妄想小説『Wedding dress 5』 | 背王のBIGBANG観察日記

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BIGBANG大好きなアラサー女が心の叫びを吐露しています。
かなり自己満な妄想と分析の連続なので、生温い目で見守って頂けると幸いです。

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前回のお話

『Wedding dress 4 』












ジヨンに恋人が出来たと聞かされて、しばらくが過ぎたある雨の日のことだった。

「ジヨン?」

梨里は家に帰る途中、カフェの前でぼんやりと佇んでいるジヨンを見つけた。







「どうしたの?こんなところで。傘、忘れたの?」
「リリ…」

ジヨンの表情を見て、梨里はすぐに、何かあったのだと気付いた。悪い予感に、心がざわめく。

「ジヨン、何かあった?」

尋ねると、ジヨンは梨里を見つめ、笑みを浮かべた。その笑顔は、梨里にはとても、痛々しく見えた。

「俺、ふられちゃった」
「え……?」

俄には信じがたい話だった。付き合いはじめて間もないし、つい最近まで、あんなに幸せそうにしていたのに。

「どうして?」
「わかんね…。付き合ってみたら、何か違ったって。何だよ、それ」

ジヨンは、囁くような声でそう言って、自嘲するように笑った。

「俺、男として、魅力がないのかな」
「そんなことない!」

梨里は、思わず、大きな声で否定した。ジヨンが驚いた様子で目を見開く。梨里は恥ずかしくなって俯いた。

「ジヨンはとっても魅力的よ。わかってくれる女の子もきっといるわ」


“例えば、私とか”

この時、そう言えていたら、何かが変わったのかもしれない。

だけど、梨里には、告白する勇気なんてなかった。ジヨンが、自分を異性として見てくれていないことはわかっていたから、告白して、友人としての関係が崩れてしまうのが怖かった。

思いが通じなくても、友人としての立場を失わなかったら、ジヨンが傷付いてしまった時、話を聞いてあげることも出来るし、支えてあげることも出来る。

この時も、梨里は、親友として、失恋に傷付いたジヨンの話を聞き、慰めた。

「ありがとう。リリ。リリに話聞いてもらったら、ちょっとだけ元気になったよ」

ジヨンは、最後に、そう言って笑ってくれた。それだけでも、梨里は満足だった。

だけど、この初めての恋は、梨里が想像する以上に、深い傷をジヨンに残していたのかもしれない。


この頃から、少しずつ、ジヨンの私生活は荒れ始める。

何人かの女性と別れたり、付き合ったりを繰り返し、その度に、ジヨンは傷付いていた。そんなジヨンを梨里はただ見ていることしか出来なかった。

最初の時に、話を聞いてあげたからか、ジヨンは恋人のことで傷付くと必ず梨里に会いに来るようになった。ヨンベには話しにくいことも、梨里には話せるという側面もあったような気がする。ヨンベに相談すれば、互いのプライドから喧嘩になってしまいそうなことも、梨里ならば聞いてあげることが出来た。

梨里は嬉しかったけど、辛かった。話を聞いてあげることくらいしか出来ることがないのが辛い。

自分が本当にジヨンの力になれているのか、自信がなかった。ジヨンは何度も似たような恋を繰り返しては、自分を傷付けていたから。


だけど、ジヨンはいつも言ってくれる。

「リリといるとほっとする」

その言葉だけが、梨里の救いだった。




「告白しないのか?」
「え?」

ある日、ヨンベと二人でカフェに立ち寄った時、ヨンベが梨里にそんなことを尋ねてきた。

「まだ、好きなんだろ?ジヨンのこと」

突然、そんなことを言われて、頬が熱くなる。

驚いた。ヨンベには、随分前にバレてしまっていたけれど、今まで、そのことについて尋ねてくることなんてなかったから。

ただ、ヨンベはいつも、梨里がジヨンのことで辛くなると、さりげなく気分転換に連れ出してくれた。黙って側に寄り添ってくれた。

今日も、梨里が暗い顔をしていたから誘い出してくれたのだと思う。

だけど、今日はいつもと違って、ヨンベの方からジヨンの話をふってきた。そんなことは、これまでに一度もなかったから、本当に、本当に驚いた。

「告白なんて、そんな…無理よ」
「どうして?」
「だって…」

ジヨンは、自分のことを女だと思っていない。それがわかっているから、梨里は何年も、告白する勇気が持てなかった。

改めて言葉にするのは辛かったけど、そのことをヨンベにも伝えた。

「伝えたら、変わるかもしれないだろ。今はまだ、ジヨンはリリのことを意識していないだけだ。意識し始めたら、好きになるかもしれない」
「そうかな…」

そうだったら嬉しいけれど、梨里はそんな風に楽天的にはなれなかった。

これまで、ジヨンの好きになった人を何人か見てきた。皆、自分とは違うタイプの女の子ばかりだった。共通点は何も見つけられない。

そんなことばかり考えて、暗くなっていると、ヨンベが言った。

「俺はお似合いだと思うよ。ジヨンとリリ」
「え…?」

驚いて顔を上げると、ヨンベが優しい笑みを浮かべていた。

「あいつ、少し不安定なところがあるだろ?リリだったら、あいつのそういうところも理解して、支えてやれると思ってる」
「そうかな…」
「もっと自信を持てよ。ジヨンも、俺も、リリが笑っていてくれるだけで元気になれるんだ。だから、そんな暗い顔をするな」
「ヨンベ…」

ヨンベにそう言われて、梨里は笑顔を浮かべようとした。だけど、上手く笑えない。

そう言えば、最近、心から笑ったことがあっただろうか?ジヨンのことで悩んでばかりで、笑うことを忘れていた気がする。

梨里は、幼い頃から夢に向かって真っ直ぐ歩いてきた。どんな壁にぶつかっても弱音を吐いたことなんてなかった。「私なら出来る」そう信じて、迷いなく進んだ。

だけど、ジヨンに恋してからは、いつも悩んでばかり。壁にぶつかるどころか、はじめから挑もうともしていない。

こんな自分は、自分らしくなかったかもしれない。

「大丈夫。リリとジヨンなら、きっと上手くいく。絶対に幸せになれるよ」

ヨンベは、そう言って梨里を励ましてくれる。

「ジヨンには、幸せになって欲しいんだ。大事な親友だからさ。もちろん、お前にも」
「ヨンベ…。ありがとう。私、頑張ってみようかな」
「うん。応援してる」

そう言って微笑んだヨンベの笑顔は、太陽みたいにキラキラで、暖かかった。凍えた心を優しく温めてくれるようだった。





「二人が結婚したら、俺が結婚式で歌ってやるからさ。頑張れよ」
「も、もう、ヨンベったら、気が早すぎよ!…でも、そうなれたら素敵ね」

ヨンベのおかげで、梨里は久しぶりに心から笑うことが出来た。

何もしないで諦めるなんて、やっぱり自分らしくない。今度こそ、ジヨンに告白しよう。

梨里は、そう心に決めた。




そんな二人の様子を見ていた男が一人。

(あれは…、ヨンベとリリ?)

3人の行動範囲は、事務所の周辺に偏っているから、ジヨンがその場に通りかかったのは、必然だったのかもしれない。

(あんなに楽しそうに笑ったリリ、久しぶりに見た)

自分といる時とは違う梨里の笑顔、そして、そんな梨里に優しい視線を向けるヨンベのことをジヨンは、しばらくじっと見つめていた。








画像拝借致しましたm(__)m