菜の花の おひたしに咲く春の香よ | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

連日の春の雨で桜もとうとう見納めです。今年はいろいろなところで桜を見ましたが、桜は遠いところを訪ねて見るより、昔からそこに生きている桜の樹を心ゆくまで見るのがいいという想いに、いまさらながら達しています。
 先人の三寒四温とはよく言ったものだと思うほど、その文字をなぞるような天候が続いています。桜の花が去ると一段と緑が色づく季節です。めくるめく春を味わいながらさらに詠んでいきたいですね。


大倉 美和

一日の春塵乗せて帰り路

枝辛夷(こぶし) おみくじのごと夜明け待つ

一瞬を止めしうぐいす初音かな


田代 由美子

畔焼きの車内に紛れ花曇り

偲びつつ団子丸める彼岸かな

午後の土手 土筆摘みする婦人おり

すそ分けの菜の花 芹に舌鼓

空青くつぼみふくらむ桜色


白石 洋一

春近し 毛布一枚 減らしけり

古き友 ROCKの話を メールする

カメムシは 神出鬼没 このやろう

雨音や 子守唄にも 似ておりぬ

朝来たり 朝ヒンヤリと 朝の息

冬越えて トラクタなんとか 動きける

ぼんやりと 暗い空には 起きれない


佐藤 宣明

沈丁花 一枝を供えて春彼岸

春がすみ重要メールを消去せし

菜の花は眠たきものぞ車窓ごし

春雷や喉にご飯のたちどまり

さやさくら さやさやさきて さやとちり


金子 泰夫

花びらを踏みし朝刊とりに行く

贈りもの 扉の前や花じゅうたん

開けし窓 風に吹かれり ひとひらの



刈谷 吉見

帰りしな 未練で撮りぬ白鳥や

春の雨 できることはしてみる希望

春の朝 流しで水を飲む猫や

サリンの日 二十年経ち また春の来る



福冨 陽子

春雨の音せず地中に抜けりゆく

三月の末日に蒼き銀杏の芽

すそ丈も吾身追い越し花衣

雨音やしじま散らしし花冷えか

味噌汁の浮き麩を眺む朧月