(Rev1) 特選句コメントを追加。

第77回ネット句会は、42名の参加となり、205句の投句を頂きました。

【講師選】
《永田萬徳》【特選】
95 子はゲーム親は金策年の暮  一路3
 ※「年の暮」ともなると、一年の締め括りで、「金策」も工面しなくてはならない。
掲句の面白さは「親」が生活のためにあれこれ気苦労しているのに、「子」は呑気に「ゲーム」に興じていることの対比である。現代の「年の暮」の特徴的な場面をいささか滑稽味を以って描いているところがいい。
【並選】
84 公園で脳トレゲーム冬うらら  秋穂2
129 青空に深き一礼蒲団干す   ちはる3
166 鍋底の焦げをこそげる師走かな  雅美1
183 板書消す女教師のカーデイガン  祐3


《歌代美遙》【特選】
186 板塀に漏るる三味の音冬椿 一路4
 ※今はブロック塀が、普通である。この句の板塀は、大和板塀を想像させる昭和の邸宅の瀟洒な風格のある静寂の中にある一軒から、三味線の音が漏れてくる。
季語の寒椿が、素晴らしい。凛とした気品と気高さが、三味線を弾いている人の姿まで想像してしまう。作者もふと、歩を止めてしまったのでしょう

【並選】
128 盛り立てる子ども食堂師走かな     直1
139 束の間の陽射し頼りに布団干す     ケイ3
142 誰も居ぬ部屋に「ただいま」敷布団    白士5
176 板チョコを囓る一人のクリスマス     千里4


【互選三賞】

天賞  該当句なし)

地賞  9点  3句)
52    海女小屋の褪せし板塀冬の波     ひろし4
 * 東北の厳しい冬の海が思われます。(正人)
 * 海辺の冬の情景が目に浮かびます。(秋穂)

53    蒲団干すやもめの父の几帳面     ゐるす2
 * やもめになっても、几帳面に布団を干す老齢の父上に対する憐憫と尊敬が滲み出ている。(直)
 * お母さまが亡くなりになり、一人暮らしのお父様でしょうか?冬の良い天気の日には、几帳面にも必ず蒲団を干しておられます。何となく哀愁の漂う几帳面さですね!!。(栄太郎)

183    板書消す女教師のカーデイガン    祐3
 * 生徒のいない寒々した教室で黒板の文字を一人で消す女性教師のカーデイガン姿がそこだけ温かく見える。寒暖の対比が成功している。(ひろし)


人賞  該当句なし)

【入選句】
6点句  5句)
5    お日様の匂ひが好きと布団干す    正則2
 * 作者の素直な気持ちがよく表れてて、すごく共感出来ました(ケイ)
 * ふわふわの布団にほほずりしたいような句ですね(しどみ)

11    晦日蕎麦板前さんは津軽弁      和1
 * 景が見える。旅吟の句か。(浮游子)
19    どどどんと板子一枚冬の海      祐2
 * 「板子一枚下は地獄」と言われた和船の航海、冬の日本海を思い浮かべました。オノマトペがとても良く効いていると思います。(一路)
 * 板子一枚の措辞に冬の海の臨場感が伝わってくる。(隆司)


35    挨拶の口より師走こぼれけり     寛昭3
 * 歌代美謡先生の句の影響を受けているのでしょうか?素晴らしいポエムですね。師走の慌ただしさも良く表現できています。断然特選に押します。(千里)
167    日だまりを母が仕立てる綿布団    梢楓2
 * 昔はこうして母が布団を仕立てたのであろう、冬の日の温もりが縫い込まれている。(ひさを)
 * ほのぼのとした感じがいいですね。(ゐるす)
 * 日溜まりを育てる>着眼がいいですね。蒲団に込めた母親の愛情が伝わる句です。(裕)

 

5点句  5句)
37    一人分だけの食事や喪の師走     正則1
39    一秒の指のためらひ子熊の狩     千里1
 * クマ被害が騒がれているが、流石に子熊を撃つには憐憫の情が漁師に湧いた心情を、ためらいひとした作者の観察眼がひかります。(紅梅)
58    帰郷せし子らの匂ひの蒲団干す    一葉2
76    冬日和ポストに刺さる回覧板     ゐるす4
 * 季語は冬日和であるが、どこか師走の忙しさも垣間見えます。良いお天気だし、こちらは忙しいし、ポストに回覧板を刺しておきましょうとご近所ならではの気安さも感じられます。(秋子)
168    日の匂ひ嗅ぎて取り込む干し布団    正人2
 * 日の匂ひ嗅ぎて…日の匂ひとしたのが詩的です。奥さんのあるあるです。(満)
 * 実感が出ていて良い句だと思います。(寛昭)

