東京ワールドが終わって、虚脱状態になっていた灰原です。こんばんは。
本日、桃木先生から、またしても無茶な記事のリクエストがありました……。
「ザヤックルールについて書いて欲しいの」って、なんですと!?
東京ワールドでフリープログラムで、織田信成選手が牴触してしまった「ザヤックルール」。どうにもよくわかんないので、わかりやすく解説してくれ、ということなんですけど……。
これが、簡単なような、複雑なような。
灰原も正確に理解しているとは断言できないんですが、灰原が理解しているかぎりのところでご説明してみますね。



とりあえずISUルール日本語版から、通称ザヤックルールと呼ばれるルール部分を引用してみます。



すべてのトリプルおよびクワドラプル・ジャンプのうち、2種類のみを繰り返すことができ、繰り返す場合には、ジャンプ・コンビネーションまたはジャンプ・シークエンスの中でなければならない。同じ名前のトリプル及びクワドラプルジャンプは、2種類の異なるジャンプと見做される。
ジャンプ・コンビネーションまたはジャンプ・シークエンスに含まれていない、繰り返されたトリプルまたはクワドラプルのソロ・ジャンプは、不成功のジャンプコンビネーションの一部と見做され、1個のジャンプのみが行われた1回のジャンプ・コンビネーションとしてカウントされる。
もし(合計で)3つのジャンプコンビネーションまたはジャンプシークエンスがすでに行われている場合、繰り返されたソロ・ジャンプは余分な要素として取り扱われ、したがって考慮されない。
いかなるトリプルまたはクワドラプル・ジャンプも2回を越えて実施してはならない。
繰り返された3回目のジャンプがコンビネーションあるいはシークエンスで行われた場合、コンビネーションあるいはシークエンス全体が余分な要素として扱われ、従って考慮されない。



はあー。お疲れさまでした。ちょっとややこしい文章ですが、意味わかります? ちょっと苦しいですよね。法律文書みたい。
もうひとつ、これに関連したジャンプについてのルールを引用します。



ジャンプ・コンビネーションまたはジャンプ・シークエンスは、最大3個までフリープログラムの中で認められる。ひとつのジャンプ・コンビネーションは最大3個までのジャンプを含んでよく、残りの2つは最大2個までのジャンプとする。~中略~ 2個のジャンプからなるジャンプ・コンビネーションの第1ジャンプが成功せず「リストにないジャンプ」に変わってしまった場合、依然としてジャンプ・コンビネーションと見做される。



もういっちょ! これに関連して、フリースケーティングの必要要素の説明をざらっと。フリースケーティングにおいて、ジャンプは、女子で7回、男子で8回(コンボまたはシークエンスはまとめて1回として数える)と定められています。これ以上跳んだとしても「余分な要素として扱われ、従って考慮されない」わけで、点数になりません。それでも転倒すれば減点の対象にはなります。また、ジャンプのうちひとつはアクセルジャンプでなければなりません。アクセルジャンプが入ってない場合は、最後に跳んだジャンプが無効になります。
フィギュアスケートのエレメンツにおいて、ジャンプはもっとも高配点ですから、基本的にトップ選手のプログラムにはどれも、ジャンプは限界数ぎりぎりまで入っています。ここまではOKでしょうか?
フィギュアスケートのジャンプについては、大まかにいって下のような留意点があることがあるとわかりますよね。



・プログラムに入れられる数が決まっている。


・コンビネーションorシークエンスは、まとめて1回のジャンプと数えられる。コンボ&シークエンスを入れる上限は3回まで。


・トリプル以上のジャンプは、2種類のみ2回まで繰り返し跳ぶことができる。ただし、繰り返しのうちどちらかのジャンプはコンビネーションに入れなければならない。


・ソロで同じジャンプを2回跳んでしまった場合は、片方のジャンプは失敗したコンビネーションorシークエンスの一部だと見做される。コンボ&シークエンスは3回までしか跳べませんから、ソロ2回跳んじゃうと、3回跳んだコンボ&シークエンス+2度めのソロジャンプのうち最後に跳んだジャンプが、4回目のコンボ&シークエンスであると見做され、つまり「余分な要素として扱われ」、得点に入らなくなる。4回目がコンボ&シークエンスであればコンボ&シークエンスごと無効になる。


