第78回ネット会は、40名の参加となり、195句の投句を頂きました。

【講師選】
《永田萬徳》
【特選】
51 我が庭の山河につづく淑気かな   栄太郎3
※「淑気」は天地に満ちる清らかで厳かな感じで、めでたい気配が漂う新春らしい季語。山河というと、この掲句の場合は山や川が見渡せる広大な自然を思い浮かべる。そんな「山河」が「我が庭」とが庭続きであるところに「淑気」が感じられて、心引かれる。

【並選】
1 GPSルートをはずす恵方道   房子1
7 ガンダムとザクの間の鏡餅  明寿2
126 人力車に任すルートや初社 ひさを5
132 赤城山榛名山まで初御空  雅美1



《歌代美遙》
【特選】
58  鏡餅テレビの前に供へあり  杳杳4

※ 鏡餅、という季語がひかる。
昭和がまだ、作者の家には残っている。テレビが普及し皆んなが集まる部屋の、皆んなの目が注がれる一番心地よい場所にテレビが置かれていた。今もテレビは大切にされ、娯楽の中心にある存在が、家族の絆を深めテレビを中心に家族の平和の形がある。作者には平和の昭和が勲章のやうに生涯で輝いていた思い出が重なるのでしょう

【並選】
86  山茶花や庭の四隅を照らしたる    満徳2
133 洗はれて鏡餅置くトラクター     寛昭2
148 大根の洗ひ場となる橋の下    ひさを3
158 中吉を背伸びて結ぶ初御空    しどみ1

 

【互選三賞】

天賞  13点  1句)
133    洗はれて鏡餅置くトラクター      寛昭2
 * 一年間お世話になったトラクターに対する作者の感謝と愛情が滲み出ていると感じました(ちはる)
 * 大掃除が終わり正月を迎える準備が整いました。今年もありがとうとトラクターをいたわる気持ちが伝わる。(慢鱚)
 * 農家の様子がわかります。(常住)


地賞  9点  2句
7    ガンダムとザクの間の鏡餅     明寿2
 * ユーモラスだと思いました。単に片付けられなかっただけの事なのかもしれないのですが、鏡餅が映えていると思いました。(順一)
 *いい句ですね。総動員で筆者のことを守ってるんでしょうね。ただ、ガンダム達と書いてあるだけなのに、「鏡餅」と取り合わせることで、そんなことが見えてくる、勉強になりました。(青橙)
 * ガンダムとザクの措辞が目新しくハッとする。
写生が効いてお見事です。(満)
20    避難所へルートを探る雪の能登  和2
 * 時事俳句として秀逸。問題提起も。(姫)

人賞  8点  1句)
158    中吉を背伸びて結ぶ初御空    しどみ1
 * 「背伸びて」は子供でしょうか、ほのぼのとした景がくっきり浮かびます。「中吉」というほどほどの福も効いています。(雅美)
 * 中吉なれどなにか良いことが書いてあったのか
実現を願う心が中七に微笑ましい表現で現れている。
そんな明るい光景が季語の持つすがすがしさと響き合っている。(ひろし)


【入選句】

7点句  2句)
71    空爆も同じ地球や初御空   正則1
 * ウクライナ、ガザそれに加えて能登地震、今年の初御空はあまりにも切なくて。(南海雄)
79    好きなだけ持つて行つてと土大根  房子3

6点句  4句
14    それぞれの街に子ら去り鏡餅      一葉2
 * 子や孫が居なくなって改めて新年を寿ぐ老親です。(とも子)
 * 子供たちの声で賑わった三が日も終わってぽつんと取り残された鏡餅。鏡餅だけが目立つ静寂に、寂しさが募る。(裕)
47    園庭に泣きべそかいた雪だるま  祐3
 * 溶け始めた雪だるまを可愛く表現されていると思いました。(千里)
 * 園児達の力作ができる迄の様子が楽しく伝わる句ですね。(秋穂)
51    我が庭の山河につづく淑気かな  栄太郎3
 * 塀のない敷地であろうか、広大な大地の果てに雪嶺が見えてきた。 (隆司)
107    大根を抜けば地球が凹みさう   ゐるす3
 * 新年にふさわしい諧謔が良い。(直)

