焼き菓子のBakeからベイクと呼ばれる彼女の愛称の所以。

このオテルの料理もスイーツも魅惑的であると雑誌で評されている。こじんまりとしたオテルの厨房のオーブンから漂う香り。

 
 
 



 

 熱々を「おいしい〜」

「甘い香り〜」

さくっ、ほろっ、

口の中で崩れ落ちるスコーン。

このさくっほろっにするのは

手早く作業するのがコツ。

 

彼女のレシピやアイデアも一役買っているのに違いない。

シェフに言わせると評判がいい。

こじんまりした邸宅風のオテルは宿泊する客との繋がりも次第に深まる。

 

 

 

 

厨房のオーブンから取り出されたばかりの甘く漂う焼き菓子。

 

ディナーには目の前に遠くに光る琵琶湖が広がる。

 

設計はフランス17~18世紀の貴族の邸宅を模したと思える。

車で20分駆け上がるような気分で道を越え

標高600メートルほどにもなると山の木々の間から門が見える

やがて白い洋館が現れる。

 

 

 
早速ベイクが部屋にやって来た。

「まずスコーンは、

3種類でプレーン味に加え、

食事向けのカレー味と

ローズマリー味、

本日はたっぷりと準備されています。」

 

「ディナーに合わせて宿泊客が参加するワインセミナーは

ワインのテイステイングに合わせ

スコーン3種とフランス紅茶を添えて。

ラタトウイユによく冷えたカルパッチョや

ローストチキンはサラダ風に出されます。」


シャンデリアのあるクラッシックルームは

真っ白なテーブルクロスが似合う。

6組の夫婦に若いカップル2組に男性3名が参加するそうだが。

 

ルームに行くと、

日暮れどきの暖かな陽に一瞬包まれていた。

計算されたかのように並べられた

ワイングラスが圧巻であった。

 

オテルの仲間からBakeベイクの愛称で呼ばれる

緒方千枝は26歳。

様々な人を迎え非日常を演出するこの仕事を彼女はこよなく愛している様だ。

本日最後のチェックインとなる客を迎える。

日々埃を払い磨かれてきたであろう手入れを心がけてきた彼女の靴に私はしばし目が止まる。

 

手際よく、

オテリエの為のガウンの背中の弛みを流し

彼女は正面玄関のドアへ向かう彼女の目は輝いている。

 

 

 

では次回まで。

 

緒方千枝は仮名です。

オテル:ホテル (hotel)に相当するフランス語の用語とし使用しました

オテリエ:ホテルの従業員の用語[フランス語の発音]となるオテリエとして使用しました