第75回ネット句会は、40名の参加となり、190句の投句を頂きました。
(Rev1)兼題外の選句を訂正。143⇒42、183⇒47
【講師選】
《永田萬徳》
【特選】
53 粟の穂の縄文の空知りをりぬ 隆司3
※「粟」は縄文時代から栽培されていて、日本最古の穀物。「粟」は稲が伝来する弥生時代の前の主食だったという。
従って、「粟」が縄文時代にさかんに作られ、「粟」が主食として大事にされたであろうことは充分に想像ができる。そう思うとき、「縄文の空知りをりぬ」という表現は「粟」と「縄文」との密接な関係をうまく捉えている。
【並選】4句
【並選】4句
17 たぷたぷと注ぎて廻しぬ濁り酒 慢鱚4
26 稲刈や家族五人で塩むすび 秋穂2
40 ひと言にひと言あとは星月夜 一葉2
170 本棚にテキストを足す夜学かな 杳杳2
《歌代美遙》
【特選】
34 稲刈や棚田は今も村総出 直1
※ 棚田は、土地の少ない山間の暮らしの中で、昔から工夫をして田んぼ作ってきました。
今は、農業から遠ざかった家もあるでしょう。都会で暮らす息子たちと、暮らすため村を離れる人もいるでしょう。棚田へ水を満たすことも重労働が伴います。
どんどん里の美しさが失われていきます。村総出で、守る棚田がいいですね
【並選】
41 煌めきの神話の世界星月夜 和4
42 フィナーレはトンネル抜けて星月夜 秋穂5
111 子供らの背伸びしている葡萄棚 かつじ4
190 星月夜連山の襞深くして けい女1
《特別選者 星野 愛》
【特選】
167 歩きませんかなどと云ひをり星月夜 栄太郎2
※切り出すにはちょっと勇気がいる一言であるが、星月夜には意外とサラリと言うことができたのかもしれない。「などと」と言うところに、思い返したときの恥じらいと気遣いが感じられる。
星月夜らしい優しい時間だったのではないだろうか。
【並選】
40 ひと言にひと言あとは星月夜 一葉2
47 たぷたぷと乳を飲む児や天高し 常住4
90 スクリーンのいかさま優し秋の風 夜亜舎3
120 秋昼やかけ声なしの棚卸 浮游子4
【互選三賞】
(天賞 12点 1句)
40 ひと言にひと言あとは星月夜 一葉2
*長年連れ添った夫婦でしょうか、「ひと言にひと言」が説明でなく親密な関係を表しています。長い時間を感じさせる季語も的確です。(雅美)
*「ひと言」のリフレインだけですべての景が見えてくる表現の秀逸さ。あとは星月夜に任せましょう・・・(仔仔旦)
*その時の星月夜の素晴らしさが感じられます。(杳杳)
(地賞 該当なし)
(人賞 7点 3句)
53 粟の穂の縄文の空知りをりぬ 隆司3
粟粒に込められた、時空を超えるスケールの大きさ。(姫)
167 歩きませんかなどと云ひをり星月夜 栄太郎2
187 頷くも言葉の一つ栗を剥く 一葉3
*実家に帰り、親の話のいろいろな話を聞きながら一緒に栗剥きしている感じ。(夜亜舎)
*ひたすら栗を剥くことに集中している様が見えます。(明寿)
【入選句】
(6点句 2句)
11 粟の穂や峠越えれば甲斐の国 和1
*甲斐の国は、山間地が多く粟稗キビなどが多かったらしい。そんな歴史も感じさせられる。(けい女)
89 スクリーンに沸くどよめきや秋競馬 南海雄5
(5点句 8句)
26 稲刈や家族五人で塩むすび 秋穂2
39 ひと臼は父の言い張る粟の餅 とも子3
*餅米を収穫して毎年恒例の餅搗きの一日、今年も一臼は粟にしてくれと言う老いた父。粟を搗きつつ父の来し方を思い浮かべる息子の優しさがいい。(裕)
50 ゆるゆると進む衛星星月夜 ひろし1
*季語『星月夜」が際立つ。このゆったりと空を見上げる感覚が素敵な句です。(青橙)
*いっぱいの星の中にゆっくりと動く星。それは衛星なのですね。
ずっと見上げていたい。そんな気持ちになりました。(秋子)
57 スクリーンの大きな顔に秋の蠅 雅美5
*映画のスクリーンの役者の顔に小さな蠅。秋の蠅であるので
どこか動作も鈍くなかなか動かないので目障りだし邪魔くさい。(ひろし)
97 戸棚にはドロップの缶ちちろ鳴く 慢鱚3