5点句  3句)
26    ぶらさげて腕より太き大根かな    滿5
 * 大根の太さ、腕と対比させているのが、いい。(正則)
68    鏡餅名のなき露地の祠にも   ちはる3
174    道場の青き畳や鏡餅     正人2

4点句  10句)
3    あの頃はテレビの上へ鏡餅     慢鱚1
 * 昔は大中小で10個以上のお供え餅をあちこちに上げたものでした。もちろん、テレビにも。。。(杳杳)
並選
18    ティンパニの大きさの庭冬苺     明寿4
 * ティンパニーを狭い庭の比喩として使う面白さがあります。(夜亜舎)
35    大根をぬきし大穴大地の香     南海雄2
44    右折して大根転ぶ音したり   明寿3
49    花鋏はずむ小庭の小春かな     迪夫4
 * はずむが特に良い(雄介)
61    初空やうだつの上がる旧商家     隆司1
 * うだつの上がる~また一つ勉強になりました。(しどみ)
97    七種や庭の草摘み刻みけり     杳杳3
 * 七種粥セットは、野菜売り場でも売っているが、自宅の庭にあるものだけで、一つ二つ足りなくても、無病息災を祈る「七種」という正月行事の風習を大切にする気持ちがうれしい。
下五で、強い切れ字「けり」を敢えて使って、詠み手の強い気持ちを表現しているのも潔い。(迪夫)
 * 「草」とあるが野菜も含まれるだろう。庭の野菜や草を自給して刻んで七草がゆを食べれるなんて何と倖せなことかる。(かつじ)
132    赤城山榛名山まで初御空       雅美1
 * 上州を代表する山々が一望できる初空は大きく清々しい。(ひさを)
148    大根の洗ひ場となる橋の下     ひさを3
179    年立つに能登地潸潸なゐふるふ    南海雄3
 * 難しい兼題を上手く入れて時勢を詠まれて、とても素晴らしいと思います。(一路)
 * 潸潸の意味を始めて知りました。能登地震の悲惨さが伝わります。(正人


3点句  11句)
37    まつさらな心となりて初御空      寛昭4
39    マンションの谷間に練馬大根畑    一路3
48    園庭の子らみな薄着春隣        一葉4
 * 季語が効いていて良いと思いました。(寛昭)
52    割り切れぬ√2双六ふりだしに      雅美5
 * 二句一章が成功した。(浮游子)
57    鏡餅くだいて揚げて神何処      寒太郎2
 * 鏡餅をちょっとコケにしている感じが面白い。(明寿)
58    鏡餅テレビの前に供えあり      杳杳4
63    鏡餅回転ドアーの真つ正面      房子4
75    古伊万里に女房面した煮大根      秋子3
153    大根の葉の青々と朝の市        祐2
157    探梅やルートはずれて獣道     一葉5

170    泥つきの大根包む新聞紙        千里1


2点句  21句)
1    GPSルートをはずす恵方道        房子1
8    ゴールへのルート似てきし老の春    とも子2
10    鏡餅柔肌白き越後の娘(コ)      和1
13    シナ海の風はおだやか大根干す    満徳5
 * 最近東シナ海を挟みいろいろきな臭い。しかし大根を干す今日の穏やかな日が続く事を願っている。(房子)
19    はつそらや三角連絡法「無事」    青橙1
 * 2024年の元旦は、夕方より正月気分を吹っ飛ばす巨大な能登半島地震の発災で始まった。巨大地震発生の時は家族、親族、知人、友人とは連絡が取れなくなるものである。誰しも心配の余り「先ず無事かどうか?」の消息が知りたいものであるが、その様な時にはリレー方式の「三角連絡報」を採れば、意外に早く「無事」の消息が知れるのである。破調の詠みに、緊急性が良く伝わる一句である。(栄太郎)
23    鏡餅小さくなれども婆の意気      とも子5
25    ひび割れもめでたき印鏡餅      雄介2
27    フルートの巧みな運指冬銀河      ゐるす5
53    寒月やルート246走る        白士2
 * 246には若い頃の東京の思い出がいっぱいあります。寒々とした都会の道を走り抜ける。冷たい都会の空気感やきらめく光、またどこか孤独な気分を思い出させてくれた一句です。(秋子)