・3回以上同じジャンプを跳んでしまったら、そのジャンプは得点に考慮されない。また、3回以上跳んでしまったそのジャンプがコンビネーションorシークエンスの一部だった場合は、コンボ&シークエンスごと得点に考慮されない。


・ジャンプの回転が1/4回転以上少ないと、ダウングレード、つまり、1回転少ないジャンプと見做される。



難しいのが転倒があった場合なのですが、転んだ時点で何回転回っていたかを技術審判が判定して、スコアにつけられている……と思います。この回転数というのもじつは曲者で、技術審判によって多少、どこまで汲み取るか差がある。例に出して悪いのですが、今年の四大陸選手権でのライサチェック選手の4Tは、正直ちょっと回転が足りなかったのではないかと灰原は思いましたし、じっさい足りなかったのではないかと発言していらっしゃるスケートのプロの方々もいらっしゃいましたが、技術審判には「回っている」と判断されました。
現在の採点システムにおいて、選手本人が「回転不足で転倒した」「トリプルルッツの予定だったけどきっとダブルルッツにカウントされてそれで転倒だ」と、思ったとしても、じっさいに技術審判がダウングレードしたかどうかは、滑っている最中の選手にはわからないのです。
トリノ五輪のフリープログラム、4Tにチャレンジした高橋大輔選手は、失敗して転倒しました。この4Tは回転不足、3Tと判定されました。高橋大輔選手は、トリプルの中でもっとも高配点の3Lz、3Aをもともと2回飛ぶ予定にしており、このうち3Lzのコンボのセカンドジャンプは3Tでした。4Tのダウングレードにより、高橋選手は3種類のトリプルジャンプを2回跳んだことになってしまい、最後に跳んだ3Lzの得点が無効になってしまった。これがザヤックルールにひっかかった例のひとつです。
今回東京ワールドで織田信成選手がひっかかっちゃったザヤックは、パターンがちょっと違ってて、コンビネーションの跳びすぎです。
前述のとおり、コンボは3回までしか跳ぶことができません。
フリープログラムで、織田選手は、ジャンプコンボを3A+3T+3Lo、3S+2T、2A+3T、3Lz+2Tと跳んでいて、4つめの3Lz+2Tが無効となってしまった。
今回の織田選手のプログラムも、3A、3Lzを2回飛ぶ予定にしていたようです。ところが、2度目の3Aがすっぽ抜けてダブルになってしまった。ここでとっさにセカンドをつけて点数を補正しようとした……んじゃないかなあ。つぎの3Lzに2Tをつけて点数を稼ごうとしたのではないと思うのですが、それはなぜなら演技終盤で3Lzのソロジャンプがあるからです。2回跳ぶジャンプの片方はコンボにしなければならないという規定を考えると、ルッツのコンボがとっさのしわざとは考えにくい。
2Aと3Aでは基礎点がぜんぜん違うので、すっぽ抜けて焦ったのは、よくわかります。しかも直後に3Lzのコンボが入っていて、計算する間もなく練習どおりにここは跳んでしまったのでしょう。推測ですが。
もし滑りこんだプログラムであったなら、すでに試合で幾度か失敗の経験もあったりして、失敗を吸収するジャンプのアレンジのしかたも、とっさに適切に考え付くことができたかもしれない。しかし、織田選手にとって「ミッションインポシブル」は、まだそこまで身体に馴染んだプログラムではなかったのでしょう。
勝つために選んだフリープログラム変更のせいで、結局はミスが発生した……ような気もしますが、だからといって、フリーを変えなければよかった、冒険しなければ良かったとは、灰原は思いません。「ミッションインポシブル」が素晴らしいプログラムであることもありますし、限界を破って成長したいという決断そのものが、素晴らしいと思うからです。
穏やかで優しく、勝ちたいというよりも、全力を尽くしたいというコメントがいままで多かった織田選手が、死力を尽くして勝ちにきた。ザヤックルールで得点が消えたとしても、疲労困憊の身体で4度目のコンボを跳んでまで、織田選手が勝ちにこだわったという事実は消えません。
優しい心に鞭打って、勝負の世界にもう一歩踏み込む決意をした織田信成選手に、どうか来年こそ勝利のときが訪れますように。
温泉にでもつかって、しばらく英気を養っていて欲しいです。ほんとうにお疲れさまでした。今年1年、織田選手をずーっと応援できて、灰原はとてもとても楽しかったです。ありがとうございました!






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