(Rev1 特選句鑑賞文を追加)
第82回ネット会は、47名の参加となり、230句の投句を頂きました。
【講師選】
《永田萬徳》
【特選】1句
157 潮干狩おしりの写真ばかりなり 秋子5
※「潮干狩」は貝拾い、貝掘りなどとも言う。腰を落として、砂中の貝などを採取するので、「おしり」を濡らすまい、濡らすまいと思っていても、終わりごろにはびっしょりと濡れている。
掲句は、貝堀りをしていて、尻が濡れているところではなくて、貝堀りの場面を捉えた「写真」に注目しているところがおもしろく、滑稽味もある。
【並選】4句
4 げろげろにぐるぐる返す蛙かな 祐4
6 こどもの日ぽたぽた垂るるアイスバー 白士2
9 シャツに透く大胸筋や夏近し 一路1
43 遠蛙深夜勤務の喫煙所 昼顔4
《歌代美遙》
【特選】1句
132 畝作る足に飛び来る痩せ蛙 とも子5
※ 畝を作る作者の孤独感と、生涯この地に住み農に携り、テレビの予報士より、長年の気候の感を信じる農暦を持っている優越感を感じる。
しかし、時の流れとともに、里にも変化が起こり、高齢の為に農から退く家や、後継者のない人材不足や、身体能力の低下により、里を離職していく現実を、ひしひしと作者は肌で感じている。
耕せば黒々と肥えた土塊を前に、この生きている土へ応えなければと、土地を守る情熱はある。情熱はあるが、痩せた体躯を眺めて老いた自分の今を認めなければいけない。ふと、痩せ蛙に気づく。お前もかと、己と重ねる。
【並選】4句
62 夏草を分けて巡らむ俳枕 一路4
101 子供押す停車のボタン潮干狩 明寿2
193 飛び石に低きジャンプの初蛙 しどみ3
226 湾曲にかがやく鉄路夏近し 隆司1
【互選三賞】
(天賞 14点 1句)
172 灯台の影が日時計潮干狩 ちはる5
*「灯台の影が日時計」に凝視が効いていて、景が目の前に広がってくる。腕時計無しの潮干狩で時間を気にする状況も納得させられる。(直)
*絵になる光景が見えます。(寛昭)
*子供の頃は時計も持っていなかったので、潮干狩りに行くと、時間も分からず夢中になって浅利掻きをしたものです。なので、この情景が良く分かります。(房子)
(地賞 13点 1句)
43 遠蛙深夜勤務の喫煙所 昼顔4
*赤いカンカンの灰皿が置かれ喫煙所に出てみれば久しぶりに蛙の声。こんな所にも蛙がいるのかと思いながら、故郷を思い出す一服の時間。(裕)
*コンビニの店員か。深夜はお客さんは少ない。今では殆どのコンビニでは喫煙コーナーは撤去しているが、以前は灰皿を置いた喫煙所があった。そこで一服しているのだろう。この時はコンビニの制服は脱いで私服のはずだ。その一服時の遠蛙。詠み手はどんな事を考えているのだろう。この季語で詠み手の姿が鑑賞者に様々な物語を付して近づいてくる。秀句。(浮游子)
(人賞 12点 1句)
91 喉仏尖る少年夏近し ちはる3
*少し大人びてきた少年、春から夏へ、成長を感じる。(正則)
*夏(大人)に向いつつある少年の活き活きとした清新さと力強さを感じます。(南海雄)
*季節の移ろいを少年の喉仏にとらえてユニーク(一葉)
【入選句】
(10点句 1句)
200 風鈴やそろりと外す腕枕 昼顔1
*風鈴と腕枕の取り合わせが良く、兼題の「枕」も上手く詠み込まれ、想像力が広がります。(一路)
*風鈴とそろりで沢山のことが伝わってきます。(とも子)
(9点句 2句)
9 シャツに透く大胸筋や夏近し 一路1
41 縁側を抜けくる風や籠枕 隆司4
*縁側に風が抜けるようになった季節に、障子も開け、籠枕ーこれも大事な道具ーしてい眠る様子に初夏の涼しいひと時を感じました。(紅梅)
*目の付け所のユニークさ。確かに蛙の声はシュプレヒコールのようだ。(姫)
(8点句 2句)
27 マヌカンの鎖骨すつきり夏近し 一葉1
*羅か露出の多い夏衣になったマネキン。鎖骨が顕わになって色気を感じている作者。(かつじ)
206 枕崎駅前食堂初鰹 青橙1
*漢字八文字だけですが、寧ろ新鮮で綺麗に切り揃った初鰹のお刺身、またそれをを頬張る姿が目に浮かびます。(秋子)
(7点句 2句)
26 まくなぎを割つてセンター前ヒット 明寿1
*まくなぎとヒットの対比が鮮やか。(夜亜舎)
*些細な事を「割つて」という表現によってポエムにしています。 (千里)
34 一村は一樹の影や夏近し 直1
*小さな村の一角に大樹が葉を茂らせてその影が村を覆っている。(明寿)
(6点句 2句)
28 んの字に親子向き合ふ潮干狩 かつじ2
