※はじめに
以前、すんちゃんと美緒の小説『僕を見つめて』、ジヨンと優羽ちゃんの小説『Baby I love you』を書いていた頃、このシリーズは三部作になる予定でした。ジヨンの話の後で、ヨンベ様の話を書くつもりで、こっそり伏線もはっていたのです。
しかし、皆様ご存知の通り、2つの小説が完結する前に、色々ありまして…
私、基本的には現実には逆らわない主義なもので。ヨンベ様が主人公の小説を書く気にはどうしてもなれず、そのままお蔵入りさせてしまいました。
しかし、先日、ある方から、私が書くヨンベ様の小説を読んでみたいというリクエストを頂きまして、
その瞬間、眠っていたストーリーが動き出したんですね。当初考えていたものとは違う形になりそうですが、今ならば書けそうな気がするのです。
そもそも、この小説の世界では、スンリと美緒が出会ったことにより運命が変わって、スンリのあの“事故”がなかったことになっているという設定なので(実は、事故のことを小説に取り入れるか迷った末に、やはり今はまだ真っ直ぐ向き合えないなと思いそうしました)
そのことによって、ヨンベ様の運命も現実とは違っているということにしてもいいかな、と…。べべたん、ごめんね(。-人-。)
単品でも読めますが、一応、過去シリーズはこちらに。
http://s.ameblo.jp/haiking69/entry-12085066608.html?frm=theme
べべペンさんのイメージするヨンベ様と合うのかどうか自信はないのですが…
何があっても変わらない、一途なべべペン様に捧げます。
では、本編をご覧下さいm(__)m
ジヨンの隣で、真っ白なドレスを着て、微笑む彼女が見たかった。
彼女がずっと一途にジヨンだけを思い続けていることは知っていたから、その思いが届けばいいと願っていた。
それに、寂しがり屋で我が儘で甘えん坊のジヨンには、彼女のようにしっかりしていて、深い愛情を持った女の子がよく似合う。
そう思っていた。
だけど、彼女がずっと胸に秘めていたその恋を知っていたのは、ヨンベだけ。
結局ジヨンは、最後まで彼女の気持ちに気が付かないままだった。
今、ジヨンの隣には、別の女の子が立っている。いつまで経っても子供のようだったジヨンを少し大人にしてくれた、とても素敵な女の子だ。
そして、彼女は…
ヨンベが好きだった彼女の笑顔は、今はもう、何処にも見当たらない。
ずっと傍で、その笑顔を見守っていけると思っていたのに…。
『ごめんね、ヨンベ』
今では、思い出の中にさえ、彼女の笑顔を見付けることは出来ない。
全ては、幼く、愚かだったヨンベが犯した罪のせい。
どれだけ手を伸ばしても、彼女にはもう届かない。そうわかっているのに。
ヨンベは今も、彼女の笑顔を探し続けている。
「ねぇ、ヨンベの彼女ってどんな人なの?」
「え?」
その日、ヨンベは、スンリの恋人である美緒の引っ越し祝いのパーティーに呼ばれていた。美緒が韓国に越してきたのは9月のことだが、BIGBANGのメンバーは入れ違うようにアメリカツアーに立ってしまい、ゆっくり祝う機会もないまま、いつの間にか、季節は冬になっていた。
今、ここにいるのは、美緒と美緒の親友でジヨンの恋人でもある優羽、そして、テソンとヨンベの四人だ。タッピョンはマイペースに不参加。ジヨンとスンリは買い出しに出掛けている。
「連れて来てくれたら良かったのに。私たちには紹介出来ないような子なの?」
「ちょっ、優羽ちゃん。失礼だよ」
「何よ。美緒だってどんな子か気になるって言ってたじゃない」
ヨンベが驚いて答えに困っている間に、優羽と美緒は何やら揉めている。そんなやり取りを見て、テソンが驚いた様子で聞いてきた。
「ヨ、ヨンベヒョン、恋人がいたの?」
「違うの?ジヨンは、誰か特別な相手が
いるはずだって言ってたけど」
やはり親友と言うべきか、ジヨンには隠しきれなかったようだ。しかし、優羽がこんな風に聞いて来るということは、相手が誰かまでは気付いていないのだろう。
「ジヨンに言いにくいなら黙っておくけど?テソンも口はかたいほうでしょ?」
「え。あっ…。ぼ、僕、邪魔なら席を外すけど?」
テソンは気を遣ってそんな風に聞いて来る。テソンは自分自身のこともあまり語らないし、メンバーとそういう話をするのは気まずいのかもしれない。
「テソン、気にしなくていいからいいから、ここにいてくれ」
「何よ。その言い方。私が苛めてるみたいじゃない」
ヨンベがテソンに助けを求めると、優羽は不服そうに唇を尖らせた。
その表情が、何だかジヨンに似ている気がして、ヨンベは苦笑する。
「そんな風に思ってないよ。ユウが俺を心配して言ってくれてることはわかってる。きっと、ジヨンから何かを聞いて、気にかけてくれたんだろ。ありがとう」
ヨンベが素直に謝辞を述べると、優羽は照れたのか、赤くなって俯いてしまった。
「心配されてるって思うんだったら、心配させるようなことしないでよね」
「ごめん」
出会ったばかりの頃の優羽は、美緒以外の他人には一切興味を示さないようなドライな子だった。ジヨンが「吹雪の中に一人で立っているようだ」と表現したのを聞いたことがあるが、確かに、他人を寄せ付けない冷たい印象のある子だった。
ジヨンは決して人には話さないが、何か、特別な事情を抱えた女の子だったのではないかと思う。