4点句  8句)
47    押入の其処だけ派手な客布団      秋子3
 * 年末の客のために新しい布団を出す、普段との差を視覚にしっかり捉えて、そのウキウキしたまた晴れがましい気持ちが伝わってくる。(寒太郎)
95    子はゲーム親は金策年の暮      一路3
100    ぱたぱたと風におでんの幟かな    直4
 * 昔であれば、おでんといえば赤提灯や暖簾だったかと思いますが、今はコンビニおでんも主流ではないかと思います。となれば、幟にも頷けますし、熱々のおでんも想像できます。おでんそのものを描いていませんが、寒い外の景色と想像させる熱々のおでんとの対比がお上手な一句だと思いました。(青橙)
104    ぱたぱたと命の軽さ戦禍冬      雄介4
121    振出しの人生ゲーム年惜しむ      慢鱚3

166    鍋底の焦げをこそげる師走かな    雅美1
179    布団着てガザの子らみな寝ねまほし南海雄1
 * 人質解放時の報道で戦地で は二人でハム一切れ 水は二人で一本と報じられてました。夜になると冷え込む地なので子等の状況も推して知るべしです。(ちはる)
 * 優しさが伝わってきます。(姫)
一日もはやい収束を祈るばかりです。私達は本当に有り難く感謝です。
186    板塀に漏るる三味の音冬椿      一路4


3点句  21句)
2    アドレスの一人また消す師走かな    一葉1
 * 喪中はがきが来て 又は 距離を置くため実感がある(らら)
27    フィッシング詐欺に会ふのも師走かな    ひさを1
 * 詐欺に遭うことを会うとして擬人化した所に思わず吹き出しました。(雄介)
29    ふわふわの真白き布団赤子待つ    秋穂5
 * 初めて生れる赤ちゃんなのだろう。嬉しくて「ふわふわの真白き布団」を用意して待っている気持があふれている。「白」と「赤」の対比も鮮やか。(かつじ)
50    花柄の嫁入り布団母恋し        しどみ1
65    金婚に嫁入り布団出しにけり     寛昭4
 * おめでとうございます。50年も布団があるとは凄いですね。そこそこ古い大きな家を想像しました。(慢鱚)

66    金残る板絵曼荼羅冬温し       雅美4
84    公園で脳トレゲーム冬うらら     秋穂2
86    骨と皮安眠できぬ熊の居て      らら2
 * 地球沸騰化の影響でしょうか、自然環境の崩壊を実感します。(南海雄)
88    山と積む薪の匂へる宮師走      ちはる2
129    青空に深き一礼蒲団干す       ちはる3

130    折りたたむ母の両膝掛け布団     明寿2
131    雪虫や人生ゲーム終活に       正則5
138    贈呈の一冊混じる師走かな      慢鱚2
 * ダンシャリアンの自分も迷って断捨離できない「贈呈」の本があります。また、逆に古本を買うとサイン本だったことも。(杳杳)
139    束の間の陽射し頼りに布団干す    ケイ3
142    誰も居ぬ部屋に「ただいま」敷布団    白士5

144    置き配も回覧板も冬の蝶       青橙3
 * 冬の蝶に孤独な雰囲気がよく仮託されてます。(夜亜舎)
159    熊除けの鈴を鳴らして測量士     房子1
 * 測量士の仕事らしさを感じた。(正則)
160    熊除けの鈴鳴る列やランドセル    一葉3
176    板チョコを囓る一人のクリスマス    千里4
198    流し目に誘ふゲームや雪女      直5
 * こんなゲームをしてみたいな(梢楓)

205    ほんのりと君の残り香布団干す    和5
 * 艶っぽい句ですね。(白士)

2点句  21句)
3    ウインクの通じぬ熊の目玉かな     浮游子3
15    シルバーの集ふ熊手の落ち葉掻き    ケイ4
28    ふかふかと母は布団を打ち直す    梢楓3
30    ベランダに色取り取りの客布団    しどみ3
34    やせ熊の食足らざれば眠られず    栄太郎1

57    寄付箱の小銭の跳ねる音師走      千里3
62    極月の喪中ハガキの薄さかな      ゐるす1
 * 薄さかなに、気持ちが込められてい
ます(常住)
67    空を仰ぎ布団叩くやわれは主夫    満徳1
71    まう客布団の身分になる実家      秋子4
 * まう客布団の身分になる実家かな親子の思いの交差する一句(房子)

81    玄関に宿屋の名残り布団干す      寛昭5
 * かつて宿屋であった玄関の雰囲気と布団が合っていると思います。(明寿)

