀杏の芽
すそ丈も吾身追い越し花衣
雨音やしじま散らしし花冷えか
味噌汁の浮き麩を眺む朧月
