今回は投句25名、選句26名の皆さまでした。
【講師選】

《永田満徳》

【特選】
82 春雷や爪の手入れを怠らず  楊子1
*「春雷」と言えば、他の季節の雷と違って、傍題季語に「虫出しの雷」があるように、万物胎動を誘い出す雷でもある。爪の手入れに余念のないこの女性も内面に蠢くものがあり、「春雷」に促されるように、化粧に勤しむのである。

【並選】

15 チューリップ子どもサイズの椅子並べ  節子4
17 パソコンに旧仮名覚えさす遅日  征一2
90 お下がりのサイズぴつたり入学児  和5
109 妙齢の腰より歩む春日傘  征一3


《歌代美遥》
【特選】
11  かくれんぼひとり足らずに春の雷  草民3
*春の雷は、長く続かず遠くで僅かになるだけですが、遠くの音と、かくれんぼで、ひとり足りなくなったという衝撃とが、不思議な国に迷い込んだような読者にもストーリーを暗喩します

【並選】
28  もりもりと飯盛るやうに野梅かな  栄太郎3
100 年齢を問はず楽しむ雛祭      亜仁子4
111 アネモネや剥製の目に硝子玉  草民1
121 アネモネを買ふ退院の曾祖母に  貴之丞4

【互選 三賞】
(得点は、特選2点、並選1点、但し講師選は夫々1点加点としました。)

(天賞  1句)
11 かくれんぼひとり足らずに春の雷  草民3
*まるで一人の子が、神社の森かどこかで、神隠しにあったような、夕暮れの映像が浮かびます。
春の雷の一度か二度の閃光が、それをとても際立たせていて、身震いしました。(夢見昼顔)

(地賞  1句)
91 アネモネや離婚届の薄みどり  節子3
*色の対比、取り合わせが素晴らしいです。(真波)
*私もこの役所届の書類には、お世話になったことがあります。明るい季語との対比が素敵だと思います。(正則)

(人賞  2句)
60 山国を太古に戻す春の雷  征一5
*景が大きくて素晴らしい。(寛昭)
*自然の前には文明も役には立たない。雷が鳴って自然の中に居る、実感をあじあう。(進)
*山国が一瞬太古の時代にタイムスリップする、その素晴らしい措辞に感心しました。取り合わせも面白いと思いました。(紀宣)
109 妙齢の腰より歩む春日傘  征一3
*日傘をさした着物姿の色っぽい中年女性。春の字が艶めかしい雰囲気を加えています。(ひろし)
*柳腰の女が差している春日傘。歌川国貞の浮世絵の世界を見たような一句。(祐)

【互選   句数】
5点句  6句)
15 チューリップ子どもサイズの椅子並べ  節子4
17 パソコンに旧仮名覚えさす遅日  征一2
21 フレームのサイズを超えて春の虹  紀宣5
22 マネキンの動かぬポーズ遅日かな  正則1
41 海を見に峠を越ゆる遅日かな  満徳5
105 暮遅し預かりし児のよく眠り  夢積3

*日常のことがさりげない言葉で情緒豊かに表現されています。(千秋)

4点句  5句)
7 ありとあるサイズに合はず山笑ふ  直5
48 献杯の声しめやかに春の雷  ひさを2

*全体の調和がとれている。季語の使い方が上手い。(隆司)
80 春雷や埴輪の口の阿吽かな  正則2
*取り合わせがいいですね(夢積)
81 春雷や世に背を向けて愛し合ふ  千秋3
*人知れず愛し合う不倫の関係であろうか?世間をはばかる恋愛は、会う時には激しく燃え盛るものである。季語の春雷には、そのような艶めいた激しさも彷彿させるのだ。(栄太郎)
82 春雷や爪の手入れを怠らず  楊子1

3点句  8句)
27 アネモネやあといくつ恋するかしら  美音4
39 歌舞伎町色鮮やかな遅日かな  隆司1

*遅日で浮かぶ風景は和香な田園風景だったが、鮮やかな灯を点し始める遅日もあるという発見。(節子)
42 逆縁の佇む写真春の雷  寛昭4
*逆縁と季語の組み合わせが絶妙ですね。(浩正)
50 アネモネを売る娘(こ)の首にキスの痕  和3
67 首なしの空襲地蔵春の雷    浩正2

*お地蔵様の首は空襲で無くなったものだろうか。春雷の音が空襲の音とダブって聞こえるようだ。(ひさを)
90 お下がりのサイズぴつたり入学児  和5
121 アネモネを買ふ退院の曾祖母に  貴之丞4
123 用もなく店に立ち入る遅日かな  満徳2


