子どもの頃は、誰と話をしても、誰の書いたものを読んでも、
心にピタッと来なくってとても悲しかった。
だけどこの頃、
今生きている人とも、昔生きた人とも、
心がリンクした、と感じる瞬間が何度もある。
そうなると、その人と、もっとリンクしたいと思う。
もっと深く、もっと広く、もっと、もっと、もっと、もっと…
どれだけ情報の流通があっても、自分が抽象的な世界に夢を馳せる憧れを持っていても、ある人格に結びついた出会いがないと、その憬れを持っている人の中に結実していかない。次の世界に行けない。もっと高みに達することができない。
第一は発心、第二は師に出会うこと。僕は生きた人間との出会いが幸せだと思う。人間が窓になる。自分にとってより広い宇宙や地平を見られる窓になれる師。それは盲目的に信じる師ではなく正にひとつの窓で、その窓を通じて世界を見ることがすごく大切。それが精神のリレーになるし、自分の精神が死んでも人から人にリレーすることができる。 (名越 康文)