第58回ネット句会は、37名の参加(先月に続き、過去最高)となり、175句の投句を頂きました。

【講師選】
《永田満徳》
【特選】
152 伏線はNATO拡大蝿生る  慢鱚2
 ※掲句は時事句である。普遍性が乏しいところに時事句の難しさがある。ただ、どうしても詠まざるを得ない時事句もある。
「伏線」とは、プーチン大統領が「NATO拡大」に危機を感じ、ウクライナ侵攻を決断したことを指している。春になって、うようよと蛆から羽化して「蠅生る」ように、プーチン大統領の妄想は留まるところを知らないことを暗に風刺していて、共感できる。

【並選】4句
18 どくだみやじわじわ効いて来る言葉  直5
26 まづ削る2B鉛筆黄金週間       秋子3
53 夏隣マスト打ち合ふ舟溜り      隆司1
172 襁褓取れば空蹴る足や夏隣     昼顔2


《歌代美遥》
【特選】
98 三年忌父の躑躅の咲きにけり とも子4
 ※躑躅は、鉢にしても、庭植えにしても一株ということは、あまり見かけません。たくさんの木々に、躑躅の花を咲かせるには、庭師のような丁寧な愛情を注がないと、翌年の花の満開が堪能できませんね。しかし、お父様は鬼籍に入られてしまい、今はお父様の躑躅を引き受け美しく咲かせる愛情を継いでいっている、作者の声が聞こえそうですね。
お父さん、咲きましたよ。お母様との絆を詠む句は多いですが、父と子の淡々と躑躅を通じての情愛が穏やかに流れていきます。

【並選】4句
21  巣立鳥シール集めに夢中の児     和2
24  パンジーの視線を受けて立ち止まり  山音2
50  ゴールデンウィーク峡の露天風呂   房子5
81  君を待つたつぷり咲いた躑躅かな   智子5


【互選三賞】

天賞 9点  1句)
11  蜘蛛の囲やアリバイ崩す点と線 和1
 *緻密に張られた蜘蛛の囲と「点と線」のサスペンスの対比が秀逸(一葉)
 *蜘蛛の囲は計ったようにきっちり張られているものの、「私の浮気のアリバイは良く計画したものの、見事に崩されてしまった」との述回かとも?「点と線」との下五の措辞が効いている。(栄太郎)
地賞  8点  2句)
67    火口まで一気に昇る山躑躅  直3
 *もちろん現在活動中の火山ではないのだが、火口という措辞に真っ赤な躑躅が浮かび、それが燃え上がるように登っている景が想像できます。火口、一気に、に、山躑躅の勢いがわかります。(昼顔)
 *つつじ昇る訳ではないが、咲くつつじの様子を上手く表現されていると思います。(房子)
172    襁褓取れば空蹴る足や夏隣 昼顔2
 *赤ちゃんの元気な様子が手に取るようにわかる。もうすぐ夏。すくすくと育ってゆく我が子への愛情を感じます。(秋子)

人賞  7点  1句)
26    まづ削る2B鉛筆黄金週間  秋子3
 *鉛筆だけで、趣味の世界を表現しているところが上手い。(隆司)

【入選句】
6点句  2句)
17    デモ果つる躑躅真つ赤な公園に    ゆうま2
 *デモという非日常の自分が平和そのものの公園に解放されていく瞬間の表現、「果つる」「躑躅真っ赤な」に共感を覚えます。(とも子)

154    墓のみの残るふる里山躑躅      一葉1
 *親も亡くなり、ふるさとは廃虚になり墓参に来るだけの墓に…山躑躅が見守ってくれている(満)
 *両親も他界し、家もなく今残るは墓のみ。にも拘らず、躑躅は変わらず毎年花をつける。無常感を強くします。(正人)
5点句  7句)
18    どくだみやじわじわ効いて来る言葉  直5
51    じわじわと胸に火のつく夏の恋    和5
 *歳を重ねてもじわじわ火のつく恋に憧れますよね~素敵です(しどみ)
 *恋する様子が伝わります(梢楓)
52    ゴールデンウイーク湖に母校のカヌーあり 節子1
53    夏隣マスト打ち合ふ舟溜り      隆司1
62    夏隣昆虫図鑑眠る手に        仁士5
 *これから来るであろう夏(盛夏)に向けた期待感が伝わってくる素敵な句だと思いました。(青橙)

76    競走馬の尻の締まりや夏隣      山音5
161    葉脈に水の音して夏隣        直1
 *名詞だけを連ねて自分の空間を上手く表現している。
「黄金週間」の言葉自体が、作者の一週間の充実感を思わせる。(ひさを)