72 蛙鳴く里に伝はる七不思議 ちはる4
(5点句 2句)
1 あじさゐやがんセンターの駐車場 ゐるす5
*この駐車場にはブルーの紫陽花が咲いているように思う。がんセンターのという言葉が、効率よくいろいろなことを物語る。紫陽花は雨に濡れているのかもしれない。(昼顔)
*あじさゐやがんセンターの駐車場情景と心情とが静かに伝わってきます。(寒太郎)
62 夏草を分けて巡らむ俳枕 一路4
*夏草の茂るのも苦にせず、押 し分けて、俳枕の地を巡るという俳句への熱意がうかがえる。(みちお)
120 常念を隠す黒雲遠蛙 ひろし2
*学生時代の蝶ヶ岳から常念岳への縦走を思い出しました。(常住)
*さあこれから大雨が来るぞという雰囲気満載の御句です。(ひさを)
132 畝作る足に跳び来る痩せ蛙 とも子5
(4点句 7句)
20 忍び逢う出湯の宿や遠蛙 和1
*下五の遠蛙がより、ヒソヒソ感が出てて良いなとおもいました(ケイ)
42 遠蛙ホルン吹きし子税理士に ゐるす3
*それぞれの生き方が感じられる(秋穂)
*遠蛙とホルンの距離感が良いと思う税理士に意外感がある(らら)
89 後朝のリラの残り香枕抱く ひさを5
*リラの残り香に色気を感じました(雄介)
143 早よ渡れ道に一服昼蛙 一路3
*一茶の句が思い浮かびました。(正人)
157 潮干狩おしりの写真ばかりなり 秋子5
195 病室の寝具一新夏近し ケイ2
*楽しみも少なく不安を抱える病人にとり取り替えて頂く仄かな石鹸の香りのする新しいシーツはほっとする事と思います。初夏の清々しさととても合っていると思いました。(ちはる)
212 木洩れ日の我が影確と夏近し 栄太郎1
*木漏れ日も日が強くなるときらきら輝いてはっきりしてくる(梢楓)
(3点句 12句)
4 げろげろにぐるぐる返す蛙かな 祐4
5 こつ然と蛙鳴き初む雨催ひ 栄太郎2
18 トラクターに村は鳴動夏近し とも子4
38 雨降りて蛙は顔を二度洗ふ 紅梅5
55 ぽたぽたと甘露の如き若葉雨 ひさを4
*新緑の樹木を濡らして雨が降って居ります。その樹木の葉より滴がぽたぽた落ちて居て
「まるで甘露のようだ」との措辞に、作者の豊かな感性が想われます。(栄太郎)
82 鍬担ぎ妻との家路夕蛙 一葉2
*一仕事終えて蛙の鳴き声に安堵しながら帰る二人が浮かんできます(しどみ)
97 捲り上げ白き素足や潮干狩 正人2
130 水枕たぷんと揺るる夏の風邪 祐5
186 波際に立つだけの父潮干狩り 梢楓1
*しっかりと人間が描けている。物語姓があるところが尚良い。(隆司)
215 夜の道の靴に飛びつく蛙かな 杳杳2
* 夜と言う事である種の驚きがあったのかもしれません。(順一)
226 湾曲にかがやく鉄路夏近し 隆司1
(2点句 27句)
37 雨の日の午睡は妻の膝枕 栄太郎4
*なんとも羨ましい(白士)
58 夏近しネクタイ外し帰宅せり 正人1
*「ネクタイを外し帰宅せり」という基底部は、いいお感じであると思います。この基底部と季語の取り合わせが良いと思います。夏が近づいて、日に日に熱くなり、ネクタイは不便利になるわけです、ですから、事後と時間が終わり、ネクタイを外して帰ります(亜仁子)
59 夏近しほうじ茶ラテの一人カフェ しどみ1
66 蛙の子飛んでみてから右左 梢楓5
73 蛙来て銀河鉄道乗れという 雅美3
76 感触はセンターオーバー夏予選 らら5
80 金属の郵便受けに蛙かな らら3
*何でもない句ですが、「金属の」が良いです。景だけでなく生活も見えてくる、言葉の選択が見事です。様々な物語も想起させる、まさに景が語る一句。(雅美)
86 戸を閉めて挟まる暖簾夏近し 明寿4
*来る夏に備えて暖簾を出した。ただ気温がそれほど高くないので、戸を閉めたら暖簾が挟まってしまった。季語の微妙な季節感がうまく表現されている。(ひろし)
94 込み合へるボランティアセンターに夏 常住5
101 子供押す停車のボタン潮干狩 明寿2
105 夏近し遺影のためと撮られをり 慢鱚4
*好天気の中、よい表情で撮影できたのだろうと感じる句です。(杳杳)
115 初夏や枕にさるるぬひぐるみ ゐるす4
116 初枕カーテン越しの桜月夜 千里1
117 小さき手の離さぬ蛙呻吟す ひさを1
118 沼まるでスピーカーなり牛蛙 隆司3
*沼まるでスピーカーの措辞は詩的です。素晴らしい感性に感服です。(満)
125 真つ白な宮司の衣裳夏近し 寛昭5
126 身に合ふた枕やうやう古希の春 とも子1
