第27回ネット句会 結果発表 (Rev1)
【講師選】
《永田満徳》
【特選】
111 音高く締むる鞄や秋の旅  楊子3
秋は旅のシーズン。あれこれと旅の計画を思いめぐらすのも楽しいものである。掲句はパンパンに膨れた「鞄」を勢いよく締めたところを詠んでいる。「音高く」に旅への心逸りがうまく捉えられている。

【並選】
2 老歌手の毛皮一周ディナーショー  楊子2
99 鞄置く始発の駅や小鳥来る  多佳子5
110 下駄履きで担ぐ鞄や相撲取  隆司4
115 一心に回す轆轤や木の実落つ  墨子3


《歌代美遥》
【特選】
120 木の実落つ頑張らなくていい日差し  多佳子3
この度は台風の被害の大きい小さいに関わらず、ご不便の被害にあわれた方々へお見舞い申し上げます
木の実は、落ちればもう姿が土に同化し気付かれ無いままにそこならは、土に帰るものも、新たなに芽吹く力を蓄えるもの、動物の食となり、動物たちの命を繋ぐ役目の為のものなど、ドラマを感じますね。人生でいえば、新たな命を継ぎ、役目を終えた大木への労いのような作者のお気持ちを重ねて、感動する句でした

【並選】
27 寅さんの鞄の軽さ秋時雨  直4
73 肌寒や温泉宿の長廊下  ひさを1
123 まじまじとどんぐり割れ目のぞく吾子      ゆきまち1
134 イルカショー前列の子に秋の水  たかはし4



【互選三賞】

天賞  8点  1句)
27 寅さんの鞄の軽さ秋時雨  直4
*鞄の軽さにすぐにふらりと旅に出てしまう人柄が表れてると思いました。(慢鱚)
*取り合わせが絶妙で、季語が効いてます。(浩正)

地賞  7点  1句)
87    手のぬくみまだ有る木の実渡さるる  房子2
*幼子が、どうぞと差し出す木の実。ずっとこの子が握っていたのか、まだ温かい。子供の優しさも伝わってきました。(正則)

人賞  6点  1句)
3    旅果ててポケットにある木の実かな    ひさを3

【高得点句】
5点句  4句)
52    朝四時のピアスの穴の肌寒し  永2
*「ピアスの穴」の句は数え切れない程あると思うが、「朝四時」の意外性に惹かれた。肌寒い季節の朝四時は未明というには早い闇の終わりの時間。そんな時間にピアスを外した女の耳の穴を冷たい風が過ぎる。実際に冷たかったのか、心模様が寒さを感じさせたのか、いろいろな物語りを読み手に想像させる一句。(祐)
70    食パンに綺麗な歯型木の実落つ  ゐるす4
*何気ない日常の奇麗な歯型に気付くその詩心がすてき。食卓の窓の外にほら秋の木の実が落ちました。(楊子)
71    肌寒や海一望のリアス線  墨子2
*海の色も心なしか変わって見えた。汽車のドアーが開く度、潮風の匂いと共に肌寒い風が入ってくる。そろそろ秋なのだと想像させる佳句(房子)
*晩秋の三陸鉄道リアス線での旅、車窓からは海が一望できる。よく景の見える句である。(ひさを)
117    ままごとの小鍋に弾む木の実哉  ゆきまち5
*小さい頃よくやったなぁ…って懐かしい気持ちが蘇りました(ケイ)

4点句  7句)
31    木の実降るアップテンポは風の指揮  和3
*弾む木の実が浮かんできます。(ゆきまち)
55    大阿蘇を跨ぎて明き天の川  直2
91    行く秋や男は古き旅鞄  節子4
102    海に触れ貝となりたる銀河の尾  房子5

*海に没する天の川が貝となるという描写が美しく個性的と思います。(ひろし)
*この発想に拍手です。この想像力が流石です。(隆司)
107    過ちを木の実こつんと赦しけり  楊子4
*人それぞれがもつ過ちは大小様々。全ての読み手の心にそれぞれ違う心象風景が再生され、それぞれ違う感慨を与えています。(緋路)
120    木の実落つ頑張らなくていい陽射し  多佳子3
140    「牛乳を注ぐ女」や天の川  正則2

*フェルメールの名画「牛乳を注ぐ女」と天の川の取り合わせは意外でありながら、俳句的な説得力がある。(直)
*フェルメールの絵の向こうのミルキーウェイが美しい(永)


3点句  15句)
14    網棚に寝かす鞄や初紅葉  正則4
*通勤の電車でしょうか?網棚に鞄を乗せたら、車窓から、木々が色づき始めているのが見えた。一瞬の光景だと思いますが、秋を感じた作者の思いが伝わります。「や」の切れもよく効いていて、平明な言葉で景がよく見える御句だと思います。(静代)
19    肌寒し野麦峠といふところ  隆司1
23    肌寒し掌をつけて待つカップ麺  慢鱚1

*秋の深まりと共に、朝晩は急激に冷え込んで来ました。このような時はカップ麺が出来るまでの僅かな時間でも、掌をつけて暖かさを楽しみます。この温もりを待つ心情が想われとても共感出来ます。(栄太郎)
46    肌寒や共に歌はんヨイトマケ  直1
60    税率の資料まじまじ九月尽  ケイ4