 

4点句  7句)
55    ボサノバをBGMに夏隣        山音4
75    虚子句集黄金週間のルーペ     一葉3
 *名詞だけを連ねて自分の空間を上手く表現している。
「黄金週間」の言葉自体が、作者の一週間の充実感を思わせる。(ゆうま)
98    三年忌父の躑躅の咲きにけり    とも子4
106    春耕や伊吹の稜線暮れなづむ    山音1
 ※夕暮れの故郷が浮かんできました。(秋穂)
122    大きめの制服なじむ夏隣      ちはる1
 *中学校に入学した子供達を詠んだのだろう。子供の成長考えて大きめの制服誂るが、制服のサイズや学校生活に溶けこみ違和感なくなった様子が手に取る様に伝わる句。(茂)
153    平成と記すシールの梅酒瓶     ちはる4
160    葉桜や自転車シールは3のA     節子5
 *高三に進級した詠み手。配布された自転車シールはA組だったのだろう。葉桜の景が躍動感を伝える。(浮游子)

3点句  12句)
16    たんぽぽの絮や引込線へ貨車     隆司4
28    ゆつくりと剥がすシールや薄暑光   浮游子5
37    ゴールデンウィーク入院棟の静寂かな 一路2
63    黄金週間アクリル越しの笑ひ声    ゐるす2
 *上手く兼題を入れて時勢を詠まれていると思います。(一路)
78    胸元のタトウーシールや夏近し     一路1
 *句材に新しさを感じますし、季節感とも合っていると思います。(明寿)
81    君を待つたつぷり咲いた躑躅かな   智子5
84    減反の段々畑や躑躅咲く       寛昭1
103    子午線の無数にありてけふ立夏    昼顔5
 *子午線も、つまりは人の生活のしるしの一つでしかないのだなと思わせる説得力があります。(由美)
118    線香の移り香仄か豆御飯       一路4
130    夏隣納戸に探す大やかん       昼顔4
 *措辞が効いてると思います。(寛昭)
152    伏線はNATO拡大蝿生る        慢鱚2
174    躑躅吸ふ姉は得意気寺の道      秋子4
 *子供の頃を思い出しますね。東京でも田んぼや畑のいっぱいあった頃。川や池で遊んだ帰り、女の子たちは道端の躑躅の花を採って蜜を吸っていましたね。男の子はやってみたくても「女のマネなんか」と意地張って。でも、みんなと別れるとこっそりマネしたりして。(祐)

2点句  26句)
5    ゴールデンウイーク「やっぱり家が一番ね」 慢鱚1
 *海外旅行やゴールデンウイークでも、外で沢山遊んでの、疲れて帰宅後に出て来る言葉は、この言葉ですね、核心をついているので特選としました。(仁士)
6    ゴールデンウィークキャスター響く駅の床  ひろし2
 *(うちの息子もキャスター付の大きなカバンで帰省したばかりだったので分かる分かるって思いました)(ケイ)
8    ゴールデンウィーク紙ひこうきの飛ぶ夕べ  梢楓1
9    これがまあ満天星躑躅明治村       浮游子2
 *一茶の句を思わせ、真っ白な満天星躑躅の風景が浮かびます。(節子)
19    バス停は躑躅の切れ目バスを待つ     青橙4

21    巣立鳥シール集めに夢中の児       和2
24    パンジーの視線を受けて立ち止まり    山音2
36    ジーンズの赤いペディキュア夏隣     祐3
38    ゴールデンウイーク予定表田んぼ     滿1
 *一般庶民の連休など関係なく田んぼをしなければならない。ぶっきらぼうに書かれた様子からも気持ちが伝わってくる。(慢鱚)
46    夏隣カフェ併設の造園家         満徳5

48    夏隣ビーチボールの落す影        ひろし1
50    ゴールデンウィーク峡の露天風呂     房子5
61    じわじわと甘味湧きけり夏蜜柑      滿4
71    花躑躅叔母の笑ひは通りまで       秋子2
 *話好きな叔母さん、コロナ禍で抑えられていた面会が叶い
嬉しさを爆発させている。その声は家の外の通りでも聞こえる位。
そんな陽気な光景に鮮やかな躑躅が彩りを添えている。(ひろし)
73    喚声のゲートボールや躑躅燃ゆ      栄太郎4
 *連休の一泊旅行で全く同じ光景をみました。こんな何気ない光景に幸せを感じるこの頃です(ちはる)

