※この記事は『グラディエーター世界へ・その４（http://ameblo.jp/haibaran/entry-10031663585.html ）』の続きです。できましたら、そちらからお読みいただけるとうれしいです。
さて、インタビュー終盤にいたって、いまや日本人にもあまりにも耳馴染みのある人物の名前が、話題に登場してきます。インタビュアーさんの質問から翻訳してみますね。
インタビュアー「（灰原不正確訳）２月に、あなたは、ロシアで行われたタチアナ・タラソワ氏のバースデーアイスショーに出演しましたね。傑作プログラム『ウィンター』を振付けたコレオグラファー、ニコライ・モロゾフ氏もその場にいました。彼となにか話しましたか？ 教えてください」
ヤグディン選手「（灰原不正確訳）この四年間、私たちは親友じゃなかったけど、敵でもありませんでした。ソルトレイク五輪のあと、方向性の違いを認識したんです。
タチアナの誕生日のとき、長いブランクのあと久しぶりに、数分間話しました。翌朝私たちはアメリカに飛行機で戻る予定にしていて、彼はアエロフロートを取ってしました。私はデルタ航空。
帰国の日に、ニューヨークは吹雪でした。私たちの飛行機の離陸は遅れました。飛行機の私の席から、アエロフロート機が見えました。私は彼の携帯に電話して『やあ。僕の席から君の飛行機が見えるよ』と言いました。ニューヨークには彼のほうが私より先に着いた。私が空港に到着したとき、こんどは彼から電話してきて、吹雪のためにニューヨークに足止めをくらった私に、ニュージャージーの彼の家に泊まりに来るかと聞きました」
インタビュアー「（灰原不正確訳）あなたたちのどちらかがどちらかに、謝ったんですか？」
ヤグディン選手「（灰原不正確訳）誰にもどこにも謝らなければならないことはありません」
……はあ……。なんだかこのくだりを読んだとき、灰原はしみじみとしてしまいました。
アレクセイ・ヤグディン選手と言う人は、とても気性が激しい人のように思います。いろんなインタビューを読んでもそう思うし、彼の自伝『オーバーカム』を読んでもそう思う。かつて、彼には許せないことがたくさんあって、それは母国の人々だったり、気持ちの行き違いの生じた友人だったりしたのでしょう。愛にも激しく、憎しみにも激しく。良くも悪くも気持ちがほとばしってしまう人だからこそ、あんなに人を感じ入らせる演技ができるのでしょうね。
でも、いちどは頑なになってしまうことがあっても、ちゃんと許すことができる人なんですね、きっと。
ロシアと和解し、いちどは袂を分かったニコライ・モロゾフ氏とも和解することができたヤグディン選手。
ところでモロゾフ氏、タラソワ氏のバースデーショーに行ってたんですね。師弟も和解していたのかぁ。なんかこっちも、しみじみするなあ。
……しかし……感動的な逸話でありながら、モロゾフ氏がアエロフロートだという事実に、どうしても引っかかった灰原でした。
相当稼いでるはずなのに、アエロフロートとは。もしかして、モロゾフ氏、倹約家？
さて、インタビュアーは最後に問います。
インタビュアー「（灰原不正確訳）あなたが競技から去って４年たち、あれからたくさんのことが起こりました。トリノで新しいオリンピックチャンピオンが戴冠し、６点満点のシステムはなくなった。時代は変わってしまったけれど、競技会に戻るつもりはないのですか？ チャンピオンだった日々を、思い出しませんか？」
ヤグディン選手「（灰原不正確訳）自分が夢物語を言ってること、わかってるでしょう？
ヨーロッパ選手権、世界選手権、それからもちろんオリンピック……いまの私はそれにふさわしい得点は出せません。いま競技会でなにが起こっているかということ、有望なスケーターが誰かということも、私はよく知りません。
だけど、夜、寝入るとき、いまだに競争から逃れられないでいるような気持ちになることがあります。
夢に現われる競技会は、とても生き生きしています。そして、私は氷の上に戻って行きます。競技会で演技するために。夢の中で、私は金メダルを守るために戦っています。私は戦いが好きです」
どんな名選手も、永遠に競技を続けることは、できません。
だからこそ、一瞬の輝きがあんなに激しいのかもしれない。だからこそ、彼らの輝きに、みんなが心を奪われるのかもしれないです。
選手の演技のひとつひとつが、ほんとにかけがえがない貴重なものなんだなと、改めて思いました。
ジャパンオープンで、ヤグディン選手はじめほかの選手が滑ってくれることを、その演技が見られることを、幸せに、楽しみに待ちたいと思います。
トリプルアクセル、頑張って欲しいですね！
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