そんな子が、ジヨンと付き合うようになって、少しずつ変わっていった。
こうして、自分のことを親身に心配してくれるようになったのも、ジヨンの深い愛が彼女の周りに降り積もっていた冷たい雪を溶かしていったからだと思う。優羽は最近、前よりもよく笑うようになったし、美緒やジヨン以外の人間にも、彼女本来の優しさを向けてくれるようになった。
ずっと、癒しや支えが必要なのは、ジヨンの方だと思っていた。そのジヨンが、この子を支えて、変化させていったのかと思うと、嬉しい。
だから、突然の質問も嫌だとは思わなかった。優羽やここにいるみんなになら、話してもいいと思う。長い間、誰にも話さずにいたから、本当はずっと、この機会を待っていたのかもしれない。
「ジヨンには言うなよ?」
「ヨンベが言って欲しくないことなら、言わないわよ」
優羽がそう言ってくれるのならば、きっとジヨンに伝わることはないだろう。
優羽を信じてヨンベは口を開いた。
「特別な人はいるよ。でも、恋人じゃない」
「まさか、人に言えないような関係じゃないでしょうね?そういうことならジヨンに報告するけど」
「そんなんじゃないよ。ただの俺の片想い」
本当は、もっと複雑だけれど、今言えることはそれだけだ。
自分が一方的に恋をした。自分の愛は、彼女を癒せなかった。ただ、それだけ。
「本当にそれだけ?」
優羽は、何かに勘づいているのか、訝しげにヨンベを見た。
「相手は誰?噂になっていた人?」
「いや…、誰かは教えられないけど、ユウやミオは知らない子だよ」
“彼女”がいなくなって、新しい恋に目を向けようと、何人かの女の子とデートをした。だけど、彼女以上に胸がときめく相手とは出会えなかった。
“彼女”はやはり、自分にとって特別で、唯一無二の相手だったのだと、再認識しただけだった。
「だから、これから先も、あいつ以外の女に恋をする気はない。多分、出来ないと思う。未練がましいのはわかっているし、ジヨンに言ったら、無理にでも女の子を紹介されそうだから言えないんだ。格好悪いだろ」
「そんなことない!」
ヨンベの言葉を遮るように言ったのは、美緒だった。
「それだけ一途に、その人のことを思っているってことでしょう?ヨンベさんってやっぱり素敵。私、ずっとジヨンのファンだったけど、実は、男の人として、一番素敵だなって思ってたのは、ヨンベさんなんだよ」
「あんた、それ、スンリが聞いたら泣くわよ」
「いいのよ。スンリなんて。泣かせておけば」
「あんたたち、喧嘩でもしたの?」
そう言えば、スンリの様子も少しおかしかったなと、ヨンベは思い出す。一体あいつは何を仕出かしたのだろう。
完全にスンリが悪いと決めつけて、ヨンベは溜め息を吐いた。
「ミオ。あいつが何をしたか知らないけど、スンリの前ではそういうことは言わないでやってくれよ。俺の分も、ジヨンやスンリには幸せになってもらいたいんだ。ミオやユウみたいな子に出会ってくれて、本当に良かったと思ってる」
「ヒョン…」
「テソン、お前もだ。いい子に出会ったら、ちゃんと報告してくれよ」
そう言って、テソンの肩をぽんっと叩くと、テソンは少し悲しそうに笑った。
「ヒョン…、そんな風に、自分の幸せは諦めてるみたいなこと、言わないでよ」
「そうだよ。そんなこと、絶対に言っちゃ駄目」
テソンの言葉に、美緒も続く。
「ヨンベさんは、本当に優しくて素敵な人なんだから、絶対に幸せにならなきゃ駄目って、私も言いたかったの」
「ミオ…」
ヨンベは、テソンや美緒が自分を思ってくれる気持ちが嬉しかった。二人が望む形とは違うかもしれないけれど、こんなに優しい弟や妹に出会えただけでも、自分は、十分に幸せだ。
「どんな事情があるのか知らないけれど、みんなヨンベの味方だってことよ。きっと、ジヨンも同じ」
最後に、優羽がそう言った。やはり、ジヨンにも、多くの心配をかけてしまっていたのだろう。だから優羽も、ヨンベのことを気にかけてくれたのだ。
「わかってる。そのうちちゃんと、全部話すよ。ごめんな」
ヨンベがそんな言葉を発した瞬間、玄関から声が聞こえてきた。
「ただいまぁー」
びっくりするくらい自然に発せられたジヨンの日本語。どうやら、ジヨンとスンリが帰って来たらしい。
「お帰りなさい。ちゃんと間違えずに買って来た?見つかって騒がれたりしてない?」
「当たり前だろ。そんなことより、ヨンベ。今、そこで珍しいヤツにあったぞ」
「え?」
急にジヨンにそんなことを言われて、ヨンベは首を傾げた。他のことを差し置いて、しかも、ヨンベだけに向かって言うなんて、一体、誰にあったと言うのだろう。
「梨理だよ。梨理!あいつ、韓国に戻ってたんだな。びっくりした」
梨理。ジヨンからその名を聞いて、ヨンベは勢いよく立ち上がった。
「いつ!?何処で!?」
「え?今、このマンションの前でだけど…、なんか、近くに住んでるとか…」
「ありがとう!」
「お、おい。ヨンベ?」
ジヨンの言葉が終わる前に、ヨンベは走り出していた。
(梨理、何処だ?)
彼女が、梨理が、すぐ近くにいる。会うことが出来るのなら、心臓が破れてもいいと思った。それくらい、全力で走った。
そして、ヨンベは遂に、探し求めた彼女の後ろ姿を見つける。
「梨理!!」
ヨンベが名前を呼ぶと、梨理はビクッと肩を震わせて、そして、ゆっくり振り返った。
画像拝借致しましたm(__)m