Rev1 講師評を一部訂正(9/17)
第62回ネット句会は、34名の参加となり、170句の投句を頂きました。
【講師選】
《永田満徳》
【特選】
130 青空に誘はるるまま八朔祭 梢楓5
※「八朔祭」は旧暦の8月1日に行われているお祭りで、新暦では9月上旬に五穀豊穣を祈り祈願する行事。
掲句は、暑さもようやく安らぎ、風も涼しさを感じられ、「青空」が広がり、戸外に足を運んでみたくなる「八朔祭」の頃の「青空」をよく捉えていている。「「八朔祭」のような祭りであれば、なおさら、晴れ渡った青空に「誘はるるまま」に見物にでも出かけようと思う気持ちは共感できる。
原句は「青空に誘われるまま八朔祭」
【並選】
22 ひも靴に合はすファッション秋日和 とも子5
25 ゆで栗や夜はぽつぽつと更けてゆく とも子1
29 一人二人句友も増えて獺祭忌 孝輔5
71 びしびしと添削さるる子規忌かな 慢鱚5
《歌代美遥》
【特選】
17 一言も過去には触れず栗おこわ ちはる5
※過去には触れずの、措辞に二人の関係が見えてきます。幼い頃からの歴史ある友情の絆が、思いやりという、宝で結ばれているのですね。誰にも心には傷もあるし人生にも、つまづきがありますね。その時は二人の共通の栗おこわだけが、心情を分かち合いますね
酒でもなく、豪華なレストランでもなく栗おこわという、手間のかかる素朴な栗を炊いたご飯がよかったです
原句は「一言も過去には触れづ栗おこわ」
【並選】
38 猿除けの響く里山虚栗 ひろし5
86 言ひ訳の二転三転獺祭忌 昼顔2
129 上靴と一緒に入るる盆の月 浮游子4
167 毬栗や触れれば尖る反抗期 昼顔5
【互選三賞】
(天賞) 該当なし
(地賞) 該当なし
(人賞 9点 1句)
17 ひと言も過去には触れづ栗おこわ ちはる5
*夫婦間の優しさ思いやりを感じる(しどみ)
【入選句】
(7点句 3句)
8 サルビアや退職の朝靴磨く 正人3
*退職の朝のこもごもとした感慨がサルビアによって見事に映し出されていると思います。(秋子)
*この靴も明日からはスニーカーに変わるだろう。玄関先に咲くサルビアの色に詠み手の淡々とした心情が滲んでいる。(浮游子)
25 ゆで栗や夜はぽつぽつと更けてゆく とも子1
*旬の栗を茹でて、さて秋の夜長を何してすごそうか~。ぽつぽつというオノマトペが、栗の形容のようでもあり、ゆで栗の皮を剥きながら、静かに更けていく秋の夜とよく響いていると思います。(昼顔)
109 児の数の靴の干さるる秋日和 昼顔3
*秋の風景が浮かんできます。(秋穂)
(6点句 2句)
1 Wi -Fiの圏外にゐて栗拾ふ ゐるす3
*現代生活の一側面をうまく切り取っている。スマホの呼び出しが鳴らないところでの栗拾いが、心を和ませる。 (直)
*「Wi -Fi」と「栗拾ふ」の組み合わせは、今まで見たことがなく新鮮です。栗林は確かに「Wi -Fiの圏外」かもしれません。「にゐて」が少し惜しいかも。(雅美)
167 毬栗や触れれば尖る反抗期 昼顔5
*比喩が効いています。(寛昭)
(5点句 3句)
34 芋嵐びしびし五百羅漢打つ 隆司5
101 糸瓜忌や蓋ゆるめたるインク壷 明寿2
124 小鳥来る村に唯一(ゆいつ)のスタンドバア ちはる4
*バアが、小鳥の止まり木と飲む場所と二つの意味になっていて面白い句だと思いました。(千里)
(4点句 5句)
4 いさかいはしばし休戦栗ご飯 一葉2
*栗ご飯が出てくると他の事は全て忘れて、一年ぶりのほくほく感を楽しむひと時です。そんな栗ご飯の存在感を素直に表現して良いです。(ひろし)
20 市電にも投句箱あり伊予子規忌 和2
*愛媛県松山市は俳句が盛んなようですが、市電にも俳句の投句箱があるという実景でしょうが、まだ行ったことのない土地ですがとてもよく景が浮かびました。(慢鱚)
38 猿除けの響く里山虚栗 ひろし5
57 帰省子の靴の集まる三和土かな ひろし1
