【講師選】
《永田満徳》
【特選】
9 山茶花や抱へ庭師のゐる住まひ 寛昭３
「抱へ庭師」に剪定をして貰っているとは、なんと贅沢なことであろう。年に二度程度の剪定を頼んでいるくらいを言っているかもしれないが、「抱へ」という語が昔のお殿さまの「お抱へ」という語と重なり、特別に剪定させているように思わせる。そこでは、山茶花がみごとに咲き誇っているお庭であろうことを想像させるところがいい。
【入選】
46 蛇口より光のしづく寒明くる 楊子４
68 枯枝を踏みゆき再検査の帰路 緋路２
86 グリップに閉じる春菜のレシピかな ケイ５
106 ばりばりと破りて春にする暦 楊子３
《歌代美遥》
【特選】
52. 寒明けや横断歩道渡る鬼 亜仁子１
この句の鬼は、現実でも作者の心の中に棲む鬼でも
鬼というワードから来る恐れ、慄き、憧れ、鑑賞する読者により、鬼という存在の捉え方がそれぞれに、違うと思う
そこがまた、作者の巧みな問題を投げかけて楽しむ心の余裕がある
寒明けなので、解き放された開放感が、鬼をどの様に捉えるか？
楽しい句と、私は鑑賞しました
【入選】
59 山茶花や公民館の駐輪場 千秋
69 ぱりぱりの千枚漬に箸止まず ケイ４
80 山茶花やカーブミラーに映る母 ゐるす３
118 カレンダーバリバリ捲り梅見月 美音３
【互選三賞】
（天賞 １２点 １句）
46 蛇口より光のしづく寒明くる 楊子４
＊光のしづくの中七は凍結していた蛇口から氷が溶け始めたように想像でき季語とよく合っている（慢鱚）
（地賞 ７点 ２句）
32 脳内のクリップ止や春来たる 栄太郎５
＊脳内のクリップに春と大きく書かれているようですね。楽しい句です。（千秋） ＊リアルで､どう捉えたらいいのか複雑な気持ちになりました。いい句だと思いました。（檸檬）
52 寒明けや横断歩道渡る鬼 亜仁子１
（人賞 ６点 １句）
29 山茶花や笑ひ上戸の友見舞ふ 楊子１
【高得点句】
（５点句 ２句）
66 荒草の砲台跡や波の花 直仁２
＊荒れる海から舞い上がる波の花。「兵どもが夢の跡」の寂寥感を、上五に措いた「荒草」という措辞が際立たせている。かつて旅した北海道では紺碧の夏の海を見下ろす岬に、青々とした夏草が朽ちた砲台を慰撫するかのような光景を見たことを思い返した。（祐）
106 ばりばりと破りて春にする暦 楊子３
＊春にする暦という、春になるではなく、する、という措辞に、作者の能動的な意思を感じました。（夢見昼顔）
（４点句 ３句）
75 寒明や全身汚し戻る猫 正則１
＊この猫はこんなになって、一体どこで遊んできたのか、ケンカしたのか。猫の姿から寒明の喜びがひたひたと伝わって来ると思いました。（秋子）
79 寒明やjust marriedの車行く 秋子２
105 ばりばりと挽くグアテマラ春寒し 緋路３
＊グアテマラの香りが豆挽きのばりばりのオノマトペで香ってくるよう。まだ寒いが春を匂わす佳句。（ゆきまち）
（３点句 １１句）
2 厠にも日のぬくもりや寒明くる 寛昭５
9 山茶花や抱へ庭師のゐる住まひ 寛昭３
12 野辺焼くや山の息吹のばりばりと 直仁４
＊野辺焼で蘇る山の息遣いを荒々しい表現で捉えたのが印象的です。
ダイナミックな景色が表現されてます。（ひろし）
18 寒明くるバンビの絵本読めた朝 秋子５
26 波の花東海林太郎が立つてゐる 寛昭１
＊戦中は従軍歌手として、戦後はGHQに睨まれ逆風に打たれながらも直立不動のスタイルを崩すことなく歌謡曲を歌い続けた東海林太郎という人物像と、波の花。一見対照的に見えるが、季語が人物像を語っている様にも読める。シンプルな構成かつ絶妙な取り合わせで強く読み手に訴えかけられている。（直仁）
31 波の花座礁船めく沖の島 満徳４
64 斎場に向かふ車列や波の花 夢見昼顔４
＊寒さ極まる1，2月は亡くなる人も多く、何度親族や親戚を見送った事であろうか？実家は日本海にも面していて、荒涼とした波の花を見ながらの車列は、黙して哀しみそのものであった。（栄太郎）
74 寒明や湾に棚引く大漁旗 直１
68 枯枝を踏みゆき再検査の帰路 緋路２
80 山茶花やカーブミラーに映る母 ゐるす３
90 奥能登の窯の緋色や波の花 浩正１
（２点句 ２１句）
10 猛威なる新型コロナ波の花 和４
＊季語との取り合わせが絶妙（ケイ）
11 山茶花や茶杓の銘を訊ねたる 房子２
14 物忘れする事増えて寒の明け 夢積２
＊季語との組み合わせが絶妙です。明るい広縁に（浩正）
16 寒明けの音のそちこち造船所 房子１
25 俳句やめて山茶花ただの花となる 檸檬２
＊山茶花は季語ではなく、ただの花となる。（ゐるす）