*消費税のややこしいさが良 く伝 わります。(夢積)
72    木の実落つ校歌流れる芝生席  ひろし3
*小さなグラウンドの強くない学校の対抗試合、真っ直ぐだった青春。芝生席が良い。(節子)
73    肌寒や温泉宿の長廊下  ひさを1
74    まじまじと夫の顔見る零余子飯  節子5
95    銀河濃し山里近く住み居れば  房子4

*情景が見えて素晴らしい。(寛昭)
99    鞄置く始発の駅や小鳥来る  多佳子5

111    音高く締むる鞄や秋の旅  楊子3
115    一心に回す轆轤や木の実落つ  墨子3
123    まじまじとどんぐり割れ目のぞく吾子  ゆきまち1
131    ショーの果て色なき風と共に去る  ひさを5

*面白いショーも終わり、気持ち良い色無き風も終わる。「ショーの果」という規定部と「色無き風と共に去る」干渉部がよく被ります。(亜仁子)
134    イルカショー前列の子に秋の水  たかはし4


2点句  14句)
2    老歌手の毛皮一周ディナーショー  楊子2
12    木の実落つ囁くやうな森の声  寛昭5
16    物の怪の動き始めて肌寒し  睦1

*日暮れが早く、闇の時間が長くなり並となく怪しげな雰囲気がよくでている。(山悠)
22    肌寒し進路指導の体育館  ケイ1
28    独り居に時雨のごとく木の実落つ  静代2

32    天高し縦に口開けカツサンド  楊子5
35    天の川棚の漱石三部作  満徳2
48    肌寒や外れかかりし箒の柄  楊子1

*哀愁漂いますね。それでも、使えなくなる日まで、使いにくいと言いながらも使うんでしょうね。生活感もあり素敵な句だと思います。(たかはし)
49    天の川ワルツ流れる音楽堂  ひろし1
57    洗濯機の底に転がる木の実かな  慢鱚3

83    秋風やふいに思ひて旅かばん  栄太郎3
110    下駄履きで担ぐ鞄や相撲取  隆司4
122    木の実落ちニュートンの顔まじまじと  亜仁子5

*着想が良い(ゐるす)
135    あらららと木の実を拾ふをんなかな  満徳3
*)動きがあって楽しい。笑い声や枯れ葉を踏む音も聞こえそう。(多佳子)

1点句  30句)
1    臍(ほぞ)の尾を繋ぎ繋ぎて天の川  多佳子2
11    まじまじとショーウインドーの秋の服  和1
13    木の実落つ嗚呼大樹にはなれずとも  緋路3
29    道の駅バスを降りれば肌寒し  慢鱚2
33    天の川遊女の櫛の梳いたごと  永3

34    天の川探す心の渇きかな  墨子1
39    まじまじと寝転び数ふ羊雲  慢鱚5
41    瀬戸際の一国二制度肌寒し  和4
44    天の川伊勢千代紙の華やげる  睦2
53    秩序てふ社会主義国肌寒し  寛昭4

54    池の面にせりだす枝や木の実降る  栄太郎4
58    千億の闇を浮かせよ天の川  多佳子1
59    切り株で母と子供の木の実独楽  隆司3
61    朝顔や一(ひと)シーズンのショーを終へ  南海雄4
65    肌寒や添付書類の数多し  満徳1

77    ぼろぼろの学生鞄暮の秋  ゐるす5
84    秋天のがたんと動く旅鞄  墨子4
86    秋の夜半火災報知機まじまじす  浩正4
88    思い出を小さき鞄に秋深し  祐3
97    銀河濃き町に一夜の旅鞄  房子1

100    鞄より賞状の筒豊の秋  満徳4
103    肌寒し左回りの時計かな  寛昭3
104    肌寒しサービスエリアの熱いお茶  ゆきまち2
108    菓子缶に木の実集めて宝箱  ケイ2
121    木の実落つメール返信未だ無し  祐1

128    ななかまどのみが本物ショーウインドー  隆司5
130    ただいまと園児鞄に木の実独楽  浩正3
133    うそ寒しまじまじ闇に見られをり  永5
136    アラジンの魔法の絨毯天の川  寛昭1
138    アイスショーの妖しきスピン曼珠沙華  静代5

(以上)
【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)

直    15点  3句
房子   15点  4句
楊子   13点  5句
ひさを  12点  3句
墨子   10点  4句
ゆきまち 9点  3句
多佳子  9点  4句
慢鱚   7点  4句
隆司   7点  4句
永    7点  3句

正則   7点  2句
節子   7点  2句
ケイ   6点  3句
満徳   6点  4句
和    6点  3句
ゐるす  6点  2句
ひろし  5点  2句
寛昭   5点  4句

(以上)
ご健吟の皆さん、おめでとうございます。

(今回の参加者)(順不同、敬称略)

永田満徳、眉山ケイ、長谷川ひろし、仁和田 永、安方墨子
祐(牧内登志雄)、野島正則、塚本南海雄、武藤隆司、緋路、
たかはし、、岩永静代、古閑寛昭、磯田年司、熊谷房子
若松節子、慢鱚、大津留 直、茂木ひさを、ゐるす、
桑本栄太郎、藤田ゆきまち、藤倉浩正、亜仁子、芳賀多佳子
篠木睦、西村楊子、北野和良


集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
集計につき疑義があればご連絡下さい。
また整理方法につきご意見があればご遠慮無くお知らせ下さい。
・またExcelシートはこちらに保管されています。(Excelが必要です)
⇒http://ocha.g1.xrea.com/haiku/daigaku_net_kukai.html

それでは、また来月にお会いしましょう。