*昭和そのままが感銘深く感じました。(秋穂)
110 残る蚊を叩いて終る棚卸 明寿4
*兼題を上手く入れて淡々と詠まれた素晴らしい卸句だと思います。(一路)
111 子供らの背伸びしている葡萄棚 かつじ4
165 肥後平野端より稲を刈りすすむ 満徳2
*景の大きな句。広大な肥後平野の稲刈もまづは一田から。(ひさを)
(4点句 8句)
12 たぷたぷとバケツ踊れば鯊日和 夜亜舎1
*「たぷたぷ」がとても効いていて、はぜ釣りを楽しんでいる様子が伝わってきます。(とも子)
14 星月夜街に魔法がかけられた 秋子3
*中七の街に魔法…この詩的措辞は見事です。作者が星月夜をみて実感したことの表現に共感です。(満)
25 稲刈やつぼに届かぬ按摩椅子 慢鱚2
34 稲刈や棚田は今も村総出 直1
48 マヌカンの乳首妖しき星月夜 祐3
*照明の落とされたショーウィンドウに立つ裸体のマネキンが星月夜の仄あかりに黒光りする艶めかしさ。(南海雄)
71 稲舟や束に隠れて読む手紙 浮游子1
182 立呑の丸き背中や星月夜 一路2
*「立呑」を「角打ち」と読み替えての特選。この季語が上五中七の男の哀愁を支える。(浮游子)
190 星月夜連山の襞深くして けい女1
(3点句 11句)
1 ウクレレのはたと止まりて星月夜 仔仔旦2
*星があまりにの綺麗でウクレレを止めてしまったのでしょうか~さりげない情景が癒されます。(しどみ)
8 稲刈りのロディオの如きコンバイン 夜亜舎4
20 たぷたぷと揺るるお腹や豊の秋 隆司5
32 稲刈や軽トラにはもみじマーク 常住1
*高齢化が進み農家を継ぐ人も減少している状況が詠みとれます(ちはる)
41 煌めきの神話の世界星月夜 和4
96 軒下に秋の色あり薪の棚 ひろし3
*冬を迎える山小屋が浮かびます。 (正人)
98 口喧嘩しつつ夫婦で稲を刈る ゐるす1
*何処でもありそうな、喧嘩するほど仲が良い。(かつじ)
101 高千穂の風音軽し粟畑 一路3
*風景だけでなく粟の香りまでしてくる御句です。(千里)
113 実り具合噛んで確かめ稲を刈る ちはる1
*「噛んで」という一語のリアリティが断然、生きていて、脱帽です。(直)
120 秋昼やかけ声なしの棚卸 浮游子4
170 本棚にテキストを足す夜学かな 杳杳2
(2点句 26句)
7 スクリーンに映るわが家や秋の虹 直5
*たぶん片付け物をしていたら古い8㎜映写機でも出てきたのでしょう。
まだ小さかった子供たちの様子が映っているのでしょうね。(慢鱚)
9 稲刈りやオーナー気分の都会っ子 姫3
17 たぷたぷと注ぎて廻しぬ濁り酒 慢鱚4
23 稲刈りのBGMはK-POP 祐1
37 ニライカナイ海に空継ぐ星月夜 けい女3
58 粟の粒つつくインコは手もつつく 千里5
62 稲刈は今も手刈りの千枚田 ひさを1
*山の斜面を利用の上耕作される千枚田は、今でも高くて狭いままであり機械は入らず手刈のみの稲刈ですね?従って稲作がつづけば棚田の風情も残ります。(栄太郎)
66 稲刈やいずれ無人のコンバイン しどみ3
*稲刈りの終わりだけでなく、やがて耕作しなくなることも思われ、そこはかとない淋しさを感じます(寒太郎)
74 音総て湖に吸はるる星月夜 ちはる3
77 刈り終えた稲の香残る一本道 しどみ5
78 閑さの戻る棚田や曼珠沙華 正人5
90 スクリーンのいかさま優し秋の風 夜亜舎3
94 栗を剥く八十路の指の堅い節 梢楓2
122 終電の棚の皇帝ダリアかな 雅美3
142 爽やかやたぷたぷ寄せる水の色 杳杳4
*たぷたぷ寄せる水の色」という基底部は、
擬態語がよく効いて、いい雰囲気です。この基底部と季語の取り合わせが良く、季語も良く働くと思います。(亜仁子)
149 棚田早や刈田に風の吹くばかり 栄太郎4
153 鎮守の杜ひとつ残して稲を刈る 隆司1
*大きな景が浮かびます。(常住)
158 登り来てUHOを待つ星月夜 ひさを2
*面白い発想で気になりました。(寛昭)
159 冬瓜の採りごろなるやたわむ棚 南海雄2
161 透きとおるグラスに新酒たぷたぷと 杳杳5
