※この記事は「走神伝説・その1(http://ameblo.jp/haibaran/entry-10022698158.html )」の続きです。よろしければ、前の記事からお読みいただけると、うれしいです。



さて、エース双璧を2区までで思い切りよく使い切った東海、3区からは辛抱のレースの始まりです。一方他校は追撃体制。3区の主役は中央大学上野裕一郎選手。17位でタスキを受け取ってからトップギア入りまして、みごと9人抜き。8位まで順位をあげてタスキを繋ぎます。解説の碓井さん(中央大学出身)の喜ぶまいことか!
つぎの4区は、平塚から小田原まで、19キロ弱の最短区間ということもあり、下級生のエントリーが目立ちます。お互いデータの少ないどうしのレース展開で、最大に面白かったのが5位争いです。1区14位出遅れからじりじり順位を上げてきていた順天堂大学、9位でタスキを受けた2年生佐藤秀和選手が前方を猛追。まず6位グループにたどり着きます。ここで抜き去ろうとしますが、グループを構成する日体大、中央学院大、専修大は必死で食い下がる。4校負けじと併走しますが、これがお互いのためにも良かった。ラストスパートで順天堂が勝利し5位を獲得しますが、8位の専大までもが、4位・早稲田を捕らえられる位置につけます。
……そして、ついに5区です。



「箱根路の神」今井正人に、順天堂大学のタスキが、ついにつながりました。
4位の早稲田の臙脂のユニフォームは、すでに今井選手の視界にありました。この瞬間、灰原は思いました。
当然、早稲田は抜きさるとして、3位の日本大学も、まあ、今井なら抜くだろう。2位の東洋大学とは2分強のタイム差があるけど、なにしろ今井だしなあ。2位までは上がりそう。
でも……さすがに1位の東海大までは抜けないじゃないかなあ。タイムにして4分、距離にして約1300メートルもの差は……そりゃいくらなんでも無理だろう。今井でも。復路のために、どれだけタイムを縮められるかっていう勝負になるなあ。
……バカでした。2年もつづけて信じられないレースを見たにもかかわらず、まだ今井の、非常識なまでの山登りの才能を、理解していませんでした。
小田原から入った5区、坂道の傾斜がしだいに厳しくなっていき、道の周囲が住宅地から箱根の森に変わったあたりで、今井正人の走りが変わります。
序盤、余裕含みのレースで、ほぼ併走していた専修大学、中央学院大学を置いてギアチェンジ。そこまで、多分、ペースメーカー的に抜かずに取っておいたと思われる4位・早稲田を一気に抜き去ると、そのまま箱根のお山を駆け上がる。今井選手をマークし、「下り坂まで辛抱して勝負をかけたい」と語っていた日体大・北村選手が必死に追走します。北村選手の走りも悪くないんです。でも、今井選手とは圧倒的に違う!
なんだか今井選手、お山に入ったとたん、キラキラ輝いてるんです。じつに楽しげに、軽やかに、足を運ぶ。上空のヘリコプター映像を見ても、今井選手の走りはわかるんですよ。フォームにあまりにも無理がなく美しいから。
前述したとおり、往路5区は、過酷なコースです。だけど今井選手の走りからは、その過酷さが、かけらも感じられない。「ここは平地ですか!?」「信じられない!」あまりのスピードに、アナウンサーや解説者たちが口々に叫びます。
コース前半で、2位・東洋大学まで平らげた今井選手は、ここでさらにスピードを上げます。なんとか追走していた日体大・北村選手は、ここにいたって追走を断念、レースを自分のペースに戻します。オーバーペースによるブレーキを心配してのことだったと思うけど、この判断は間違ってなかったと思う。なぜなら、今井選手は、ここからさらに人間離れした走りを見せていったのですから。
コース中盤、箱根小桶園前。トップの東海大学が通り過ぎた瞬間、お祝いの花火が打ち上げられました。その音を聞いたとたん、今井選手の顔が輝きます。「近い!」。
そう、タスキを受けたときには4分もあったタイム差は、この時点で、もはや1分差ほどまでに近づいていたのです。箱根の山道は蛇行しているがゆえ、先行するランナーの姿はなかなか見えない。その見えないランナーの位置を、今井選手に、花火が教えたのです。
「追いつける!」。今井正人選手は、ここまで400メートル近い高度を上ってきたとは思えないスピードで、さらにさらに前方を追撃します。5区15キロ地点、ついに肉眼で1位東海大学の背中を捕らえた! 2位の選手の前を走っている第2テレビ中継車が、しずしずと、今井選手に道を明けます。ラジオ中継車も、報道車両も。
すべての車両が今井選手に道を譲り、もはや、彼を遮るものはなにもない。
沿道の歓声から、今井が信じがたいペースで追いついてきたことを東海大学も悟りますが、厳しい5区のコースをまえに、すでに限界の走りです。抜きさる今井に抗する術は、もはやない。
東海大学を併走の間もなく抜き去り、今井選手はトップに躍り出ます。
「ありえない」。解説の瀬古さんが、どこか呆然とつぶやきました。「5区で4分差をかわすなんて。それもまだ16キロ地点で」。
解説者たちのど肝を抜く走りを見せながらも、今井選手の表情には、まだ余裕があります。目に見える敵はすべて平らげたけれど、ここからの敵は彼自身。去年自分が樹立した区間最高記録です。
芦ノ湖の往路ゴール、テープを切った今井選手のタイムは、区間新記録を25秒も切っていた。
茄子紺のユニフォーム、順天堂大学の今井正人選手、箱根の神と呼ばれた男は、大学四年、最後の箱根を、いままでに増してドラマティックな走りで締括ったのでした。



今井正人選手は、卒業後、陸上選手として実業団入りが決まっています。トラック競技より、クロスカントリーやマラソンなどの、ロードレースを中心に活動していきたいと、インタビューで語っていました。
正しい選択だと思うな!
今井選手はトラックなんて走らなくていいよ。起伏のない、風景も変わらない、トラックをぐるぐる走る中距離は、今井選手には似合わない。
ダイナミックに様相を変える走路を、高低差も温度差もものともせずに走りきるロードレースでこそ、今井選手の天才を活かせると思います。
箱根の功労者は社会人として大成しないというジンクスもありますが、箱根でも数々のジンクスを蹴散らしてきた今井選手、絶対に大成すると信じます。
いいレースを見せてくれて、ありがとうございました。



ところで、解説席にいた、法政大学出身の徳本さんが、母校法政の順位を憂いながらも「来年から順天堂大学大学院に入ることになっているので、第2の母校の優勝はうれしい」と語ったので驚きました。
いきなりそこに食い込んでくるか! 順天堂大学OBとして解説に座っていた、村上さんの立場は!?
箱根の名物男でもあった徳本さん。相変わらず、面白いなあ。



明日の箱根は復路です。
どの学校も、頑張って!




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