65    さんさんと朝日の中でひめ始      白士5

66    さんさんと日差しを受けて冬すみれ 隆司5
 * 擬態語が良く効いて、季語が良く働き、いい雰囲気です。
分かりやすく、素敵な句と思います。(亜仁子)
70    空き地には素振りする子ら初御空    青橙4
86    山茶花や庭の四隅を照らしたる    満徳2
100    春近し庭の花の芽数えけり      白士1
126    人力車に任すルートや初社      ひさを5

128    水神へ近所それぞれ鏡餅       隆司2
136    太陽のさんさん光る寒日和     亜仁子5
145    初空や旅の終わりの家族写真     しどみ5
 * この「旅」は人生でしょうか。重さを感じます。(寒太郎)
166    庭園を真下に望む初日の出     浮游子4
 * 上空から園庭を見下ろしているという雄大さを感じる。(白士

178    年明けや人道ルート閉ざされて    千里3

194    橙の尻落着かぬ鏡餅          祐1


1点句  39句
11    さんさんと加護を浴びをり初御空    姫4
12    さんさんと降る雨戦禍果てしなく    雄介5
17    ふつふつとおどる米粒茹で大根    ひろし2
31    初空や家族五人が打ち揃い      雄介1
33    大根やオフショルダーの白き肌    一葉3

36    初空や千里向かふはウクライナ    常住1
40    さんさんと陽ざしの庭に梅探る    和4
41    ルート検索など要らず老の春      常住5
56    漁火のかすかに揺るる初御空      秋子4
60    初空やJALのマークを見送つて    滿1

69    銀翼の果つるは青き初御空      南海雄1
76    古都の路地小祠に小さき鏡餅      一路2
80    校庭に凧もつ子らのいる三日      青橙3
83    荒れてこそ亡父の庭の霜柱      寒太郎4
87    山眠る赤で書き込む難ルート      ひろし5

90    初空やルートを変えてウォーキング    杳杳1
103    初空の遠くに映る阿蘇の山      秋穂5
110    初空の爆弾止めよガザの街      夜亜舎1
111    初空へ舞ひ上がりたし姫路城     明寿1
116    初御空光芒すでに野に溢れ      ちはる1

119    初富士を借景にして甲斐の庭      雅美4
120    初夢やルート66走破せし        姫5
121    小流れで洗つてくれし土大根      房子5
134    掻き抱く赤子のごとく大根抜く    常住3
138    大なゐにルート寸断能登年始      南海雄5

139    大阿蘇を登るルートや初日影      直5
140    大根にも首という部のありにけり    慢鱚3
146    大根の甘さましをり寒に入る      栄太郎5
147    大根の生産者の名が明記され      順一3
152    大根の葉つぱ炒めが好物で      正則3

154    大根を昆布と煮たるのみにして    直3
156    誰にでも庭は開かれ実千両      隆司4
160    注連縄の門を潜れば里の庭      滿2
169    庭先の孫へと残す早生蜜柑      しどみ2
173    陶龍の視線の先や鏡餅        秋子1

181    半世紀狭庭に君臨冬の薔薇      姫1
185    復旧の阿蘇の楼門初御空        寛昭5
190    婿殿の里から届く鏡餅        しどみ4
192    踊る大根駅伝を盛上げる       かつじ4


(以上)

【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)

明寿     18点  4句
寛昭     17   3句
一葉     13   4句
房子     13   4句
しどみ    12   4句
和      12   3句
祐      11   3句
南海雄    10   4句
隆司   9   4句
ゐるす  8   2句
雅美   8   3句
正則   8   2句
杳杳   8   3句


(以上)

ご健吟の皆さん、おめでとうございます。

(今回の参加者40名)(順不同、敬称略)

永田満徳、歌代美遙、石川順一、姫、本田しどみ、野島正則
茂木ひさを、長谷川ひろし、寺嶋法子/杳杳、熊谷房子
慢鱚、江口秋子、青橙(たかはし)、祐(牧内登志雄)
中村秋穂、いわきりかつじ、今村とも子、とばやまちはる
小倉 正人、松原白士、佐竹康志(夜亜舎)、水越千里
塚本南海雄、森川雅美、山下明寿、荒一葉、浮游子
寒太郎(岩根泰彦)、桑本栄太郎、藤澤迪夫、貴田雄介
大津留 直、林宏尚(常住)、滿/杉山満、武藤隆司
古閑寛昭、亜仁子、ゐるす、辻井市郎(一路)、北野和良


集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
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