ああ、いいなぁと外から眺めて入ったビアパブがある。
パブといってもパブリシティーのパブ。
イングリッシュパブってやつかなぁ。よくわかんないけど。
ともかくしっかりしたカウンターで、
テーブル席もゆったりしてて
木目がきれいな柱が何本も使ってあって、
外目には夜の大通りに花を添えるような立派な店に見えた。
いざ、昼間の混雑する時間帯を避け、店内に入る。
「いらっしゃいませぇー」
ややトーンの低い女性店員の声。
その後、
「おタバコは吸われますか?」
のお決まりのセリフを問われる。
禁煙席に案内され、
ドリンクだけでもいいかと尋ねると
ものぐそうに「はい」とだけいって戻って行った。
珈琲の味は期待していなかったので、
めったに失敗のない「カフェオレ」を注文。
「カフェオレ、ワンです」
居酒屋のように大声でカウンターの中のドリンカーに注文を通す。
でてきたそれは、匂い立つ酸化した珈琲豆のえぐみが存分に入った
得も言われぬ味。
よほどのことがないかぎり、でないであろう代物だった。
昨今のファーストフード店をすこし見習ってほしいくらい。
で、改めて店内を見回すと、
やけにだらしない店員が目立つ。
服装が、というのではなく、
目が。
ああ、楽しくないのだな、とわかる。
もちろんやりがいもなさそう。
出しているものに対しての興味もないかんじ。
期待していただけに、
ファミレスのような接客と雰囲気にげんなりした。
近くのテーブルではカップルが喧嘩を始めている。
お互いをののしり、揚げ足取りのしあいっこ。
げっそりして店を出る。
めったなことじゃ、出されたものを残さない私も、
このカフェオレを飲みきることはできなかった。
おいしくない、
味だけでなく、
雰囲気も、
空気も。
淀んでしまっている。
なのに、夜はどうも、流行っているようで
予約の紙がひらひらと何枚も壁にはってあった。
これがお客さんから見える位置に張ってあること自体、いやな感じがする。
流行っている、のか。
この店。
調べてみると、親会社はかなり大きいらしく、東京のほうでも手広く飲食店を展開している。
今、飲食店はどこも大変で、毎週あれ?ここにあった居酒屋さんなくなったん?とか
あの喫茶店今月末で終わりらしいよ、というような会話がなされる中、
なぜこの店は流行るのか。
実際のところ、経営状態がわからないのでなんともいえないが、
いまだ、流行る店の要素というのになにかあるのではないかという気づかないもどかしさがある。
個人店で、もっと素敵でももっと納得のできるサービスと料理を提要する店は山ほどあり、
そんな店がどんどん、潰れていっている現状、
その一方で、この店が予約で埋まっていくという現状、
明らかにはかりにかければ個人店に軍配なのに、
それだけでお客さんが来るわけではない。
いったいこのシーソーになにが影響しているのか。
長年の課題だ。