* 夏のお盆に各地に散った子供たちが帰ってくる。賑やかな喜びが「靴の集まる」によく現れており、さらに「三和土」に帰省の臨場感を感じます。(裕)
61 襟立てて焼栗を買ふシヤンゼリゼ 秋子4
*マロン好きのパリジャン、パリジェンヌたちが気取ったいでたちで栗を買う様子が目に浮かびます。(山悠)
(3点句 9句)
45 栗林抜けて道路の柔らかき えのこ1
*実際の道路は固かったのだと思いますが栗林の落ちた栗などを踏んで来たので柔らかく感じたという実感が出ていると思います。(明寿)
54 八朔や胸より高く結ぶ帯 亜仁子1
59 休暇明靴紐ぎゆつと締め直す 滿2
76 靴音の消ゆる公園虫時雨 正則4
85 肩書の消えたる名刺虚栗 浮游子3
*役職から平になったのか、リタイアかいずれにせよ、季語と合っていると思います。(正人)
117 八朔や村に配れる小豆飯 直1
*ものだけで表現した八朔が、しみじみと生きている。(隆司)
130 青空に誘われるまま八朔祭 梢楓5
138 朝食はミルクスタンド秋近し 正人5
143 泥靴や補欠のままに夏の果 一葉4
(2点句 38句)
13 スタンドバージャズを楽しみ秋夜長 秋穂2
*秋の深まりと共に爽やかな季節ともなれば、スポーツに、芸術に、食欲の秋などとなり、何を行っても楽しいものです。夜ともなればスタンドバーの止まり木に取り付き、ジャズを聴きながら一杯飲み過ごす事も大人の楽しみです。(栄太郎)
21 栗拾い皮むきまでは父の役 杳杳3
22 ひも靴に合はすファッション秋日和 とも子5
26 リヤカーのコーヒースタンド法師蝉 一葉5
27 悪運を背負ってばかり栗ひろう 梢楓4
*情景を表す言葉が無いのに情景が目に浮かびます(とも子)
29 一人二人句友も増えて獺祭忌 孝輔5
35 運動会親子三代靴揃へ ケイ4
44 八朔や地蔵の指の先の露 秋子5
*細かい描写、取り合わせがいいと思いました。(ゐるす)
47 八朔や鍋の小豆のぐつぐつと 寛昭4
*古く農家で,新穀の贈答や豊作祈願をしたという、陰暦八月朔日。小豆も季語であるが、この場合日本らしい収穫を祝う縁起の良い感じがします(正則)
48 子規の忌の古墳小高き上野かな 雅美2
*「子規の忌」と「小高い古墳」が引っ掛かった。古墳は上野公園内の摺鉢山古墳の事。上野公園へ赴いた経験あるが、標高低く「古墳?」と気が付かず通りすぎてしまう場所。上野は子規の思い出の街で、着眼点が素晴らしい。辛口意見述べたが、秀逸な作品。(茂)
49 柿食へばひと日昏るるや獺祭忌 秋子2
62 靴にしかと状況証拠盗人(ぬすっと)萩 ちはる3
*俳句で四文字熟語を詠むことは難しいと思いますけど、この場合は季語と良く響いていて面白いと思います。(一路)
66 靴の色変われば秋の香り来る 杳杳5
71 びしびしと添削さるる子規忌かな 慢鱚5
78 栗の香や夫が茶碗を出しにけり えのこ3
81 建付けの悪き雨戸や獺祭忌 隆司2
82 八朔や腹帯巻きて里帰り 一路1
86 言ひ訳の二転三転獺祭忌 昼顔2
91 秋の喪やおろしたての靴履かぬやう 満徳4
99 子規知らぬ俳句ブームや獺祭忌 一路2
106 栗の毬踏みて重たき登山靴 明寿5
108 糸瓜忌や小さき庭の小さき空 祐2
114 秋めくや伊勢丹で靴買ふ予定 えのこ4
119 秋めくや何処へ行こうか靴を買ひ 山悠4
121 秋澄むや路地に吸はるる靴の音 隆司4
125 焼栗の最後の一つ残す姉 智子1
129 上靴と一緒に入るる盆の月 浮游子4
131 青春の「スタンド・バイ・ミー」身に入むや 正則5
*映画も歌もととも印象に残っています。この句で当時の事が走馬灯のように甦って来ました? 身に染みます。(ちはる)
135 太腿に栗の揺れたる下校かな 明寿3
*太腿にで、半ズボンの児童が見える。下校途中の道沿いの栗の一枝を折ってぶらぶらさげて戻る景が(満)
137 朝顔の種こぼれ落つ子規忌かな 山悠2
*繊細な感覚と生命感をみずみずしく感じました。(えのこ)