164 肌寒しスクリーン背にそつと去る 慢鱚5
181 揺れるたび夕日濃くなる萱の棚 梢楓4
*情景が良く見える作りが上手い。自然の中で物と物が呼応し合っている姿が見事に描かれている。(隆司)
186 舫い船たぷたぷ揺るる望の潮 ひさを5
188 星月夜独り占めしてヨガポーズ 秋穂4
*明るい庭に出てなんか踊りたくなるような感じを詠んでいる(梢楓)
(1点句 42句)
4 シャキシャキと鎌の刄音や稲を刈る 寛昭1
13 たぷたぷと染める手拭秋日和 ひろし5
16 星月夜子の生まるるを待ちにけり 常住2
21 ああ昭和木の実時雨のスクリーン 和2
27 稲刈や風の俳句を詠みながら 亜仁子1
29 たぷたぷのクリームシチュー秋気澄む 滿4
31 たぷたぷと樽より注ぐ濁り酒 和3
33 稲刈や赤児も参加昭和かな 秋穂1
35 たぷと打ち秋冷の湯のたぷと寄る 寒太郎2
46 ベランダに黙す二人や星月夜 浮游子2
52 粟の穂の小径の先よ母の里 かつじ3
60 稲を刈る黄色き海をばりばりと 梢楓3
63 星月夜あの古傷に触れてみむ 姫2
64 星月夜さびたギターの弦の音 夜亜舎2
67 稲刈や豊穣の香に励まされ とも子1
70 稲刈を終へてたぷたぷ露天風呂 一路1
72 遠吠えの連鎖の犬や星月夜 千里2
73 音楽祭帰り道には星月夜 杳杳3
79 機関車の棚びく煙虫送 千里3
80 帰燕舞ふ空は真紅のスクリーン 一路5
83 泣き止まぬ稚にしばらく星月夜 とも子2
84 金髪と紫の髪稲を刈る 明寿3
93 栗めしの御飯を残す子供かな 正人4
100 行く秋や触る二の腕たぷたぷと 正人2
102 星月夜出窓で母と見上げおり 桂子3
107 山峡のぽつんと宿や星月夜 寛昭2
112 糸巻に木の温もりよ星月夜 慢鱚1
128 寝袋をはみ出す吾と星月夜 隆司2
131 神棚は祀り直して神無月 青橙2
132 神棚へ献上せしむ稲穂かな 滿5
141 川棚へ湯はあとにして新蕎麦へ 青橙1
144 送られてもう家のまへ星月夜 秋子2
147 濁世にも恋の綾あり星月夜 祐5
154 庭に出て踊りたくなる星月夜 梢楓1
155 田の隅は婆の仕事や稲を刈る 栄太郎1
156 送られて帰りたくない星月夜 秋子5
163 縄文の主食や今は粟おこし ひさを3
168 補聴器の母を照らすや星月夜 ゐるす2
170 本棚にテキストを足す夜学かな 杳杳2
172 本棚に手擦れの季寄せ子規忌かな 一葉5
174 本棚の上に檸檬のふたつみつ ゐるす3
177 網棚のディズニーランド秋夕焼 明寿5
(以上)
【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)
一葉 20点 3句
慢鱚 14点 5句
隆司 13点 4句
和 11点 4句
栄太郎 10点 3句
夜亜舎 10点 4句
ひろし 9点 2句
一路 9点 4句
南海雄 8点 2句
秋穂 8点 3句
浮游子 8点 3句
杳杳1 8点 4句
とも子 7点 3句
ひさを 7点 4句
雅美 7点 2句
明寿 7点 3句
祐 7点 3句
(以上)
ご健吟の皆さん、おめでとうございます。
(今回の参加者40名)(順不同、敬称略)
永田満徳(講師選)、歌代美遙(講師選)、星野 愛(特別選者)
小倉正人青橙(たかはし)寺嶋法子/杳杳、佐竹康志(夜亜舎)
三高邦子(姫)、祐(牧内登志雄)、上野 梢楓、塚本南海雄
中村秋穂、桑本栄太郎浮游子、今村とも子、江口好孝(仔仔旦)
武藤隆司、石倉 啓子(けい女)、山下明寿、長谷川ひろし
とばやまちはる、本田しどみ、荒一葉、江口秋子、森川雅美
大津留 直、岩根泰彦(寒太郎)、ゐるす、林宏尚(常住)
辻井市郎(一路)水越千里、慢鱚、茂木ひさを、いわきりかつじ、
亜仁子、古閑寛昭滿/杉山満、石川順一、三浦桂子、北野和良
集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
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