2点句  18句)
5 アネモネやスカート少し膨らんで  千秋2
18 ぶはぶはと足踏みオルガン遅日かな  草民2
24 アネモネの一花を挿して君とする  祐1

*可愛くて離したくない佳人をアネモネに例えている(征一)
28 もりもりと飯盛るやうに野梅かな  栄太郎3
31 ユニクロのサイズずらりと春の虹  楊子4

34 遠干潟有明海の遅日かな  寛昭2
44 啓蟄に赤子もりもり離乳食  夢見昼顔5
45 決めかぬる事のあれこれ春の雷  美音2
54 碁盤目を卍にめぐる古都遅日  征一4
57 高齢者大学講座梅真白  楊子5

64 アネモネや君を振り切り上京す  栄太郎1
66 アネモネや口紅さいごまで使ふ  千秋1

*口紅筆をアネモネの花びらの襞の奥までえぐるように差し込む画が見えます。女はさいごまで女(楊子)
73 春の雷そつとくちびる重ねたり  祐5
83 春雷や瞳の奥に物語  寛昭5

*読者に様々な想像を抱かせる余白を拓く力に満ちている。この句自体が春雷であるかのような不思議さがある。(直)
100 年齢を問はず楽しむ雛祭  亜仁子4

102 悲しみの涙か血とやアネモネよ  正則3

*【悲しみの涙と血とや】という規定部は、どんな悲しみかと、読者を色々と考えさせる言葉続きはいいですね。この規定部の後、悲しみの涙と血せあるという意味になります。面白く詠まれて、素晴らしい俳句です。(亜仁子)

111 アネモネや剥製の目に硝子玉  草民1
115 夜に浮く天橋立春の雷  隆司2

*春雷で一瞬夜の闇に浮かぶ天橋立、多分遠くの雲が少し明るくなる程度だろう。実景はともかく句の形がよいので選んだ。(草民)

 

1点句  25句)
4 アネモネやクレオパトラは毒蛇で死す  隆司3
9 お下がりのサイズ直すや入学期  ひろし3
14 タラの芽を愛づる齢になりにけり  美音3
16 のどけしや忘却と言ふ齢かな  夢積5
23 もりもりと春草起こす土竜塚  浩正5

26 アネモネの花八重一重始業ベル  浩正3
29 やん衆の筋肉もりもり海猫渡る  草民5
36 アネモネやもらひ煙草の味薄き  ゐるす1
37 アネモネやわが絵手紙をはみ出して  直3
43 熊野灘獅子岩吠える春の雷  夢積2

53 後朝の空のどこかに春の雷  栄太郎2
65 アネモネや公民館のヨガ講座  楊子2
72 春の喪やサイズ違ひの靴を履く  満徳3
78 アネモネや色とりどりの恋のあり  寛昭1
79 アネモネや草に紅差すモネの筆  ひろし2

86 神々の深き欲望アネモネに  進1
92 地震の地に死児之齢や春の夢  浩正4
94 遅日にてためらひて抜く缶ビール  千秋4
95 同齢の吉永小百合春の月  節子5
96 独り身の枕に響く春の雷  ゐるす3

104 暮れかぬる子等の団地や一輪車  栄太郎4
106 包丁の切れ味悪し春の雷  夢見昼顔3
112 アネモネや不定愁訴といふ言葉  真波2
118 夕永し未練ばかりの長電話  紀宣4
124 両腕をせなに回して春の雷  真波1


【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)
征一1   19点  4句
草民1   14点  4句
節子1   13点  3句
正則1   11点  3句

千秋1   9点  4句
満徳1   9点  3句
楊子1   9点  4句
寛昭1   8点  4句
夢積1   7点  3句

和1     6点  2句
栄太郎1  6点  4句
紀宣1    6点  2句
浩正1    6点  4句
美音1    6点  3句
隆司1    6点  3句
直1      5点  2句


ご健吟の皆さん、おめでとうございます。

(今回の参加者)(順不同、敬称略)

永田満徳、歌代美遥、牧内登志雄(祐)、山野辺草民、永井貴之丞、
長谷川ひろし、夢積、野島正則、紀宣(土谷純一)、西村楊子、
石井真波、茂木ひさを、道平 進、武藤隆司、ゐるす、
若松節子、藤倉浩正、夢見昼顔、今村征一、大津留 直、中野千秋、
桑本栄太郎、古閑寛昭、亜仁子、向瀬美音、北野和良



集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
集計につき疑義があればご連絡下さい。
また整理方法につきご意見があればご遠慮無くお知らせ下さい。

・またExcelシートはこちらに保管されています。(Excelが必要です)
⇒http://ocha.g1.xrea.com/haiku/daigaku_net_kukai.html

それでは、また来月にお会いしましょう。