87    妻に沿い今日も明日も蒲団干す    雄介2
94    四年間敷きつぱなしの布団かな    滿2
 * 煎餅布団と言うか、何となく部屋の状況を空想してくすっとしてしまいました。(順一)
112    熊の糞見つけ踵を返しけり      隆司3
113    板長の氷見の訛りや寒の鰤      一葉4
118    修理屋のよく通る声師走の日      梢楓1

128    盛り立てる子ども食堂師走かな    直1
145    着膨れて数独ゲームは阿片かな    姫5
146    長火鉢灰へ筋書く師走かな      ひろし1
192    沸騰化すすむ地球にまどふ熊      南海雄3
193    物事の一つ一つに師走過ぐ      寛昭2
 * 「一つ一つ」が良いです。過ぎていく時間と会った人たちを思う気持ちが滲みます。出そうでなかなか出ない句です。(雅美)

197    陽の香り帰郷の部屋の干布団      ひろし2
 * 子の帰郷を待ちわびる親の情が温かい(一葉)

1点句  43句)
1    「たいせつ」とルビ振る店の掲示板 ケイ2
10    ゲーム機を知らぬ少年福笑       らら5
16    スキー終へぱたぱた笑ふ半月板   慢鱚5
17    すきにしやがれ俎板の寒鰈        かつじ4
24    ぱたぱたとスリッパの子や冬うらら 満徳4

25    ぱたぱたと走る子供や雪の宿       房子5
32    ベランダの父の見下ろす師走街     秋子1
41    ぱたぱたと叩きふるつて煤払       和4
45    パタパタと回廊を来て納め護摩     姫2
48    温蒲団手足はみだす猫の伸び       寒太郎2

54    寒風にぱたぱた鳴りぬトタン屋根     栄太郎5
64    極月や未来予告の回覧板         滿5
68    熊の駆除里には里の暮らしあり   正則3
69    熊の足正しき道を歩きけり       亜仁子3
70    ぱたぱたと旗のあふるる街師走     隆司5

72    ぱたぱたと御煤払ひや御影堂       南海雄4
73    パタパタと秋田青森鰤起し       夜亜舎1
80    減便の市バス師走の停留所       青橙1
82    古希近し一人暮らしの初師走       しどみ2
85    行き交ひて街よどみ無く師走空     栄太郎3

99    ぱたぱたと布団を叩き邪気払ふ     ひさを2
103    板の間や七福神の脇に聖樹       千里5
106    師走入り第九合唱一万人         杳杳3
107    師走来るブーツの似合う托鉢僧   しどみ5
116    手作りのゴミ箱貰い師走かな       順一1

120    初場所の幟ぱたぱた触れ太鼓       正人5
122    深山の熊が爪研ぐ千代の杉       ひろし3
124    人里に熊も現る師走かな         紅梅3
126    成都基地熊猫二百頭大団円       姫3
127    晴れマーク待つて老母の布団干す     常住2

133    潜り込みしばし乱れる薄布団       慢鱚1
135    熊除けの鈴を欠かせぬ夜道かな     直3
149    庭先に読み取りむずき布団地図     秋穂4
151    天国や布団の中のわが居場所       直2
156    土手を履く熊手の先に虫の穴       白士3

164    独楽一つ廻さぬ子らのゲームかな    雄介5
169    日向ぼこ孫に教わりゲームする    秋穂3
170    入山に叩く熊除け一斗缶        房子1
177    板の間を開けて引き出す蝮酒      隆司4
181    板わさの紅白を買ふ師走かな      ひさを4

182    板金の音の忙しき師走かな      祐5
189    部次長の貧乏揺すり師走かな      秋子5
190    風と陽の相互ゲームや冬の音      亜仁子5

(以上)

【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)

ゐるす    16  3句
祐   16  3句
正則     15  4句
ひろし    14  4句
一葉     13  4句
寛昭     13  4句

千里     11  4句
直      11  4句
和      10  3句
梢楓     10  3句


(以上)

ご健吟の皆さん、おめでとうございます。

(今回の参加者42名)(順不同、敬称略)

永田満徳(講師選)、歌代美遙(講師選)

紅梅、佐竹康志(俳号 夜亜舎)、石川順一、野島正則、
長谷川ひろし、辻井市郎(一路)、江口秋子、慢鱚、

とばやまちはる、寺嶋法子/杳杳、中村秋穂、祐(牧内登志雄)、桑本栄太郎、いわきりかつじ、姫、茂木ひさを、
寒太郎(岩根泰彦)、本田しどみ、
小倉正人、、上野梢楓、眉山ケイ、浮游子、美空らら、
武藤隆司、森川雅美、塚本南海雄、熊谷房子、水越千里、
滿/杉山満、荒一葉、亜仁子、貴田雄介、山下明寿、
松原白士、林宏尚(常住)、古閑寛昭、大津留 直、ゐるす
青橙(たかはし)、北野和良、

集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
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