132 畝作る足に跳び来る痩せ蛙 とも子5
134 聖五月センターポールに日章旗 房子5
144 足上げて休む運ちゃん夏近し ひろし1
150 駐車場待ちの父なり潮干狩 正則2
*親父の悲哀に昭和の風 (亨)
159 潮干狩バケツの中の小さき海 秋子2
183 潮干狩風に聞いてる砂の声 一葉3
193 飛び石に低きジャンプの初蛙 しどみ3
204 北斎の波のベロ藍夏近し 正則1
205 本気度が違ふ家族や潮干狩 ゐるす2
*ひと目見て服装や装備がぜんぜん違うのでしょうね。
遊び感覚の我らと違い気合が入っていて生活がかかっているのではと思わせるくらい。楽しい句です。(慢鱚)
209 枕木のバーコードめく目借時 無弦奏4
211 明易し枕の下にアイマスク ひろし3
(1点句 39句)
3 アリーナに巡業幟夏近し 杳杳5
10 アリバイを訊かれぽたぽた玉の汗 和2
13 センターに鎮座している蛙かな 夜亜舎3
15 センター分け詰襟の君夏隣 秋穂4
23 ぽたぽたとガザの子の血や聖五月 直5
24 ぽたぽたとどつと流すや鮎の稚魚 満徳2
31 位置につくスタートライン夏近し ゐるす1
36 迂闊の手枕蛙の目借時 一葉4
39 雲低し蛙まどろむ花の宿 寒太郎2
47 夏ちかし今君のこと考へる 亜仁子1
51 潮干狩り母がもつとも得意とす 房子2
52 潮干狩磯のかほりを孫と嗅ぐ 秋穂1
63 夏風邪や小学以来の水枕 滿4
65 蛙とふ渾名平安美人かな 雄介3
81 空へ向くセンターライン蜃気楼 滿5
85 警策の肩に蛙の目借時 房子1
90 鯉のぼりセンター越える大飛球 ひろし5
103 事もなく一日終ふる蛙かな 満徳4
108 夏近し君と微睡む四畳半 祐2
110 重き戸の文化センター緑さす 青橙4
119 菖蒲湯の香り豊かに腕枕 正則4
129 水出しの雫ぽたぽた夜鷹鳴く ひろし4
135 夏近し交響曲に鈴の音 雅美1
146 足長きジーンズの娘ら夏近し 常住1
147 短夜やかかえしままの抱き枕 房子4
156 ぽたぽたと廃れ畳にさみだるる 南海雄3
165 潮干狩りバケツに踊る魚たち 夜亜舎2
171 田面揺らす風の寂しき遠蛙 迪夫3
178 ぽたぽたと両手の袋潮干狩 滿2
181 日本一の味とや三河の潮干狩り 姫3
201 片言の英語通じぬ蛙かな 浮游子3
207 枕上(ちんじょう)の揺らす障子の藤の花 享1
213 黙々と親子で競ふ潮干狩 祐3
217 夜蛙の恋に狂うてゐるやうな 滿3
219 幼子を連れて興じた潮干狩り 紅梅3
220 裸婦像をなづるそよ風夏隣 寛昭4
224 緑さす畜産センター牛の声 正則5
225 列車にも海の気配や潮干狩り 寒太郎4
229 苺食ぶ給食センター思ひ出し 順一5
(以上)
【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)
ちはる 32点 3句
昼顔 23点 2句
一路 18点 3句
ゐるす 14点 5句
一葉 14点 4句
隆司 14点 3句
ひろし 11点 5句
栄太郎 11点 4句
明寿 11点 3句
とも子 10点 3句
ひさを 9点 3句
青橙 9点 2句
(以上)
ご健吟の皆さん、おめでとうございます。
(今回の参加者47名)(順不同、敬称略)
永田満徳(講師),歌代美遙(講師)
青橙(たかはし)、石川順一、上野 梢楓、 江口秋子
夜亜舎(佐竹康志)、姫(三高邦子)、野島正則、貴田雄介、茂木ひさを
松原白士、祐(牧内登志雄)、とばやまちはる、本田しどみ、眉山ケイ、
熊谷房子、中村秋穂、寺嶋法子/杳杳、武藤隆司、森川雅美
塚本南海雄、江村享、今村とも子、小倉正人、長谷川ひろし
浮游子、滿/杉山満、小保方国秀(無弦奏)、藤澤迪夫(みちお)、いわきりかつじ、紅梅、辻井市郎(一路)、水越千里、桑本栄太郎、慢鱚、林宏尚(常住)、山下明寿、寒太郎(岩根泰彦)、美空 らら、岩永靜代(昼顔)、古閑寛昭、ゐるす、大津留 直、荒一葉、
亜仁子、北野和良
集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
集計につき疑義があればご連絡下さい。
また整理方法につきご意見があればご遠慮無くお知らせ下さい。
・またExcelシートはこちらに保管されています。(Excelが必要です)
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