40 柔の字のヨガのポーズや寒の明 和５
＊冬の間に堅くなっている身体。寒明けに行うヨガで全身をほぐしているのでしょうか。柔の字という具体的な型が季語と響き合うように感じました。（正則）
43 水の味また変はりたり寒の明け 美音２
51 枝先の息づく気配春浅し 夢積１
55 枝先の呼吸ゆらゆら春めきぬ 千秋４
59 山茶花や公民館の駐輪場 千秋３
69 ぱりぱりの千枚漬けに箸止まず ケイ４
86 グリップに閉じる春菜のレシピかな ケイ５
93 愛ゆえに人魚は波の花となる ゆきまち５
＊波の花と人魚の取り合わせが良い。「愛のゆえ」に説得力がある。（直）
96 ラジオより懐かしき歌寒明くる 千秋１
97 やはらかき猫の耳あり寒明ける 美音１
98 ほがらかな隙のある枝白木蓮 正則４
＊ほがらかな隙、という措辞が大きな白木蓮の花と、それらを支える枝の描写として新鮮でした。（緋路）
99 ふるさとの海鳴り遠く波の花 栄太郎４
103 山茶花の花屑掃くをためらひぬ 正則３
＊その様な場面には多分 私もそうであろうと思います。（山悠）
118 カレンダーバリバリ捲り梅見月 美音３
119 カラメルのとろりと流れ寒明くる 夢見昼顔２
＊中七の表現が効いている。（寛昭）
123 ウィルスの特効薬や寒明ける 慢鱚３ 2
＊（ウイルスの特効薬や）という基底部は、コロナウイルスに対する薬でしょう。この規定部の後、（寒開ける）という干渉部。寒明けはウイルスの薬でしょうか。寒明けの時、川の水が溶けて、寒水を飲むことができるわけです。寒水はウイルスの薬でしょうか。読者を色々と考えさせる俳句であると思います。（亜仁子）
（１点句 ３１句）
1 浚渫の船底重し寒の明け 山悠１
4 剪定やこの木々の枝切らぬ馬鹿 亜仁子４
8 山茶花や門で激励塾講師 ひろし２
17 寒明けぬままに摘まれし蕗の薹 祐１
20 桃の花クリップ光るお下げ髪 和２
21 晩鐘に山茶花はたと崩れたる 浩正２
24 梅が枝に力こぶある盛りかな 祐３
28 山茶花や昔にもどる歌がある 千秋５
33 能登路来てけぶる荒磯波の花 山悠２
34 猫の尾のぐにゃりぐにゃりと寒明す 秋子３
37 点滴のクリップ鈍き余寒かな 浩正５
38 天心籠る六角堂に波の花 ひろし５
41 駄菓子屋の猫の店主や寒明くる 寛昭４
44 真青なる空へ一枝しだれ梅 楊子５
45 春野菜あんたつぷりとばりばり麺 正則５
47 漆黒の瓦に積もる波の花 正則２
49 匂鳥隠れし枝の七分咲 祐４
54 寒明けやマネキン黒きスーツ着て ケイ１
63 冴返るクリップごとの申告書 満徳１
70 枯枝の描く青空深き空 美音５
87 クリップに志望願書や春を待つ 慢鱚４
88 クリップで束ねて春の美容室 房子５
91 一輪車の車輪軋みて寒明くる 緋路５
94 山茶花の香にも彩にも母を恋ふ 直３
100 バレンタイン小枝のチョコは自分用 ケイ３
104 山茶花のありて落ち着く散歩道 千秋２
110 ドル紙幣挿むクリップ冬館 ひろし４
111 さざん花の弁ひとひらを指さきに 直仁３
113 クリップの名札キラキラ入園児 ゆきまち４
116 ばりばりと樹皮を剥ぐごと寒戻る 満徳３
126 今冬は喜び薄し寒の明け 鼎一２
【個人別 高得点者】（合計点ーー入選句数）
楊子 24点 ４句
寛昭 10点 ４句
正則 10点 ５句
栄太郎 9点 ２句
直仁 9点 ３句
亜仁子 8点 ２句
秋子 8点 ３句
千秋 8点 ５句
緋路 8点 ３句
美音 7点 ４句
ケイ 6点 ４句
和 5点 ３句
浩正 5点 ３句
房子 5点 ３句
満徳 5点 ３句
夢見昼顔 5点 ２句
（以上）
ご健吟の皆さん、おめでとうございます。
（今回の参加者２７名）（順不同、敬称略）
永田満徳、歌代美遥（講師）中野千秋、牧内登志雄（祐）、藤倉浩正、
眉山ケイ野島正則、江口秋子、直仁(定野直人)、塚本南海雄、
夢積、長谷川 ひろし、夢見昼顔（岩永静代）、緋路、熊谷房子、
桑本栄太郎、西村楊子、慢鱚（大工原一彦）、大津留 直、古閑寛昭、
星合川凛、ゆきまち、ゐるす、亜仁子、向瀬美音、
飯沼鼎一、北野和良、
集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
集計につき疑義があればご連絡下さい。
また整理方法につきご意見があればご遠慮無くお知らせ下さい。
・またExcelシートはこちらに保管されています。（Excelが必要です）
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それでは、また来月にお会いしましょう。