82    水平線分け合ふ春の海と空        美音4
86    故郷の潮の香おもふ夏隣         栄太郎2
105    春の暮運動場の線多し          青橙5
107    春深し半額シールのシャツ売場      滿5
115    先人に思ひを馳せて躑躅かな       亜仁子3
 *句に深みがある。(ゐるす)
117    線引はそれで良いのか亀鳴けり      ひさを4
 *世の中を見回してみると、例えば、何歳からを高齢者とするかなど、かなり怪しげな線引きが横行していて、「それで良いのか」としばしば問うてみたくなる。かと言って、その線引きを覆すだけの知識も力も持ち合わせていない。しかし、線引きの怪しさを嗅ぎ分ける感覚だけは失いたくない。「亀鳴けり」に共感する。(直)
132    長袖をどこかに巻いて夏隣        明寿2
 *【長袖をどこかに巻いて】という基底部と季語の取り合わせが良いと思います。季語が良く働き、季節感が良く伝われていると思います。
夏は隣、暑くなり、長袖は辛くなるわけですね。(亜仁子)
137    土石流危険渓流山躑躅          ひろし3
149    帆船の空に真白く夏隣          寛昭3
157    木戸に塗る青いペンキや夏隣       秋子1

167    緑さすローカル線を撮る男        青橙2

1点句  
2    GW墓守りもなく過疎の村         秋穂1
3    うつすらと昨夜の塵刷く躑躅かな     茂1
10    コロンコロンと満天星躑躅鳴っている   梢楓4
12    コンビニのシール貼るのみビール買ふ   栄太郎5
14    じはじはとシールの侵す冷蔵庫      慢鱚5

20    ゴールデンウイークシール貼られるバス観光 仁士4
29    ヨガ券の識別シール夏近し        満徳1
32    円陣の腕組み直し夏隣          ゐるす1
42    夏の霧じわじわ隠す剣ヶ峰        ひろし5
45    夏立つや水平線の果ての禍        ゐるす4

64    夏隣水平線より雲生まれ         房子3
70    じわじわと子猫の謎の座り方       亜仁子5
72    街路樹の影つなぎ踏み夏隣        由美1
83    薫風や天地無用のシール貼り        茂5
87    じわじわと染み出す清水行者道      一路3

95    坂下るロードバイクや夏近し       正人1
96    三線の音かろやかに夏隣         祐2
99    山ひとつハレの日と成す躑躅かな     昼顔1
101    散骨のヨットを連ね水平線        節子4
109    新築へ整地ひろびろ夏隣         とも子1

110    診察券じわじわ増えて春曇        智子4
113    青みゆく腋(わき)の窪みや夏隣     一葉2
121    対岸の島の明るき夏隣          房子4
126    断層を隠してをりぬ躑躅かな       寛昭2
129    夏隣日増に青き遠の阿蘇         しどみ1

133    庭先の脇を固める躑躅かな        ゐるす3
138    藤浪にじわじわ犯さるる海馬       昼顔3
146    白つつじ少女秘めたる甘き蜜       美音5
155    菩提寺の垣に躑躅の燃え盛り       滿3
164    稜線に沿ひつつ昇る夏の月        直4

169    霊場へ続く崖道山躑躅          一路5


【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)

直    19点  4句
昼顔   16点  5句
和    16点  3句
山音   15点  4句
秋子   14点  4句

一葉   11点  3句
一路   11点  5句
節子   10点  3句
ちはる   8点  2句
隆司    8点  2句
ひろし   7点  4句
滿     7点  4句

ゆうま   6点  1句
ゐるす   6点  4句
寛昭    6点  3句
仁士    6点  2句
青橙    6点  3句
慢鱚    6点  3句
とも子   5点  2句
栄太郎   5点  3句
浮游子   5点  2句

(以上)

ご健吟の皆さん、おめでとうございます。

(今回の参加者37名)(順不同、敬称略)

永田満徳、歌代美遥(講師選)、辻井市郎(一路)、江口秋子、
上山智子、今村とも子、青橙(たかはし)、上野梢楓、熊谷房子、
金城由美(由美)、とばやまちはる、桑本栄太郎、眉山ケイ、
祐(牧内登志雄)、中村秋穂、岩井 茂、小倉正人、浮游子、
岩永靜代(昼顔)、武藤隆司、茂木ひさを、ゆうま、滿/杉山満、
若松節子、荒 一葉、藤本仁士(仁士)、長谷川ひろし、本田しどみ
亜仁子、古閑寛昭、慢鱚、大津留 直、ゐるす、向瀬美音、
北村功(山音)、山下明寿、北野和良、

集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
集計につき疑義があればご連絡下さい。
また整理方法につきご意見があればご遠慮無くお知らせ下さい。
・またExcelシートはこちらに保管されています。(Excelが必要です)
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