140 朝霧やびしびし叩く馬の尻 滿3
145 二畳ほどで足るる生活(くらし)や獺祭忌 ちはる1
154 分け入りて山栗拾う獣道 しどみ5
155 夜の秋やスタンドバーの忍び声 茂3
*晩夏の季語ではありますが、秋の近づいてる様子と中七下五の取り合わせが良いなと思いました。(ケイ)
158 落ち栗やスタンド立てる中学生 滿4
*自転車と書いてないが自転車が見える(杳杳)
165 列島をびしびし叩く野分かな 直5
166 露草やGSスタンド退きし跡 とも子4
*情景が見えます(梢楓)
168 毬栗を長靴で剥く山育ち 一路3
(1点句 34句)
2 あらためて句集開きぬ子規忌かな 滿5
3 いがぐりのにつと微笑むチラシかな 栄太郎4
10 丹波栗大和心を内に秘め 和1
14 ハイヒールの赤は履けない蓼の花 梢楓1
24 マティーニに酔ひしスタンド秋の夢 昼顔4
28 伊予絣眺むる事も子規忌かな 正則2
30 笑栗や毬を飛び出す三姉妹 和3
31 八朔の賑わひ戻る棚田かな 正人1
33 八朔やパンチパーマの薬剤師 ゐるす1
36 駅中のミルクスタンド秋の朝 山悠5
37 演壇のスタンドマイク震災忌 雅美5
56 甘栗の皮割る爪の汚れかな 千里4
58 休暇果つ転校生の名は栗田 ケイ3
65 八朔や焼きたてのパン並びゆく 明寿1
67 びしびしと窓を打ち訪ふ野分かな 満徳5
74 びしびしと風紀指導や新学期 栄太郎5
75 靴屋にて古靴捨てる野分かな 杳杳2
77 栗ごはん家庭科の女子羨まし ケイ2
80 君がため一つ購ふ屋台栗 祐5
84 八朔や凛々しき眉のニユーフエイス 秋子1
89 山栗の森に獣の気配せり 隆司3
103 栗飯や抽選となる試食会 ケイ1
107 栗ひろう強運の影踏んでいる 梢楓3
111 手鏡に見えぬ世尋ぬ子規忌かな 昼顔1
115 びしびしと決まるパットや秋高し 正人4
116 八朔や山の斜面に牛五頭 満徳1
122 秋冷や磨き上げたる靴を履く 直4
123 秋麗靴がぽつんと駐車場 慢鱚2
127 笑栗のケースに置かれクリニック 寛昭2
134 草むらのカメラスタンド虫時雨 えのこ5
146 八朔の雲の奔りて止めやら 栄太郎1
147 八朔の家庭菜園サラダかな 正則1
153 父の忌と並びて記す子規忌かな ケイ5
170 縷紅草靴に重ねるラブレター 千里1
【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)
ちはる 18点 4句
昼顔 17点 5句
正人 12点 4句
とも子 11点 3句
明寿 10点 4句
隆司 10点 4句
一葉 9点 3句
秋子 9点 4句
えのこ 8点 4句
ひろし 8点 2句
滿 8点 4句
ゐるす 7点 2句
梢楓 7点 4句
正則 7点 4句
ケイ 6点 5句
一路 6点 3句
直 6点 3句
和 6点 3句
(以上)
ご健吟の皆さん、おめでとうございます。
(今回の参加者34名)(順不同、敬称略)
永田満徳、上野 梢楓、高宗孝輔、江口秋子、祐(牧内登志雄)
長谷川ひろし、塚本南海雄/山悠、本田しどみ、中村秋穂
えのこ、山下明寿、寺嶋法子/杳杳、小倉正人(正人)、
とばやまちはる、辻井市郎(一路)、野島正則、岩井茂
眉山ケイ、浮游子、武藤隆司、今村とも子、滿/杉山満、
桑本栄太郎、大津留 直、岩永靜代(昼顔)、森川雅美、
荒 一葉、水越千里、慢鱚、ゐるす、古賀寛昭、亜仁子
上山智子、北野和良
集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
集計につき疑義があればご連絡下さい。
また整理方法につきご意見があればご遠慮無くお知らせ下さい。
・またExcelシートはこちらに保管されています。(Excelが必要です)
⇒http://ocha.g1.xrea.com/haiku/daigaku_net_kukai.html