※この記事は「イエテボリワールド 男子FS感想 その1」「その2」の続きです。
よろしければ、以前の記事もお読みいただけると、うれしいです。
●ステファン・ランビエール選手(スイス)
「ポエタ」
競技としては、最後のフラメンコです。
しっかり目に焼き付けておこう、と、思って見たのですが……うーむ、ちょっと今回はしょっぱい出来栄えでしたね……。
SPから、3Aの不調は感じられていたのですが、なぜ直前の6分間練習で3Aを練習してしまうのですがステファン君! ジャッジのまえで大転倒。猛烈な逆アピールです。うーむこの人、もしかして、演技前の駆け引きとかいっさい考えてないのでは。それで世界選手権を2度取っているなんて、むしろ恐ろしいです。大物過ぎる。
3Aはステップアウト。大丈夫、想定内! クワドで取り戻せばいいんだよ! と思ったつぎの瞬間、4Tでもバランスを崩す。しかし、根性で2Tはつけました。クワドコンボの成功率はいいんですよね、ランビエール選手って。サーキュラーステップは、自身を復活に導いてくれた「ポエタ」というこのプログラムへの思い入れが感じられました。とても丁寧で愛情があった。コンボスピンは、やっぱり凄いですね。自由自在に体が動きます。
ランビエール選手ですごいと灰原の思うポイントのひとつは、スピンのあいだも絶対に変な顔にならないところ。たまに踏ん張ってとんでもない顔になってる人とかいるんですけど、微笑みさえ浮かべそうな勢い。ほんとうに、得意技ですね。
つづくジャンプは4T! ランビエール選手も果敢に2度の4Tに挑みました! 結果は回転不足で、転倒寸前でしたけど、このプログラムで勝ちたいという気概が感じられました。そうだ、頑張れ!
3Lzからの3連コンボはきれい。ここから怒涛のステップとスピン構成です。だけど、ちょっと疲れてきたかなあ。ステップにいつもほどの迫力がありませんでした。それでもスピンは素晴らしく、音楽の盛り上がりとともに美しいフォームで締めくくってくれました。終わり良ければすべて良し! それに、とにかく転倒しなかったのはえらかったと思います。
ジャンプでGOE減点があるのはわかっていたことですが、PCSが予想外に伸びませんでしたね。ひとつも8点台に乗らず、それでも総合5位。200点超えは果たし、入賞は確保です。なんかギリギリのところで勝負強い人だ…。
「ポエタ」は今季限りということで、まあ、しょっちゅうプログラムを変えるランビエール選手にしては長く滑ってくれたプログラムだと思いますが、ほんとうにこのFS、大好きだったので、お別れするのは灰原が辛いです。GPFの「ポエタ」は保存版決定。来季も素晴らしい試みに期待します。頑張れ!
しかし、6分間練習で3Aの練習するのは、やめたほうがいいんじゃないかなあ。どうでしょう、サロメ先生。
●ブライアン・ジュベール選手(フランス)
SPでは転倒があって6位。演技時間の長いFSでは、最後まで体力が持たないのでは、と、灰原勝手に思っていたのですが……失礼しました。ジュベール選手はそんなにヤワな人ではありませんでした。
冒頭の4Tが高い! それに幅がある。見事なジャンプです。さすが「4回転モンスター」!
続く3Sも危なげなし。3Aは、じつは、そこまで得意ではないんですよね。どうかと思いましたが、着実に降りてきます。すばらしい。
ジャンプはどれもこれもすばらしいできばえだったんですが、特筆すべきはステップです。昨年までとは動きが違う!
昨季のジュベール選手のステップって、上半身の振り付けは面白いんだけど、足元がちょっと単純かな? と思えるところがあったんですけど、今年はそんなことぜんぜんないですね。小気味いいリズム感が効いています。とくにオーラスのストレートラインステップは、勝利を確信したというのもあるのでしょうが、ほんとうによく「踊れて」いたと思う。正直いって灰原、いままで一度も、ジュベール選手が「踊れてるな~」と思ったことはないんですが(表現がすばらしいなと思ったことは多々ありますが)、今回のジュベール選手の演技からは音楽とか、歌が感じられたというか、ほんとうに、クワドを3回跳んだ2006年ロシア杯の演技にも増して、イエテボリFSのこの演技は、いままでのジュベール選手の演技で灰原が見たものの中でベストです。そう思います。
さすがにちょっと最後バテたかな、スピンでちょっとよろけましたが、信じがたいほど美しい演技。さすがです。
荒川静香さんが解説で言ってらしたのですが、ジュベール選手の演技は、まさに滑走順の妙というところがあり、最終グループの第1滑走だったなら、クワドは2回チャレンジしてきたと思います。でなければ、表彰台には届かないと判断したでしょう。クワドは体力を奪いますから、やっぱり後半バテてしまったかもしれない。しかし、もし、踏みとどまることができたなら、ジェフリー・バトル選手の演技を上回る可能性もありました。
まあ、勝負に「たられば」は無意味ですけどねー。
メダリスト記者会見で、4回転にたいする強い思いを口にしたジュベール選手。
カート・ブラウニング選手、アレクセイ・ヤグディン選手、本田武史選手、ティモシー・ゲーブル選手、エフゲニー・プルシェンコ選手。4回転で名を馳せた選手数あるなかでも、彼ほど4回転を愛するフィギュアスケーターは、ほかにいないと思います。
ステップが楽しくなってきたそうだけど、やっぱり「男なら4回転」なんでしょ? カナダにケヴィン・レイノルズっていうすごいのがいますから、今度、同じ大会で戦えるといいですね! 銀メダルおめでとう。今期はほんとにいろいろあったけど、お疲れさまでした。
●ジェフリー・バトル選手(カナダ)
SP1位で折り返し、FS最終滑走。昨季ワールド、FSで崩れた姿を思い出します。ああ、ジェフ君、頑張って!
「アララトの聖母」。エキゾチックな音楽。ジェフ君は、演技をはじめる瞬間、ふんわりと、花がほころぶように微笑みました。
その瞬間
「あ、行くかもしれない」
と、灰原は思いました。いままでの試合とは顔つきが違う!
すばらしく流れのある3A+2T+2Loから演技開始。リー・バーケル門下は、みんな3Aの事前動作に似たクセがあって、灰原はかわいいと思うんだけど、ジャッジによっては「きれいじゃない」と見なすみたいなんですね。その独特の動作が、あれ、なんだかなくなってる。
続く3F+3Tも綺麗~。コンボスピンは優雅で、余裕すら感じます。そこから3A。
なんと簡単に飛ぶんでしょうか。ジェフ・バトル選手はいままで3Aがあんまり得意ではなくて、故障から昨季復帰してくるときも、かなり3Aには苦しんだ印象でした。それが、綺麗にさらっと飛べてる。
サーキュラーステップは、眼福としか言いようがない。なんて、流れるように手足を使うのでしょうか。表現力が素晴らしい……というととても簡単なんだけど、灰原は、ジェフ・バトル選手の演技から、ドラマティックな表現力、というものは、じつはあんまり感じません。
彼の演技は、風とかに似ています。飛ぶ鳥とか、しなう若木とか。青い空とか、美しい湖とか、やさしい、懐かしい、美しいものを思い出させてくれる。
きっとジェフリー・バトル選手は、とても心の豊かな選手なのでしょう。日々、きれいなものや愛おしいものに、ちょっとずつ、気がついていける人なんじゃないかなと思います。
ストロークのひとつひとつに、世界への感謝の気持ちが感じ取れる、ような。
ストレートラインステップはとくに素晴らしく、あれだけ難しいステップを、いとも軽々と、そう振舞うのが当然の運命のように、なめらかに滞りなくリンクをわたります。彼がスピンをはじめたとき、世界が誰のものになったのか、世界中の人に明らかになりました。
非常に正直にいうと、灰原はこの大会で、高橋大輔選手が優勝してくれるといいなと思っていました。たんに自国の選手だからというのではなく、高橋選手の、ドラマティックでエモーショナルな演技がとても好きだからです。だけど、ジェフ・バトル選手のこの「アララト」を見たとき、イエテボリの地は彼のためにあったなと思いました。この素晴らしい演技のために、応援していた高橋選手がメダルを失ったのはわかっていましたけど、それでも苦い気持ちは起こらず、フィギュアスケートを好きでいて本当に良かったな、と思えました。
たまに、そういう演技に出会うことがあります。灰原にとっては、ソルトレイク五輪のヤグディン選手の「ウィンター」「仮面の男」、ボンクラの「マイケル・ジャクソンメドレー」、村主章枝選手の昨季NHK杯「ボレロ」、昨季東京ワールドでのランビエール選手の「フラメンコ」、忘れがたい、トリノ五輪の荒川静香選手「トゥーランドット」。素晴らしい演技に触れたとき、きらきら星を手渡してもらえたみたいな、至福の思いがするのです。
ジェフ・バトル選手は、トリノで競技人生を終えることもできたはずです。メダルも取ったし、その選択はありえた。だけど、自国開催のバンクーバーまで、競技生活続行を決めました。強い決断だと思います。
おそらく生涯最高のプレッシャーを、バンクーバーの地で、2年後、味わうであろう彼に、イエテボリのこの演技が、勇気を与えてくれるといい。
金メダルおめでとう。ほんとうにありがとうございました。
はあ~、長くなった。やっぱり、上位選手の演技にさらっと触れるというのは無理でした。みんな素晴らしい選手だからなあ。
今回感想を書かなかった中で、ちょっと気になったのがロシアのセルゲイ・ヴォロノフ選手の演技でした。地上波では流れなかったと思うんですけど、クワドも成功させ、FS4位につけています。
ルッツが不完全だったり(たぶんフリップもあんまり得意ではないはず)、スケーティングが荒くPCSが伸びなかったりと課題はありますが、問題点がはっきりしているだけに改善されればもっと伸びてくるのではと思います。
思えば、昨季世界ジュニアは豊作だったのですね。1位、ステファン・キャリエール選手、2位、パトリック・チャン選手、3位、セルゲイ・ヴォロノフ選手。みんな、自国の表彰台にのっかって、世界戦に乗り込んできました。来期の彼らも楽しみです。
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